オィディプスとアンジェラ
オィディプスとアンジェラ Ⅷ
第1部 あらすじ
オイディプスは知らぬ間に父を殺し、母と姦通することを知り、過酷な運命に殉じて自らを罰する為・・・自らの目を刃で切り裂く。が一命を取り留めて下僕アンジェラと放浪の旅に出ることとなる。そして、王と下僕の関係を解消すべく互いをディプ・アンと呼び、生活の糧を新しく得る為にロードス島へと向かう船着き場から陸に上がり 物売り達の声を背にオリーブが茂る果樹園迄登り大きな岩肌に隠れるようにして二人は座った港は人々でごった返していたし 様々な言語が入り交じりディプには耐え難きノイズではあったし 闇の中に広がる茫漠たる朧なる光の投射による影絵として 映る現実をまだそのままに受け入れることが出来なかった だが 人々の声が聞こえなくなり自然のまっただ中では入ってくる音はホワイトノイズだった
アン 慣れぬ船旅でお疲れでしょう 今日は早々と宿を取りますから
そこでお休み下さい 私はこの島の様子を少し探って参ります
故・・・
ディプ う~ん 路銀にはしばらくのゆとりがあるが、その間に生活の
糧の形を作らねばならない・・・まあ 急ぐこともあるまいが
・・・
ア ン 暫し お一人で過ごすこととなりますが・・・大丈夫ですか?
ディプ 心配はいらぬ このいでたちで盲目の私には誰も気にとめるま
い
ア ン わかりました 出来るだけ早く戻って参ります
アンは跳ぶように市場の方へ駆けだした 岩山とオリーブの木陰でディプは楽な姿勢をとり横になった 船旅の疲れからか再び微睡むディプ と何処からとなく歌をハミングして謡う声が聞こえて来た
Mmmmmmm huuumm Mmmmmmm huuumm
ディプはこの島の地唄かなと感じて聞き入っていたがハミングが止まった 暫くの静寂・・・やがてゆっくりした足取りで誰かが近づいて来た
そして ディプの穿った目に手を当てた・・・ 温かい手だった
ディ どなたか存ぜぬが・・・ありがとう
娘は無言でディプ の唇に手を当てた そして何かを地面に置く仕草の音に衣擦れのような音がして 娘は頭のリース(短いガーランドを円形にしたもの)を取り外して ディプ の目を覆うように頭に静かに置いた
その折りにオリーブの葉の香りが強くディプの鼻腔を満たした
ディプ ・・・・・・あぁ なるほど着ける具合によっては私の目の覆 いになる・・・う~む ありがとう 何か礼をしたい 名前を教えて欲しい
娘は一礼して早足でそこを後にした ディプ は不思議な感情に支配されて娘の足音を追った
ディプ 縁があればまた必ず逢うことになるだろう・・・ありがとう
夕暮れ近くアンが帰って来た Ⅸに続く
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