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共同書店・PASSAGEについて(6/21加筆)

以前から共同書店や一口本屋やレンタル書棚的なものに興味はあって、自著を販売する場所にしたいと思っていました。
共同書店というのは、店主が本棚を借りて自分の好きな本を並べて営業するものです。
下記の記事がとてもわかりやすいので、ぜひ。

ハンドメイド系のレンタルボックスみたいなものかな?というご感想を見かけましたが、まさにそのとおりです!

書棚を借りて3ヶ月目に入るので、備忘も兼ねてまとめておきます。

※2022/6/21
システムについてちょっと加筆しました。

書棚を借りたきっかけ

実際に借りようと思ったきっかけは、いつも美術館や博物館の帰りに通っていた明正堂アトレ上野店が閉店なさると知ったことでした。※閉店しちゃいました……。
本屋さん大好きと言いつつ、最近、面倒くさがってネット書店に頼ってなかった?電子書籍ばかりじゃなかった?と自分でも反省しました。

また、そもそも書店さんに置いていただける作品数は当然ながら限りがあるうえ、自分の場合はBLとライト文芸で分けて置かれることが多いです。
自著をジャンルまとめて置いておける場所があったら面白いし、読者さんにも便利じゃないかな? 店頭にはもう置かれないようものでも、自分なりに読んでほしい古い本も置いてみたい。
一度紙書籍で購入していただければ、地元の書店さんとかで拙作を紙で集めてもらえるんじゃ?という野望もありました(笑) ほら、同じ作者の本って本棚にまとめて並べたいし……

何かしら紙書籍を手に取っていただけるきっかけを作れればなあと思い、以前からちらほらとTwitterで見かけていたPASSAGEに棚を借りることにしました。

由井店長を始め、スタッフの皆さんが本当に本好きオーラを出しているおかげか、人見知りなので1回目はとてももじもじしていましたが、2回目から10年前から棚主やってますくらいの態度の大きさで通うようになりました。
1日店長をさせていただいたりと、3ヶ月目の今月も楽しく本屋さんしています。

PASSAGEにした決め手

1.立地(神保町)

うちから近くはないけど、個人的に乗り換えが便利です。
※地下鉄神保町駅A7出口から徒歩1分
ふだん自分は同人誌を自家通販しているのですが、東京や関東近郊の読者さんがかなり多いです。
また、東京に遊びに来たときに立ち寄っていただくことを考えると、どなたからも比較的行きやすいターミナル駅である東京駅に近いほうがいいだろうと思いました。
書泉や三省堂が近いのも、お買い物のついでに寄ってもらえそうです。

2.納品方法

納品物を郵送できる!
1.と相反するようですが、立地は皆さんに便利なはずだけど我が家から頻繁には行けないため、納品を郵送でできる――これはコロナで出無精になった私にはかなりのメリットです。
じつは、納品を自力搬入しなくちゃいけない共同書店は意外と多いんです。
PASSAGEではレイアウトも指定するとそのとおりにしていただけるので、その至れり尽くせりさも魅力でした。もちろん、お任せもOKです。

3.入居に審査がない

BLだからダメって言われたらやだな……と思うと、審査や面接がありそう・あると明言してる書店は最初から避けました。年齢制限のあるものはもちろん置かないですが、内容で線引きされたらいやだし自由度が低いのは主義に反するな、と。PASSAGEは公序良俗に反していなければOKなので、その気軽さが魅力でした。
実際に審査ありの書棚がBLがだめかどうかはまったく知らないので、これは自分の単なる想像です。

4.新品を入荷できる

PASSAGEには取り次ぎから新品を入荷できるシステムがあります。
新品を仕入れるのに書店で定価で買うのは、赤字になるだけなので、これは避けたい。かといって、もうあまりお付き合いのない編集部に著者購入を頼むのは気が引けるので、この点もかなり惹かれました(※著者購入とは、著者が自著を版元から直接買うと割引される制度です。これが整備されている版元が多いのです)
ちなみに、新品ではあっても一度でも著者の手に渡った本は「古物」扱いで、PASSAGEは古物商という形態で営業しています。そのため値段はどんな価格をつけても棚主の自由です。
※ただし、取り次ぎから入荷したものは新刊と同じ価格になります。

5.内装が素敵すぎる

あまりにお洒落すぎる写真を見て、こういうの大好き!となりました。
聞けば、「建築知識」の本屋特集を参考に内装を考えられたとか。
「建築知識」は我々クリエイターにとっても資料として役立ちますが、実地で使われるとこんな素敵なお店になるんだ……と感動しました。
お店の外観も内装もとても美しいので、ぜひ訪ねてみてくださいね。

6.売り上げ管理システム

PASSAGE最大の魅力の一つは、WEBの売り上げ管理システムです。
ブラウザからPCやスマホで簡単にログインでき、本が売れると15分前後で「●●が売れました」というメールが届きます。そのため、お店に行かなくても自分の棚に何があるかの把握・管理がしやすいです。操作自体も直感的にできるので、こういうシステムが初めての方でもすぐに使えると思います。

WEBで商品を登録してから納品すると、お店でバーコードつきシールを打ち出してくれるので、そのバーコードで商品を管理します。
本にシールを貼りますが、このシールは剝がれやすいのでよほど脆い本でない限り、剝がすときに本が傷むことはないと思います(傷みが不安な本はビニールカバーをするとか、ビニールに入れるなどして売ればいいかなと思います)。

また、この売り上げ管理システムを作った方がスタッフさんにいらっしゃるそうで、簡単かつ必要な改修なら対応してくださるので、「こういう機能があれば棚主として便利なのにな……」ってあまり気兼ねなく言えます(笑)。
こういうところからも、ただ棚を借りているだけでなくて、棚主の一人一人が作っているお店っていう感じがします。

ほかにも決め手としては、鹿島茂先生のALL REVIEWSが運営してるところも大きかったです。突然、店が閉鎖されて途方に暮れるとかないだろうなと思いました。
加えて、1日店長(パートタイム店長)などの店番が義務でないというのも有り難かったです。義務制のお店もあるんですが、自分の場合、締め切りと体調の兼ね合いがあるので、気軽に行けない距離の場所で前もって予定を入れるのはかなり緊張します。
その反面、イベント以外で読者さんと触れ合える機会になりそうなので、1日店長はしてみたい。
PASSAGEのように、(空きがあれば)自分の好きなときに1日店長をできるシステムはとても魅力的でした。

7.デメリット

メリットに比べると自分にとってのデメリット……というか悩んだ点は月々の棚代がほかの共同書店さんより高いことです。
1~6の利点と販売手数料(1冊売れるごとにかかる。PASSAGEは販売価格の10%)などを加味して考えました。
販売手数料は、1冊につき一律100円のお店もあれば販売価格の10%のお店もあります。1000円以下の本が大半の私の場合は、当然10%のほうが有り難いので、PASSAGEは自分向きです。
ただ、販売手数料以前に、売れなければ毎月の棚代が重くのし掛かります。
自分のやりたいことに棚代の負担が見合うかで、かなり悩みました。

そんなこんなでメリットとデメリットをはかりにかけ、結果的に自分的にはメリットのほうが多いと感じたので、PASSAGEで書棚を借りることにしました。悩んだのは30分くらいですが(笑)。

置いている本を全部サイン本にしたのは自分のこだわりで、一手間かけたいし、どうせ売るなら場所の記憶とワンセットで手許に置いていていただけたらな、という思いからです。
今はサインに加えて、一部を付箋本にして紹介文的なものをつけています。
こんな感じです。

入居してから1冊目が売れるまで

初の納品日は4月22日。
恐ろしいことに、4月末までまったく売れなくてどんよりしました(笑) 文字どおり、月間売り上げゼロでした。
じつはGW中にお友達の作家さんに会ってサイン本を作ってもらい、それをPASSAGEに置こうと計画していたので、売れなかったら恥をかかせてしまうと思うとしんどくて身投げしたい気分でした。

パートタイム店長(5月編)

たまたま5月1日の夕方に納品する予定があったので、遅い時間ですが、日曜日だし……と17~19時までパートタイム店長をさせていただきました。
今思えば、1冊も売れてない身の上で、しかもお客さんが少なめな日曜日の夕方にパートタイム店長をするなんてハートが強すぎるんですが、特に何も考えてませんでした(笑)
結果的には、数名の読者さんがいらしてくださって初の売り上げがありました!
こんな時間に来てくださった皆様には、本当に感謝しても感謝しきれません。
6月11日には今度はもう少し長く、12~19時で二度目の店長をさせていただいたのですが、初めてのパートタイム店長のときに売り上げゼロだったら、2回目はやってなかったと思います。
ちなみに、1回目と2回目の一日店長はこんな感じ。

様子がわかったので、だいぶ平台の作り方がこなれてきました(笑)

結果的に、5月のパートタイム店長が転機になったのではないかと考えています。
どうもこれをきっかけに、読者さんから
「PASSAGEという店はリアル店舗だ」
「和泉がガチで本屋さんやってる」

と認識していただいたようです(笑)
そこからぽつぽつと、ふだんの日でも自著が売れ始めました。

Twitterの活用

また、リアル店舗というのをもっと認識してもらわないと……ということから、Twitterで毎日書棚の状況を呟くことにしました。
写真付きにすればリアル書棚だと一目でわかるかな、と極力書棚写真もつけています。
こんな感じです。

PASSAGEの在庫ツイートにつける写真

Twitterの情報は基本流れていくものなので、くどいくらいに告知しないと目に留めてもらえない=認識されないのです。
#PASSAGE のハッシュタグをつけるとお店の公式アカウントからRTしていただけるので、それで認識して刷り込まれて買ってくださった棚主さんもいらっしゃいます。ありがたや……

Q.レンタル本棚は儲かるのか?

A.儲かりません

とてもよく聞かれるんですが、はっきりいって儲からないです(笑)
PASSAGEでは最低の書棚レンタル料金が月額5,500円です。※棚によって値段は変動します。
著者購入(割引)ではだいたい20%オフで版元から自著を買えますが、既述の通り、PASSAGEでは1冊売れると10%の手数料を棚主が払うことになります。つまり、売り上げの10%が手許に入るお金になります。
※ふだんお世話になっている新刊書店と競合するわけにはいかないので、自分は定価販売しています。

自著を売って棚代の5,500円以上の儲けを出すには、1000円の本だったら55冊販売しなくてはいけません。日割りすると、だいたい日に1,2冊。1日に1冊はまだしも、2冊売るのはかなり大変です。

納品するにも送料や交通費がかかるので、黒字化するのは棚に相当な魅力がないと難しいと思います。

それに何と言っても、PASSAGEに行くとほかの棚でお買い物しちゃうんですよ……。PASSAGEで得たお金は、全部PASSAGEで消えてます(笑)。むしろそれ以上の金額を使っています。恐ろしや。

それでもPASSAGEで棚を借りるのは、自分の本を見てもらいたいから。
ほかの棚を見ても、100円の本もあるし、非売品もあります。棚主の多くが採算なんて度外視で自分の好きな本を見てもらうこと、手に取ってもらうこと、自己表現することを楽しんでいるんだなと思います。
このお店の根底にあるのは、「楽しさ」じゃないかな?と。
それに、システムのところでも述べましたが、運用面でも皆で少しずつ作り上げている感じがあり、そこもまた魅力の一つです。
それから、お店に来た棚主同士でごあいさつすることも多いので、ゆるっとしたつながりも感じます。

個人的には、せっかくなら資料とか見ていただきたいと常々思っています。
が、お茶会(オフ会)とかだと参加人数が多くて1冊しかないものを閲覧していただくのは難しいので、書棚に「非売品です」と資料を差しておけば、お好きなときに自由に見ていただけるのも魅力です。
資料展示は意外と好評なので、続けたいと思っています。

自分にとっていつ行っても新たな発見がある、楽しくて居心地のいい空間なので、そういう場所と出会えたこと自体がとても幸せです。

この記事じたいが自分の雑感なので、特にまとめはないんですが、体裁として一応……(笑)

昨日(6/11)1日店長をしたのですが、何度か同人誌即売会でお目にかかった方だけでなく、初めてお目にかかる方もいらしてとても嬉しかったです。お子さん連れの方もいらしたり。
街中の書店だけに、同人誌即売会より気軽に来られるのかなと思うと、こういうのもありだな!と思いました。

というわけで、しばらく一口本屋さんを続けます。
皆さん、よかったら遊びにきてくださいね。

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