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不動産取引における囲い込み問題とその解決策

不動産取引における透明性の重要性

不動産取引は、多くの人にとって一生に一度の大きな取引です。特に不動産の売却に際しては、お客様が長年にわたって築き上げてきた大切な資産の扱いが問われます。この重要な資産を預かる私たち不動産仲介業者には、ただ単に売買を仲介するだけでなく、お客様の信頼に応える深い使命があります。

不動産仲介業者として、お客様の資産をただの「商売道具」として扱ってはなりません。私たちの役割は、お客様の大切な資産を適切に評価し、最適な市場価格でスムーズに売却できるようサポートすることです。このプロセスにおいて、誠実さとプロフェッショナリズムをもって接することが、業界全体の信頼性を高めることにつながります。


囲い込みによる影響とその問題点

囲い込みとは、不動産会社がお客様(以下、売主)から預かった物件を、他の不動産会社と共有せず、自社のみで取り扱う手法を指します。これにより、売主の物件が広く市場に公開されず、適正な競争が行われない結果、売却価格が相場よりも低くなることがあります。つまり囲い込みは、売主にとって大きな損失となるだけでなく、市場全体の健全な成長を妨げる要因となります。

情報をカゴの中に入れています

また、囲い込みを行う不動産会社は、売主に対して誠実でない対応をすることが多く、物件が市場でどのように扱われているかの透明性を欠いています。例えば、問い合わせしている仲介会社に対して「申し込みが入っている」と嘘をついたり、物件の状況を正確に伝えないなどの行為が見られます。これらは全て信頼して売却を任せている売主の信頼を損ねる行為です。


レインズと情報共有の必要性

通常、不動産仲介会社は売主の利益を確保するために、大臣指定のデータベース指定流通機構(レインズ)に物件情報を登録し、業界全体で情報を共有する必要があります。しかし、囲い込みを行う不動産会社は、意図的に情報を隠し、他社との共有を妨げることがあります。これは法的にも禁じられている行為です。

担当から折り返しない。
繋がっても、旅行に行っているから内見できない、また掛け直してくれ。
1週間後に折り返しするともう話が入っています
(旅行に行っていたんじゃないの?)
そして、暫くしてもまだ売りに出ている…(売れたんじゃないの?)

こんなことが日常のように行われます

囲い込みがもたらす影響

あってはならないことですが、不動産会社にしてみると、このような囲い込みを行うことで、自社のみで物件を取り扱うことが可能となります。特に売れそうな人気のある物件なら、売らずにSUUMOなどのポータルサイトに掲載し続けることで、買主集客が安価に行えるのです。売主は人気の物件にも関わらず、全く売れないことになります。特に、売主の仲介手数料をサービスする会社は、このような手法を目的としていることが多いです。


仲介手数料の獲得方法

不動産業者の主な収入源である仲介手数料の獲得方法には「片手仲介」と「両手仲介」の2つがあります。

  • 片手仲介:売主と買主を異なる不動産会社が仲介し、それぞれから手数料を得る仕組みです。

  • 両手仲介:売主と買主を同じ不動産会社が仲介し、手数料を買主売主の両方から得ることができます。

つまり、囲い込みを行う会社はまず両手仲介を狙います。私としては、これはこれで真剣に売却を行うのであれば、まだ良いと思います。しかし、実際にはすぐに売れてしまうと、買主希望のお客様のリストを得るチャンスを失ってしまいます。そこで、売却せずに物件を集客の道具として利用してしまうのです。

ダメですよね…

囲い込みの顧客への影響

囲い込みをされている売主にとっての大きなデメリットは、売却価格が相場よりも低くなる可能性があることです。売れない(売らない)物件は市場からすると、人気のない物件と映ります。これを晒し物件と呼び、いつまでもSUUMOに掲載されている物件がそれです。

囲い込みをしている不動産会社は、段階的に価格を下げる交渉を行います。これにより、相場価格よりも低くなります。また、低くなれば低くなるほど当たり前ですが、買主希望者からの問い合わせが増えます。不動産会社はこれを期待します。


囲い込みの解決策

このような悪質な囲い込みを顧客が防ぐためには、不動産会社の選定が重要になってきます。営業マンがどんなに良い人でも、会社のスタンスが上記のようなものであれば、個人の力ではどうにもなりません。

信頼できる不動産会社を選び、悪質な囲い込みを回避するためには、慎重な媒介契約が求められます。私が専任媒介契約を勧めない理由はここにあります。通常、3ヶ月の専任媒介契約を結ぶと、その期間内はその業者だけに販売を任せることになります。これが売主の大きなリスクとなるのです。


囲い込みの防止と信頼性の確保

このような囲い込みを防ぐためには、透明性の確保が不可欠です。まず、売主は不動産会社を選ぶ際に、その会社がどれだけ情報を公開しているか、取引の透明性をどれだけ重視しているかを確認することが重要です。営業マンが誠実であっても、会社全体の方針が不透明であれば、売主の利益は守られません。

透明性を高めるためには、レインズなどのデータベースに物件情報を正確に登録し、他の不動産会社とも情報を共有することを確認してください。その際、問い合わせをした不動産会社に対してどのように情報共有を行っているかを直接尋ねることも有効です。

売主が囲い込みの問題を認識していることを伝えることで、適切な対応を促すことができます。これにより、売主の物件が広く市場に公開され、適正な価格で売却される機会が増えます。透明な取引は、最終的に市場全体の信頼性を高め、不動産業界全体の発展にも寄与します。

誠意ある不動産仲介営業マンはこの囲い込みの事実を伝えましょう。そして、自分はどのような販売計画を考えているのかを売主様にしっかり伝えましょう。

当たり前のことです

顧客の資産を守る責任

不動産営業マンとして、顧客の大切な資産を取り扱っていることを常に意識する必要があります。売主が安心して任せられるように、透明性の高い取引を提供し、公正な価格での売却を実現することが求められます。顧客の信頼を得るためには、誠実な対応と情報の透明性が欠かせません。

営業マンの皆さんにとって、この問題を理解し、解決策を考えることは、今後のキャリアにとって非常に重要です。囲い込みのような不誠実な手法に頼ることなく、顧客に対して価値を提供し、信頼される営業マンを目指しましょう。不動産取引における透明性と公正性を守ることで、顧客の資産を適切に扱い、不動産市場全体の健全な発展に貢献することができます。

透明性を重視した取引を行うことで、顧客からの信頼を得るだけでなく、結果的には、自分自身の営業成績向上にもつながります。誠実な取引を行うことが、最終的には不動産営業マンとしての評価を高める最も確実な方法です。顧客の資産を守る責任を胸に、透明で公正な不動産取引を実践しましょう。

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