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独断専行の奈良案内(5)

歌姫街道

 ニュータウンの朱雀や左京とは異なり、由緒正しい名を背負うのは「歌姫街道」。平城京大極殿の北に発し(さらに南からという説もある)府県境を越えて木津川市の川久保の163号交差点に至る4,5キロの片側一車線の短い道です。

 短いけれども佐紀の古い農村集落、道の中央にデーンと構える地蔵堂、延喜式の添御縣坐神社、大和国と山城国の国境の大木、古墳群など見どころ満載であり、現代的な平城ニュータウンもかすめる歴史の道でもある。時に坂あり、道が極端に狭まったりしてバラエティにも富んでいる。

 土地の古老に聞くと、この道は谷底になっており、秋から冬にかけて霧の発生地になるのだそうだ。年に一二度は確かに濃い霧が朝静かに平城ニュータウンを包み込む。かと思えば奈良京都間の抜け道として結構なスピードで車が行き来することもある。

 ニュータウンと古代の道との併存は、昔雅楽を司る女官が住んでいたという言い伝えも思い浮かべると興趣尽きない。

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