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第42回「心ゆくまで、ミネラルたっぷりの新鮮な空気を吸いにいらっしゃい!~約半年ぶりに入田浜の無料駐車場がオープン」
昨日、政府のコロナ対策イベント緩和措置を受け、うちの近所の入田浜無料駐車場も、約半年ぶりに開放された。
今朝見に行くと、駐車場は満車で、海には、サーファーたちが繰り出している。
いつもの光景が戻ってきた。
4月ころは他県ナンバーが走っていると、あからさまに嫌がらせされるなど、小競り合いが起こっていた。誰も気が立ち、しかし誰も責めることができないから、こんな事が起こっていたのだ。
下田では、6月上旬、いち早く海水浴場の開設を決めた。その時、僕が専門家に作ってもらったビーチでのソーシャルディスタンスマップが、大いに役に立った(第28回「下田にとって特別な夏~海水浴場を開くのだ!」参照)。その後、白浜を中心とする民間の宿泊施設経営者たちが、オンラインを使って、現場でのコロナ対策を共有、研究、進化させ、下田市観光協会内で、ガイドラインが作られた。
これが下田モデルと呼ばれるもので、テレビなどでも大いに報道された。
民だけで頑張っても無理があり、官だけでは掛け声倒れになりかねない。しかし民と官が、うまく力を合わせることができれば、効果は具体的で、絶大なものになる。
今夏の下田モデルは、だから評価されたのだ。
僕の暮らす吉佐美では、監視体制が整えられずに、「遊泳禁止」の措置となったが、自前で監視体制を作ることができたビーチでは、「遊泳可」の日が続いた。
特に今年の海は凪の日が多く、台風もほとんど発生していない。すなわち海水浴日和の日が続いたわけだが、それでも「東京自粛」の影響は大きく、海水浴客は、例年の55%程度、宿泊施設は70%、飲食店も半分の入りだったという話だ。
そんな中、3月からずっと混んでいるのが、一棟貸の宿泊施設だ。しかも2泊3泊は当たり前で、長期に滞在する人もいるという。高級旅館は6月くらいから例年なみに戻っているという話を聞いた。そもそもが密ではなく、部屋食だったりするので、ソーシャルディスタンスがとりやすいのだ。富裕層を中心に、下田に高級車で避難してきていたのである。
去年オープンしたばかりの、近所の一泊12万円の貸別荘は、夏の間は一泊24万円に値段が上がっても、満室が続いていたらしい。
こうした施設の利用者は、日本人の富裕層ばかりではなく、首都圏在住の外国人の富裕層も目立ち、各国の大使館ナンバーが、下田の市中をうろついていた。
するとここに来て、外国人たちが家を買っているという話が飛び込んでくる。いずれも日本人女性と結婚した欧米人だが、一人が数千万円で別荘を購入、一人が数百万円で民家を購入。いずれも一棟貸の宿泊施設にするつもりだという(又聞き)。
コロナのせいで、下田にも地殻変動が及んでいるのかもしれない。空き家バンクでも、6、7月は問い合わせや内覧、成約が多く、大忙しだった。
不動産屋さんでは、熱海までは物件不足が起こり始めているらしい。
下田界隈では、しばらく前から、民泊のハウスキーパー不足が目についており、僕のところにも、そういった人を探してくれないかといった依頼が届いている。
時給1500円では集まらず、友人の会社では時給2500円を家主に請求している。
こうした募集が難しいのは、季節によって稼働日の変動が大きく、また一軒だけだと、パートに出ても、いくらにもならないからである。
固定的に一定額が稼げないと、人は集まらず、そんなパートをしている女性たちに話を聞くと、訪問介護などのほうが、安定していて働きがいがあるという。
昨日、古い友人のSさんが、不動産屋で出ている松崎町の古民家をゲストハウスにしたいと電話してきた。彼女はすでに、東京で2軒、熱海で1軒経営している。
「私って、昔からそうだけど、夢がないと生きられない女なの。わかるでしょ?」
彼女はその昔、アフリカで各国人を載せて大陸横断バスを走らせたことがある。どれほど大変だったか、想像に余りある。それに比べれば、ゲストハウス経営など、へのカッパなのかもしれない。
「それでね、私だって、人生長くないし、古民家でゲストハウス経営をやってみたいのよ。あの物件、どうかなあ」
「物件としては、ゲストハウスにはいいね。海まで歩いていけるし。ただ値段が高い。半額だったら買いだと思うけど」
「そうか、それとね。ハウスキーピングのことだけど、もしゲストハウスをやる場合、そっちの方はやってもらえる人はいるかな」
「松崎なら、まだいるかも知れないけれど、下田では完全に人手不足だよ。でも物件まるごと、運営管理してくれる会社もできている。伊豆民泊.comという会社で、ネット予約から運営管理までしてくれて、手数料は売上の35%だって」
「エッ? そんな会社まであるの? 近いうち、下田に行こうかな。夏に下田に連れて行った友達なんて、海の美しさにびっくりしちゃって、あれから3回も行っているのよ。色々相談させてね」
「わかったよ。心ゆくまで、新鮮な、ミネラルたっぷりの空気を吸いにおいでよ。都会はコロナもあって、息苦しいでしょ」
僕はそう答えて、電話を置いた。
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