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下田最前線⑲誕生!南伊豆ニュービレッジ

 近藤ナオ君(写真中央の背の高い男性)と初めて会ったのは、オンラインで、彼がタンザニアにいたときである。
 空き家バンク物件の購入相談だった。総面積20,000平米、家だけでなく、山も畑も付いている大型物件である。
「実は、オランダやタンザニアで多拠点居住施設を運営していて、南伊豆でも作ってみたいと。そこに仲間たちと…拡張家族と呼んでいるんですが…1日1ドル以下で暮らす生活を実践したいと思っているんです」
 それからとんとん拍子に話は進み、物件を購入、今年から、ナオ君たちの活動が本格的に始まっていた。
 この日は8人が滞在していた。山で竹炭をつくる人、整備する人の他、めいめいに1日1ドル暮らしを目指して作業に勤しんでいる。
 煙がもうもう立ち上っているのは、薪で火を作り、湯を沸かしたり料理をつくったりするからだった。まるでキャンプ状態である。
「今、水源から水を集める作業をしています。ろ過してタンクにため、太陽光発電でポンプアップし、高い場所の水槽から水を供給する設備をつくるんです」
 これで水道代は無料だし、電気代は太陽光発電でまかなうという。キャンプ用のランタン「キャリーザサン」を5個も使えば、夜の明かりも十分である。インターネットは「スターリンク」で衛星から取っている。暖は熱効率の高い薪ストーブで、テントサウナも常備している。
 すでに近隣の人たちが興味津々遊びに来ているという。
 誰もが仕事を持っており、人によっては数カ月、数週間、数日単位で、ニュービレッジでの多拠点生活を楽しんでいるのだ。
「食料に関しては、農家や漁師に手伝いに行き、労働対価を食料でいただくことで、1日1ドル生活が可能になるんです」
 担い手不足、高齢化する田舎の町で、いまや草刈りも簡単ではない。
 自給自足やヒッピーは、そこで自己完結してしまい、勝手にどうぞと言うしかないが、ナオ君たちの活動は、フン詰まった感のある田舎に、明かりが点るような希望を感じた。
 ほんの小さな支え合いだろうが、新しいかたちの田舎づくりが始まっているのだ。同様のニュービレッジ活動はタンザニアでも行われている。
 僕は近隣の家々を訪れるたびに、ナオ君たちのことを紹介し、地元の人たちも、新しい形の住民をやわらかく受け入れようとしてくれている。

https://forbesjapan.com/articles/detail/35290

 


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