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下田最前線⑦下田愛があふれる

 下田の町なかにある『Table Tomato』(写真)は、オープンして6年目だ。大磯在住で下田出身のライター山田真由美さんが始めた。
 もとはご両親が営む洋服屋だったが、他にも民宿や畑もやっており、齢もあって、閉めようという話になった。ただでさえ町なかは、空き店舗が増えている。この店まで閉じちゃうなんて……と真由美さんが一念発起して立ち上げたのが、現在のダイニングバー&レストランである。大磯と行ったり来たりしながら、月に10日ほど開店している。
 真由美さんは、ライターとして名店の取材をしてきた。『おじさん酒場』や『女将さん酒場』といった著書もある。取材がこうじて、自ら料理に腕を振るうようになったのが、このTable Tomatoだ。
 この日は、傘寿に近いSさんを筆頭に、下田の大先輩方をお招きした。Sさんが日本酒通なので、おかずも合うものを真由美さんにお願いしていた。
 出てきた酒は、県内袋井の名酒『国香』である。辛口でキレがいい。
 まずは原木椎茸と小松菜とあぶらげの酢味噌和え。
「わしゃあ、こういうおかずが大好きでな」Sさんの頬が緩む。
 下田らしい沖タカベの酒盗和えは、沖タカベの上品さが際立っている。スペアリブと大根の炊き合わせ、真由美さんのお父さんが作った里芋は、唐揚げに。身がホクホクと柔らかく出来上がっている。
 大先輩方の昔話から、下田を憂うる話、どうすりゃいいこうすりゃいいと、酒と一緒に料理を味わいながら、話がヒートアップする。
 いつもそうだか、下田人と飲み食いすると、必ず下田の話題に吸い込まれ、訳が分からなくなることもしばしばである。
 何が、下田人をこうも熱くさせるのか。
 店内には、トマトのステキな絵画が飾られている(写真)。ふとのこの絵を見上げて僕は思った。
 下田人を熱くさせるのは、下田愛ではないか。
 そんな下田愛が、この店を誕生させている。そして下田人の熱き語り合いにも、常に愛が満ち溢れているのだ。これまでも僕は酒席で、下田愛に吸い込まれ、巻き込まれ、蹂躙され、つるし上げられ、もみくちゃにされてきた。腹が立つこともあるが、後になったら、やけに心地いい。
 その後、サイクローンイサン(イサン風ソーセージ:タイ料理)やカキのグラタンを食べて、たっぷり飲んだ。そして二軒目はSさんご指名のカラオケスナックである。
 Sさんが切なく歌い上げたのが島津亜矢の『お吉』だ。
 この夜の宴も、最後は当然のように、下田愛で締めくくられた。

『Table Tomato』のご予約はこちらから
https://www.facebook.com/TableTOMATO

山田真由美さんの著作はこちら

「お吉」島津亜矢


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