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空の果て、世界の真ん中

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歯車の塔の探空士のリプレイ小説です。 2021/11/11〜継続中
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2021年12月の記事一覧

空の果て、世界の真ん中 幕間1

空の果て、世界の真ん中 幕間1

空の果て、世界の真ん中
幕間1

立ち込めるのはふたつの煙。

肉を焼く煙にいぶされながら安酒をあおり、
議論しながら紫煙をくゆらせる人々。

ここはシティ中層のありふれたパブ。
喧騒が煙と共に充満している。

今この空間ではとある探空士たちについて
酔客連中が喧々諤々言い争いをしている。

「だぁから!
 カロンはもっとこう、細やかなんだよ!」

怒気を含めて吠える男。

「いーや、“殺しても死

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空の果て、世界の真ん中 1-9

空の果て、世界の真ん中 1-9

空の果て、世界の真ん中
第1話、始まりの船9

ブーン兄弟の顔に疲労の色が浮かんできた。
もうどのぐらい語っているだろう。

店も本来なら閉店時間を過ぎている。
だが、店主も店員も
そんな事を気にしてはいない。

客たちも同じだ。
翌日も仕事だというのに。

だが、ここまで聞いたからには
終わりまで聞かなければ後悔する。

もう少しのはずだ。
兄弟の手元の台本を見ればわかる。

残っていたエールを

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空の果て、世界の真ん中 1-8

空の果て、世界の真ん中 1-8

空の果て、世界の真ん中
第1話、始まりの船8

ジーノが語りを切り、エールをゴクリ。
マリオもおかわりを受け取る。

するってぇとアレかい?
大昔の船を手に入れたってのか?

例の凄い速い船みたいな
トンデモ性能の船だったってのか?

さあ、どうでしょうと言って
ジーノは小腹が空いたのか
腸詰めをつまんで口へ運ぶ。

ジーノ、あんたすげえよ。
藪から棒に誰かが言う。

頭のイカれたホラ話を
こんな

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空の果て、世界の真ん中 1-7

空の果て、世界の真ん中 1-7

空の果て、世界の真ん中
第1話、始まりの船7

ブーン兄弟が喉を潤す間、
客たちは先の予測を始めた。

無人塔に遭難したらどうなる?
救助を待って餓死が普通だな。
誰も近寄らない塔ならまず死ぬ。

魔の三角空域を抜けられる奴が
そんな立て続けに出ると思うか?

まさか凄い速い船を強奪したか?
いや、そんなものドックに来たら
あっという間に噂になるだろ。

わいわいと盛り上がる店内。
みんなが物語に

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空の果て、世界の真ん中 1-6

空の果て、世界の真ん中 1-6

空の果て、世界の真ん中
第1話、始まりの船6

ジーノはじらすように言葉を切り、
エールを飲んで喉を休める。

客のひとりがガタッと立ち上がり、
無事だったのかとたまらず尋ねる。

落ち着けよ、帰ってきた連中の話だ、
無事に決まってるだろうに。

他の客に指摘され、
照れ臭そうに座り直す。

良い反応だ。
熱中して聞いている証拠だ。

ジーノは嬉しそうに兄を見る。
兄もニッと笑ってウインクで応えた

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空の果て、世界の真ん中 1-5

空の果て、世界の真ん中 1-5

空の果て、世界の真ん中
第1話、始まりの船5

ジーノの脚本家としての評判は悪い。

ありきたりの展開、人気作の焼き直し、
驚きなど無い、いつものジーノ。

だから、今語られている話は
少なくともジーノが作った物語ではない、
それは間違いないだろう。

ジーノの得意とするところは
話を膨らませて脚色することだ。

つまり話してるそのままが
真実ではないと思われる。

だからといって、誰が思いつくだ

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空の果て、世界の真ん中 1-4

空の果て、世界の真ん中 1-4

空の果て、世界の真ん中
第1話、始まりの船4

魔の三角空域の中心に晴天?
巨大な竜巻の中に未知の塔?

呆れた視線がジーノに突き刺さる。
吹くならもう少しマシなホラがあるだろ。
客たちの目はそう言っている。

どうする?
マリオから弟への目配せ。

大丈夫だ兄貴。
この話は絶対にウケる。

頷きあう兄弟。

言いたいことはわかりますよ皆さん。
まあ、続きを聞いてくださいな。

別段、金を払って聞

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空の果て、世界の真ん中 1-3

空の果て、世界の真ん中 1-3

空の果て、世界の真ん中
第1話、始まりの船3

魔の三角空域の空図だぁ?
とんだ与太話じゃねえか、盛りすぎだろ。

でも、妙なフローレスが現れたってのは聞いたぜ。
ギルドにいた連中、しばらくその話で
持ち切りだったんだ。

マリオとジーノはエールを飲んで軽い休憩。
その間に客たちはあれこれ想像を巡らす。

その連中、帰ってきたんだろ?
魔の三角空域ってのはホラ吹いてるんじゃねえか?

でも行きとは

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空の果て、世界の真ん中 1-2

空の果て、世界の真ん中 1-2

空の果て、世界の真ん中
第1話、始まりの船2

空の果てだってよ、とんだ命知らずだ。
聴衆はげらげらと笑っている。

マリオはエールを一気に飲み干し、
酷使した喉を潤わせる。

女子供しか出てこないから喉が疲れるぜ。
そう、こぼすなり誰かが追加のジョッキを渡す。

それでそいつら、すぐ飛んでったのかい?
客の疑問にジーノがニヤリと笑う。

それが傑作でね、船はあるが金は無い、
とんだ無計画な船長だ

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空の果て、世界の真ん中 1-1

空の果て、世界の真ん中 1-1

空の果て、世界の真ん中
第1話、始まりの船1

立ち込めるのはふたつの煙。

肉を焼く煙にいぶされながら安酒をあおり、
談笑しながら紫煙をくゆらせる人々。

ここはシティ中層のありふれたパブ。
喧騒が煙と共に充満している。

そんな空間に新鮮な空気が吹き込んだ。
新しい客の来店だ。

入口付近の者たちが目を向け、
おおっとどよめきの声を上げる。

何事かと店中の客が開いた扉に視線を注ぐ。
そこには

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空の果て、世界の真ん中 はじめに

空の果て、世界の真ん中 はじめに

はじめに

本作はテーブルトークロールプレイングゲーム(以下TRPG)、「歯車の塔の探空士」のリプレイ小説です。一度限りのシナリオのためネタバレを心配する必要はありません。

本作は「著:中西詠介」「冒険企画局」「KADOKAWA」が権利を有する「蒸気と冒険の飛空艇TRPG 歯車の塔の探空士/黒煙の軌跡」の二次創作物です。
(C)中西詠介
(C)Adventure Plannning Servic

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