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空の果て、世界の真ん中 1-4

空の果て、世界の真ん中
第1話、始まりの船4


魔の三角空域の中心に晴天?
巨大な竜巻の中に未知の塔?

呆れた視線がジーノに突き刺さる。
吹くならもう少しマシなホラがあるだろ。
客たちの目はそう言っている。

どうする?
マリオから弟への目配せ。

大丈夫だ兄貴。
この話は絶対にウケる。

頷きあう兄弟。

言いたいことはわかりますよ皆さん。
まあ、続きを聞いてくださいな。

別段、金を払って聞いているわけではない。
エールを奢った者もいるが、
ここまででも十分楽しめた。

熱気は失われたが
興味が完全に消えたわけではない。

作り話だから面白くないなんて
そんな事を言い出したら劇場は廃業だ。

若干、語りにくい雰囲気にはなったが、
ブーン兄弟は再び台本に目を落とす。


レイラズの空図によれば――
竜巻を突破する最適解は正面突破だ。

魔の三角空域の嵐の中を
この空図を頼りに進んできた。

そこに間違いは無かった。
だからこの解も合っているはずだ。

だが、船体はもつのか?
機関は大丈夫なのか?

舵輪を握るルージュの手のひらは
嫌な汗でびっしょりだ。

手汗を拭こうと視線を机に向けたルージュ。
妙な気配に計器類から振り返ったローラ。

ふたりが見たものは、
ルージュの手帳が風も無いのに
ペラペラとめくれていく光景だった。

淡い光を放ち、尋常な品ではないことが
一目で見て取れる。

「なんだいそれは?
 何かいわれのある品かな?」

アンティーク貴族のエンフィールド家は
魔法の道具に詳しい。
そしてローラは人一倍好奇心が強い。

当然のように近寄り覗き込む。

「ぁ、あぁ。……ちっとな」

自分以外に人がいたことを思い出し、
ドキリとするルージュ。

「いわゆる、形見の品……って奴さ」

その言葉は歯切れが悪い。

手帳はとあるページで動きを止めた。
そして――

誰かの視点と思しき光景が、
幻像として浮かび上がる。

目の前にはひどく造りの古い
飛空艇の操舵輪。

握る手は逞しい男性のものと
一見してわかる。

隣から声が掛かった。

「進むのですね」

聞き覚えのある透き通った声。
視点が少し動き、声の主が映り込む。

空を思わせる青い花、
右目にそれを咲かせたフローレス。
見間違いではない。レイラズその人だ。

「この先は、あの時から、
 時が止まり続けた場所。

 この先の道は、まだ誰も知りません。

 生きて帰ってくることは、
 出来ないかもしれませんよ。

 それでも、進むのですか?」

視界の主は、当たり前だろ、と答えた。

「俺は、道の先へ進んでやる。

 誰も知らない未知? 上等じゃないか!

 見てろ、レイラズ、教えてやるよ。
 人間の可能性ってやつをな!」

男は手汗を拭って進路を見据える。
見覚えのある竜巻。

真っ直ぐと、正面から、船は突入し、
レイラズの称賛の声が響く。

「素晴らしい。
 道なき道を行く人。
 きっと貴方の進む先には――」

その先は幻像が乱れる。
わかったのは幾度も船が墜ちかけ、
男がそれを耐え抜いたこと。

竜巻を抜けたところで幻像は消えた。

「見えたか?」

手汗を拭うことも忘れて
ルージュはローラの顔を窺う。

「余計な詮索をする気は無い
 と言いたいところだけれども、
 私の好奇心ははちきれそうだよ」

ローラの言葉にルージュは笑い声をあげた。

「そうだろうな。
 如何せん、あたしにもコレは
 良く分からねーものだ。

 ただ、クソ親父……から
 受け継いだ物とだけ」

ローラの表情が少しこわばる。

「ふむ、船長の父上は英雄だった、
 ということだな。

 我が家の道楽者とは出来が違うようだ」

手記に向けられる視線には羨望の色。

「いや、それが違うようだな」

船長はきっぱりと断言する。

「……レイラズの声は聞こえたな?

 だけどな。
 あの男の声。
 あたしが聞いたことのない声だよ。

 変な癖は同じだったみてーだがな」

そう言って手汗を拭い、ケラケラと笑う。

「そうなのか……ふむ。
 帰ったら彼女を問い質してみようか。

 はは、帰りのことを考えるには
 まだ気が早いか」

「だな?」

ニヤっと笑ってルージュは伝声管を開く。

『カロン! 聞こえるか!』

『ん~? どうした?』

『天啓ってやつだ。
 視えたぞ、道がな』

カロンの返事には少し間があった。

『…………。

 ……いいねぇ。

 んじゃまたいっちょ、出力全開で?』

ウキウキした声でルージュは応える。

『あぁ、その通り!
 直進さ。ぶっ放せ!』

『アイアイ!』

ルージュは先程の幻像と同じく
真っ直ぐと、正面から、竜巻へと向かっていく。

「ははは、満面の笑みで
 竜巻に突撃する我々を見たら
 人はなんと言うだろうね」

「知るかよ!

 言わせておけばいいのさ。
 このスリルは! バカにしか味わえねー
 醍醐味なんだからよ!」

笑い声をあげながら伝声管を開く。

『ラニ! 揺れるぞ?』

『こちらラニ、了解。

 やっぱり……あの竜巻に
 向かってく感じなんですね……』

声だけでも顔が青ざめているのがわかる。

『あぁ、ふわっと浮いて、
 ガバーって傾いて、
 場合によっちゃぁ回転だ』

『りょ……了解!』

ラニはその辺りのものに
掴まったことだろう。

必死な声にルージュは笑い声をあげ、
重畳重畳とご機嫌だ。

「ほんじゃ、いくぞ!」

インペリアルフローレス号は
竜巻へと突っ込んだ。


複雑な迷宮のような竜巻の内部。
暴風の壁にぶち当たれば
船を激震が襲うだろう。

だが、彼女たちには空図がある。
正しい道順を示した奇跡の空図が。

船内には凄まじい音が鳴り響く。
そして断続的な揺れ。

だが――すでに通り抜けてきた
魔の三角空域よりマシだった。
空図に従っている限りは。

だからか、あの頭のネジの緩んだ連中は
わりと慣れてしまっていた、
そんな状況に。

「たのもー!」

カロンが騒々しく電探室のドアを開け
ラニの肝を潰させる。

「うわビックリした!?」

「お、いたな!
 なんだそんな驚いた顔して?」

緊張の中、心細くしていた少年に
驚くなというのは酷な話だろう。

「そりゃ驚きますよ!
 頑張ってここで周りに異常がないか
 チェックしてたんですから……」

「まあいっか! 今暇?
 暇だよな! 暇だ!」

「えー」

暇といえば暇だ。
三角空域と違って
船の残骸も飛び交っていない。

「まぁ暇で……暇でいいですよ」

この船の連中のアクの強さに
慣れてきたラニは苦笑した。

「よし! だよなー!」

はいどうぞと、もうひとつの椅子に
クッションを置いて座るよう
勧めるラニ。

カロンはというと、遠慮の欠片もなく
クッションを複数重ねて
目線の高さを合わせて座る。

「オレも機関に山ほど
 燃素喰わせてきたところだから、
 今ならちょっと時間あるんだよ。

 ずっと気になってたんだけど、
 顔合わせの時に見せてた短刀。

 それって秋津刀だろ?」

「短刀……あ、これ」

目まぐるしい事態に腰に下げていたことを
すっかり忘れていた。
当然、手入れの暇も無かった。

それは確かに秋津刀のようだが、
秋津洲の文化らしからぬ
奇妙な紋章が柄に施されている。

「そうですねこれは……
 たぶん、秋津刀です。たぶん」

「へえ…見せてもらってもいいか?
 嫌ならいんだけどさ」

「どうぞどうぞ」

思いの外、気軽に手渡す。

「カロンさんの立派な刀に比べて、
 そんないいモノじゃないと思いますよ」

「さんきゅ!」

軽い笑顔と声とは裏腹に
ひどく繊細な手つきで短刀を受け取った。

慎重に鞘から抜き、舐めるように見回す。

「……ふうん?

 ミスリルとも違う独特の鉱石……
 この刃紋と造り……。

 間違いねえな。
 秋津洲の変態技術が
 これでもかと詰まってやがる」

あの塔の技術者は、
何の分野でも妙なこだわりを
とことん突き詰めるのは知っての通り。

「……それ紋章が僕の本当の親に
 関係していると思って、
 持ってきた品なんです。

 カロンさん、トレジャーハンターで、
 物に詳しい……ですよね!

 何か知ってたりしないでしょうか!」

いつものラニとは違う距離の詰め方。

「ん~……そうだな……
 …………これは……」

「これは……?」

ゴクリ、ラニの喉が鳴った気がした。

「……わっかんねえな!」

ラニの集中が霧散し、
やり場を失った意気が抜けていったような
弛緩した空気が流れる。

「ははは! わりぃ!」

「も~! からかわないでくださいよぉ」

さすがのラニも怒ってみせる。
もちろん、愛嬌のある顔で。

「あはは、ごめんって!
 ……ただまあ、オレがわからないんだ。

 少なくともその辺
 ちょろっと回って、はいどうぞ、で
 見つかるようなもんじゃねえな」

「そうですよね」

消沈するでもなく笑みを見せる。

「ああ。気長に探すこったな!」

「ありがとうございます!
 カロンさんでも知らないってことは……

 本当に空の果てに関係あるんだなって、
 自信がつきました」

笑みの理由はこれだ。

「まあなんもわかんねえってことしか
 わかってねえんだけど!

 ……ああそうそう。秋津刀は
 いい品だけど手入れ怠ったら
 すぐにすねるやつだからな。

 こまめにちゃんとメンテしてやれよ」

鞘に収めながらそう言って、
短刀をラニの手へと返す。

「メンテナンス……そっか。
 道具は大事にしないと、ですね」

ラニは受け取ったばかりの短刀を
再度カロンに差し出す。

「あの! よかったら
 メンテナンス方法教えてくれませんか?

 お礼と言ってはなんですけど、
 紅茶とか、お菓子……

 パンの耳で作ったやつですけど……
 そういうのあるんで、休憩がてら」

「……ふうん?」

電探室内のテーブルの上を見て
カロンは答える。

「いいぜ。……ただし!」

「ただし……?」

「秋津刀ってのはまずメンテのために
 一回全部バラバラにしてやんなきゃ
 なんないわけ。

 ……オレが先にバラしてもいいだろ?」

新しい玩具を目にした子供の顔だ。

「は、はぁ……いいですけど……」

バラす、というのがピンときていないラニ。

「よっしゃ!」

サッとラニの手から短刀を取る。

「いやあ~、自分以外の秋津刀
 触れる機会なんてそうないからさ~。

 とんでも技術大集合!
 やっぱあいつらちょっとおかしいわ!」

ラニは水筒からコポコポと
紅茶をカップに入れつつ笑みをこぼす。

「んじゃ、やりながら説明するからな~。
 まずここの目抜きを~」

「勉強させてもらいますね!」

慌ててクロッキー帳とペンを手に取った。

その後、お菓子を食べたりしながら
ふたりは楽しく秋津刀をいじり倒す。

それはラニの就寝時間まで続いた。

思ったより長居したことを
軽い口調で詫びながら
カロンは機関室へと戻っていく。

そこでラニは思い出す。
電探のことでルージュに
確認したいことがあったのだと。

寝られる時に寝ろとどやされそうだが、
サンドイッチと紅茶、
ウイスキーを垂らしたものを用意する。

操舵室へと向かい、カロンに毒されたのか
ノックもせずに無造作に扉を開けた。

軽食のお盆を一旦テーブルに置いて
操舵輪を見ればそこには
魔法で動く紙人形。

ルージュはソファに座って
何かに集中している。

手記だ。

ラニが声を掛けようとすると、
突然ルージュは自らの親指をかじった。
血がにじむ。

ビクリと動きを止めるラニ。
集中している船長は
見られていることに気付いていない。

手記に血を垂らして手をかざすと、
幾何学模様が宙空に浮かび上がる。

魔法だ。

「……全くわかんねーな。
 何がどうなってんだ?」

口元は、血まみれ。
悲鳴をぐっとこらえたラニは思わず
扉の影に隠れてしまう。

吸血鬼。
アンティークは人の血を吸う
という噂がある。

あくまで噂と思いつつも、
ラニは肝を冷やして退室した。

血まみれのルージュの顔を思い出し、
恐怖を感じながら自室へ急ぐ。

そんな時に通路の角に
ローラが立っているのに気付いた。

やけに青白い顔で呟いている。

「血が……足りない……」

反射的に物陰に隠れてしまうラニ。

魔法の使いすぎで
貧血を起こしているローラは
ふらふらと通り過ぎていった。

血を求めるアンティークが
去ったことを確認したラニは
焦りを胸に自室を目指す。

「怖くない~……
 怖くないったら怖くない~……」

哀れ、小声で歌い、気を紛らわせている。

「吸血鬼なんて怖くない~……」

布団をかぶってぎゅっと目をつむるが
眠れそうにない。

しばらくそうしていたが、
諦めてベッドから這い出て
スケッチブックを手に取る。

描き始めたのは吸血鬼の絵。
ルージュに牙が生え、血を滴らせている。

顔の横に吹き出しを書き足す。
怖くないよ~、と。

興が乗ってローラも描く。
吹き出しには、血は吸わないよ~。

「……ふふっ。吸血鬼でもいいかも」

気が紛れたので先程見た
幾何学模様を描いてみる。

彼の隠された才能、
一度見たものを正確に模写する能力で。

完成した直後、ズキリと頭が痛んだ。
鉛筆を取り落しそうになる。

「……なんだろう。よくない感じがする」

スケッチブックをしまい、
再びベッドに潜る。

天井を見ながら呟いた。

「マキナさん……
 僕、この人たちについていけば……

 ちゃんと父さんと母さんに
 会えるよね……?」

思考は堂々巡り。
それでも蓄積された疲労によって
いつしか微睡みの中へ。

数時間後。

ラニは短い睡眠を終えて
寝不足の目をこすりながら身支度を整えた。

一方、操舵室。

「………ぬぐぐ」

舵輪を握るルージュは風と格闘している。

「……ったくいつまで……よっ!」

揺れに異常を感じて操舵に専念し始め
数十分が経過した。

「お? ………んん???」

正面は相変わらず黒々とした雷雲。
雷鳴に突風に、散々だ。

しかし、感触が変わる。

「クソ親父がよくよく言っていた、アレ、だ」

伝声管を開いて叫んだ。

『こちらルージュ。
 出口を感じたからよ?
 ぶっ飛ばすが、機関は元気か?』

機関室から元気な応え。

『ほいほい~。
 たっぷり飯食って元気だぜ~』

丁度、燃素を焚べたところらしい。

『ラニ、青タン増えてるの、
 分かってんだからな?
 隣であたしに抱かれるか?』

ケタケタと笑って言うと
抗議の声が返ってくる。

『だ、大丈夫です!
 子ども扱いしないでください!』

先ほどから隣に来ていたローラに。

「今晩の酒が楽しみだよ」

ニッと笑って見せる。

「さてさて、ここを抜けたら
 塔があるとは言っていたけれどね。

 何が待ち受けているやら、
 楽観視はしないでおくよ」

疲れた顔のローラはそう応えた。

「ハッハッハ! 夢見てこーぜ!

 っしゃ!! 全速前進!!
 開けない夜はぁぁ!!!!』

変速レバーに手をかける。

『ないんだぜ!!』

最高速度へと切り替えた。

インペリアルフローレスの
プロペラが加速する。

速度を増し、分厚い風の壁に突っ込んだ。

ただでさえ古い船体は軋みを上げ、
壊れるのではないかという異音を鳴らす。

暗かった竜巻の中に慣れた瞳が
突然増した光量に耐えきれず、眩む。

再び目を開くと、
真っ青な空の下にその塔はあった。

一体、どれほどの歳月、
ここで放置されていたのだろう。

所々が朽ち果て
構造材を剥き出しにしながら
その塔は立っていた。

タッタッタッという軽い足音が響く。

カロン、いや、ラニの足音だと
ルージュにはわかった。
ニヤリと悪戯な笑みを浮かべる。

魔法を込めた紙を
操舵室の入り口へとふわり。

「と……とととと塔が!

 と、とうとう着いたんですね……!!」

興奮で頬を紅潮させ、
叫びながら入室したラニは
紙を踏み抜く。

次の瞬間、板バネのように
魔法の紙はラニの体を跳ね飛ばした。

「うわーーーー!?」

腕を広げて待ち構える
ルージュの胸にダイブする少年。

「はっはっは! 釣れたぜ」

抱きとめてくるりと回転。
背の高いルージュに
文字通り振り回される少年。

「ぼ……

 僕の血は美味しくないと
 噂されておりまして、

 口当たりは最悪で、
 喉越しは不快の極みですぅ!」

何か口走っているがルージュは気にせず
前方の窓へと踊るように進む。

塔を眺めるには特等席。

「……わぁ」

ラニの口から感嘆の声が漏れた。

「神秘的で……
 上手く言葉にできないけど……。

 雷雲を超えて……
 やってやったんですね、僕たち」

呆然と朽ちた塔を見つめる。

「あぁ。やってやったのさ、ラニ。

 ひとつ、オトナになったな?」

含み笑い。

抱き上げられながら
こんなことを言われたら
普段なら顔が真っ赤になるところだろう。

だが、今は高揚していて
まっすぐにルージュの顔を見つめる。

血まみれではない、いつもの船長の顔。

「はい……少し、そうなれた気がします。

 って! ぼ、僕はもう大人ですよ!
 子ども扱いしないでください!」

ルージュは自称大人を片手で抱えると、
もう一方の手で腹を抱えて笑った。

ひとしきり笑うとラニを下ろし、
操舵輪前へと移動する。

「さて、着陸準備だ、ラニ。
 地面まであと少しだ」

「……はい!」

元気よく返答する少年の胸には
高揚と、安心と、達成感。

ルージュの笑顔を明るい表情で見つめる。

一連の流れを眺めていたローラは
邪魔にならないよう、ひっそりと笑っていた。


かくして、インペリアルフローレス号は
謎に満ちた古き塔へと辿り……着かない。

全員の耳をつんざく
聞いたことのない音。

天に響く、風を引き裂く異音。

まるで弾薬庫に引火したような、
いや、落雷が直撃したような、
違う、どちらとも異なる怪音。

空気の壁をぶち破ったがごとき、
ありえない爆音。

そいつを伴って、それは下から現れた。

下から、つまりあの雲海からだ。
すべてを押し潰す、あの雲海からだ。

「なんだい……あれは……下から来るなんて……」

尋常な速度ではない。

それなりの距離ですれ違っただけで
インペリアルフローレスは大きく揺れた。

雲を生み出しながら、
信じられない速度で飛ぶそれは……
船だった。

船体には紋章が。
ラニの短刀と同じ紋章が描かれていた――

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