母の家を片付ける その10 便利屋さんがどうしても移動できなかった「アレ」と、老いた親と向き合うという難題
あけましておめでとうございます。
昨年12月から始めた母の家を片付けるプロジェクト。勝手に書き続けているのは、自分自身への作業の記録を含めた、さまざまな気付きの記録です。
加齢によって「できなくなる」ことを少しでも改善できればとの思いからはじめた片付けと模様替え。でもその中で起こる想定外のさまざまな出来事も。
今回は年の瀬迫る30日に起きた、予想外のこと。
家具の移動を便利屋さんに頼む
今回の片付けの目的は、2階にある母のベッドを1階の和室へ移す(安全のため)ことと、父の使っていたベッドやパソコンデスク、椅子などを粗大ごみで廃棄すること。
父のベッドを、こうして処分してもよいと母が思えるまでに3年。
感慨深い。
今回の模様替えの発案者でもある息子が、自分でもできるよと言っていたんだけど、そこに紛れ込んできたのが、母の鶴の一声でござった。
「2階にある業務用ミシンを1階の居間におろして欲しい。そうしたら1階で作業ができる」
もともと、フォーマルウエアの企画や販売指導などの仕事をしていた母。自身でも帽子やコサージュを作っていて、その道具と材料が大量に(というか膨大に甚大に)存在している。(もう、涙出る)
でも、そうした手仕事が励みになっているところもあり。もともと2階を仕事部屋にしていたのですが、もう混沌としているので、日中多くの時間を過ごしている居間にミシンを移動したいという。
こりゃ歓迎すべきことなので、両手を上げて賛成する。
が
しかし、この業務用ミシンが。
鬼重い。
無理
というわけで、ほかの家具の移動も含めて、業者さんに依頼することにしました。
以前自宅でも数回お世話になっている便利屋さんに電話をする。もうね、女手一つ、シングル子育て歴長いからね。家具の移動とか、もろもろ、人に頼る、お金で解決する。そういう知恵だけはついた。ビバ、そんな私。
概要話して、2人必要で1時間から1時間半で14.000円から18.000円と見積もり。空いているのは年内だと30日午後のみ! というわけでサクッとお願いする。助かる!
業務用ミシンという魔界
というわけで、にこにことやってきてくれた便利屋さん。この人達がほんといい人たちで。
男女(たぶんご夫婦?)コンビで、重い荷物をサクサクとおろしていく。時間を節約するために、息子と二人で予め解体しておいたベッド。母の分は1階へ、父のはまとめて粗大ごみとするため駐車場へ。
さて、ここで懸案の業務用ミシン。あのぉ、鬼重いんですけど。これどうやって上げたの?
母の話によると、2階に搬入したときには、購入した近所のミシン専門店の人と父の二人で難なく2階に上げた、と。なので、問題なく1階におろせるはずだという。
が
来てくれた二人がミシンを持ち上げようとして気づく。
ミシン本体を倒すと、下部の機械類が深さ3センチほどの機械油の海に浸っている。
油田出現
はじめて見たよ、油の海
「ああ、これ傾けると油がこぼれますね」
「重いのはいくらでも平気なんですが、長さと高さを測ると階段の角を曲がれそうもありません。ミシン部分を分解して運びたいのですが、配線も複雑で勝手に分解もできない。困りました。。。。。。。」
あれれ。
とりあえず油の海を大量の古布(とっておいてよかった!)で吸い取り、こぼれないようにして母を呼ぶ。
ねえ、これ、どうやって2階に上げた?
曖昧な過去の記憶、受け入れるスピードが遅くなるということ
ほんとに人の良い便利屋さんたちは、あれもこれもと工夫してすごく頑張ってくれた。
でも、結果として
「これは専門家に頼んだほうがいいかも。無理をして本体を傾けて階段をおろしてしまうと、油が回って故障する危険もある。私達の知っているミシンやさんが○○通りにあるから、年が明けたら連絡を取ってみては」
が
母は譲らない。
「パパとミシン屋さんで普通に2階に上げたのに、なぜ下ろせないの?」
私:階段の角を曲がれないって。たぶん、ある程度の状態で上に上げて、2階で組み立てたり調整したのでは?
「このままの状態で来た。パパとミシン屋さんでこのまま上げた。なんで? なぜできないの?」
便利屋さん二人、じゃあもう一度やってみよう、とあれこれ工夫しながら階段を下ろそうとトライ。でも傍目に見てもどうやっても無理っぽい。
「○○さんっていうミシン屋さんなの。でも道路拡張でお店がなくなっちゃって、もういまどこにいるかわからない。でもその人から買ったの。その人とパパが上げてくれたの」
ぷぅ、とふくれっ面。
でね
片付け娘は気が気でない。
これ、時間でお金払っているんだよ。現状、母が座り込んで「なんで? なんで?」となっているのに説明をして、納得してもらうためにもういちどトライしてみて。。。。。の繰り返しでもう30分ほど費やしている。
まだいっぱい仕事残ってるから!!!!
そこでやっぱり思うわけです。年を取ると、記憶は曖昧になっていく。いや、もしかすると母の記憶が正しいのかもしれない。でも、それが同じようにできないという今に、なかなか順応できない。
実家の片付け。
親が存命であるか、亡くなっているかでほんとに状況は違うと思う。亡くなった親の家を片付ける切なさや困難も計り知れない。
そして存命である場合、こうした感情的なせめぎあいと、親も子もどう折り合いをつけていくのかというのは、本当に難しいもんじゃのう、と思う一人娘、おれ。
誰を尊重するのかという基本に立ち返る
結果的として、ミシンを諦めてもらい、ほかの作業を滞りなくお願いして1時間に収めてもらえたので、その金額をお支払いして、30日の作業は終了となる。
大量に出た粗大ごみ、ほかのごみ袋などは、息子が駐車場でまとめたり片付けたりと、本当によく働いてくれた。
私はわたしで、前日の布団の搬出からこの日の家具移動まで。いろいろな交渉やスケジューリング、搬出に向けての片付けや準備などで、これりゃまた本当によく働いた。
そんな中で。
なんというか
じわーっと心のなかに生まれた気持ちに、どこか後ろめたいような、悲しような気持ちで向き合うこととなった。
これまでずっと自分の中には
これは、母のためにやっていることだ
母の安全のために、息子も私も忙しい中、何日も時間をかけて取り組んであげていることだ
という思いがずっとあった。
そんな中で、この日。
依頼した便利屋さんが「できない」ということに対して、「前はできた」と食い下がる母に、私は無性に腹を立てていたんだった。
「こちらの用意した段取りを狂わせないで欲しい。せっかく節約できるように工夫しているのに。」
それで、いろいろ工夫し続けている便利屋さんに、母のいないところでこんなことを言った
「いいんです、どうせ覚えていなんですよ。父とミシン屋さんに任せて、自分は何もしていないんですから、わかんないんです。もう年だから記憶も曖昧なんです」
そしたらね
ミシンを持っていた二人は、
「いえ、そんなことはありませんよ。ご希望に添えなくて申し訳ないです」
と、とても悲しそうな顔をした。
それで
なんだか、はっとしてしまったんだった。
私が尊重すべきなのは、誰だったんだろう? って。
階段が危ない、移動が危ない。
あれができない、これができない。
そんな言葉と感情を、片付けを始めてから母に無自覚に投げつけていたことに気づいた。その中で、外の世界に対して発していた言葉は、ちっとも親を尊重できていなかったように思った。
主人公は、誰だったのか
忘れていた。
今回の片付けの本当の主人公は、母だったはずなのに。
というわけで、便利屋さんでも移動できなかった業務用ミシンは、年明けの課題として残されることになって、同時に私にも、ちょっとした感情の課題を残すことになった。
しかし、果てた。
疲れた。
気がついたら、今回作業の写真一枚もなかった。撮るのさえ忘れてた。
そんな疲れた一日の最後に、またまた事件が勃発!
長くなったので後半はまた!
果てしない。。。。。
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