「ボバ・フェット」後半に向けての考察
ドラマ「ボバ・フェット」1〜3回の振り返りで掲載しきれなかった考察です。全てのスピンオフを網羅するとキリがないので「クローン・ウォーズ」に初登場以降の新たな動きが見られた2010年代前半の状況に注目して若きボバの情報をまとめました。ネタバレも一部含まれますのでご注意下さい。
クローン・ウォーズのボバ・フェット
「クローン・ウォーズ」は原作者ジョージ・ルーカスが最後に手掛けた「スター・ウォーズ」でした。「新三部作」を補完する「クローン戦争」を描いています。
シリーズ総監督のデイブ・フィローニが「彼こそが正史、彼が創造者」とインタビューで答えている通り、作中要素のアイデアの源泉はルーカスです。メイキング映像では現場でも直接指示を行っている様子も見られます。
ボバ・フェットは2010年のシーズン2に初登場。共和国のクルーザーに潜入して父の仇であるメイス・ウィンドゥの殺害計画を実行します。
物語ではクローンや人質の殺害をためらったり、仲間の裏切りに動揺する様子も。そんな彼の態度にジャックスやキリアン提督が感じた「希望」には、ただ未熟というだけではなく新たなボバ像構築と、その行く末にまつわるルーカスの方針が反映されていたのでは、という印象を改めて視聴しながら感じました。
シーズン4で再登場するも未熟な賞金稼ぎとして描かれたきり姿を消します。そしてそのままシリーズはシーズン5で一端打ち切りになってしまいます。
その後、2014年にロストミッションズ(シーズン6)、2019年にファイナルシーズンが製作されますがそこにボバの姿はありませんでした。
ところが本来はシーズン5のフィナーレでボバ主役のエピソードが予定されていたことがのちに明らかになります。物語の具体的な内容は不明ながらタスケンに誘拐された子供をキャド・ベインと共に救出する任務と、キャド・ベインとの決闘が描かれる予定でした。
「スター・ウォーズ セレブレーション オーランド2017」より
決闘のアニマティクスは 47:18〜
スター・ウォーズ:1313
「クローン・ウォーズ」シーズン4〜5のプロダクションと恐らく平行で開発が進められていたと考えられるのが当時ルーカスアーツ(ルーカスフィルムのゲーム部門)が製作していたゲーム作品「スター・ウォーズ:1313」です。
2012年のディズニーによるルーカスフィルム買収から半年後、ルーカスアーツの解体に関連して開発が中止となりました。
ゲームはボバ・フェットを主人公に「新たなる希望」から5〜10年前のコルサントのアンダーワールドを舞台にした作品となる予定でした。
公開されたコンセプトアートは絵によってボバの装備に違いが見られ、ゲームでは「マンダロリアン」のように失われていた(父の形見の)装備を捜して揃えていく内容だったのかもしれません。
なお、現ルーカスフィルム社長のキャスリーン・ケネディは開発再開には前向きである事を2015年のインタビューで語っています。年齢制限付きは避けられないので高いハードルかもしれませんが、なんとか実現することを期待します。
また舞台となるコルサントのアンダーワールドについてはその名をタイトルとした大人向けのドラマ企画も進められていましたが、2011年にキャンセルに。
復活のボバ・フェット
このように、2010年代前半にはボバ・フェットや裏社会をフィーチャーした大々的なクロスオーバープロジェクトの開発が水面下で進行していたと考えられます。
当時はスター・ウォーズ低迷期でもあり、ルーカスや新三部作に対するバッシングも続いていました。ルーカスの引退とディズニーへのルーカスフィルム売却など、因果関係は不明ですがそうした事象と同時期にこれらの企画は立ち消えました。
落胆したファンも多く私もその一人でした。
それから10年が経ち、正史でもサルラックからボバ・フェットが復活。
ファンからはキャラ変の指摘もありますが、特に「クローン・ウォーズ」を振り返ってみると(それがサルラックからの生還が契機になるかは別としても)いずれは自分の運命を選ぶドラマが彼に検討されていたのではないかと思っています。
ゆくゆくはお蔵入りとなってしまった若きボバ・フェットのダークヒーロー的な活躍を描く映像作品やゲームが、(歴史をさかのぼる形で)再び日の目を見ることになれば良いなと思っています。