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海の色は毎日変化する。目に見えない生き物の話。

2018.08.29 22歳

【海で働いて疑問に思ったこと】

漁業現場からのレポート。ここ数日、海が濁っている。周りの漁師さんたちも口を揃えて「潮が悪いね」と言う。

海の中が見通せない。深い緑色をしていて、泳ぐ気もあまりわかない。

僕は疑問に思った。そういえば、季節によって海の色は違う。冬はもっと透き通って、底まで綺麗に写っていた。

漁師たちからの聞き込み調査と知的好奇心に基づく綿密な勉強の結果、海の生き物たちの「活動具合」によって海の色が変わるということが判明した。

【海を濁らせる奴らの存在】

奴らの名は、プランクトンだ。

プランクトンを知らない人はおそらくいないだろう。名前を聞く機会はよくあるけれど、プランクトンを説明できる人は少ないように思う。

プランクトンの定義、言えますか?

水中を浮遊する小さな生き物のこと。自分で泳ぐことはせず、ただ流れに身を任せて移動する。これがプランクトンの特徴であり、そうでないものは別の名前で定義されている。

プランクトンは泳ぐ能力がないから、流されるがままに海のなかを漂っている。これを踏まえて話を進める。

プランクトンは大きく分けて2種類。

①植物プランクトン
アオミドロ・ボルボックス・クンショウモ・ミドリムシなど。

②動物プランクトン
ミジンコ・アメーバ・ゾウリムシなど。

生きていくために行う活動の違いによって、分別される。植物プランクトンは光合成によって生きるエネルギーを蓄える奴ら。動物プランクトンは他の生物を捕食することによってエネルギーを蓄える奴らである。

プランクトンたちの量が増えれば増えるほど、海の色は濃く濁る。

【プランクトンが増える条件】

海が豊かなほど、プランクトンは増殖する。ここでいう「豊か」とは、海水に含まれる栄養の量が多いこと。

まず植物プランクトンの場合、彼らは葉緑体により日光を受け光合成をして、海中の水と二酸化炭素をでんぷんなどに変え、自分が生きていくための栄養を自分で作り出している。

この光合成を活発に行える環境かどうかは、海中に含まれる養分の量と関係する。海水の栄養度は、陸地から海へ流れてくる水の量と質で決まる。

このことについて詳しく知りたい方はこちらの記事も合わせてどうぞ。

栄養が豊富な海中で植物プランクトンが活発に動き、そして増殖していくと、それらを餌にする動物プランクトンもまた増殖していく。

陸地から注がれる水に含まれる栄養素の違いによって海の豊かさ(栄養度)が変化し、豊かな海であるほどプランクトンがよく育つ。彼らが活発に動くことによって、海の水は濃く濁るようになるということだ。

【海で循環する生命】

プランクトンが増えれば増えるほど、それらを食べて生活する小魚たちも増える。結果として小魚を食べて暮らす大魚も増えて、全体として生き物の量が増える。

もちろんそういった魚たちの死骸はバクテリア(細菌)の餌となり、彼らの活動によって死骸は植物プランクトンが光合成をするための養分へと変わる。そしてまた植物プランクトンも増えて、魚たちも増えていく。

豊かな海では生き物たちの循環が活発に行われているのだ。

【プランクトンが増えすぎている】

地球では生き物たちがそれぞれに役割を果たすことで、うまい具合に循環して生態系が成り立っている。

一部だけが増殖して役割を果たしすぎたり、一部だけが減少して役割を怠ると、その循環に偏りが生じ「異常な」現象が起きるのです。

そのひとつとして有名なのが赤潮だ。

これはプランクトンが「異常に」増えた結果生じる。プランクトンが増えれば増えるほど海は濁るわけだけど、その究極の色として海が赤く染まることがあるということだ。

考えられる有力な原因として、僕ら人間の活動が考えられる。

植物プランクトンが光合成をするために必要とする養分は、たとえば農業排水・工場排水・生活排水などに多く含まれています。これらを川に流しすぎると、あまりにも多くの養分が川から海へと流れるために、プランクトンの大増殖という結果をもたらす。

【赤潮がもたらす影響】

生き物たちが増えるとなると、なんだか良いことのような気もしてくる。しかし赤潮の問題は、生態系のバランスが崩れる点にある。

赤潮によって、海中の酸素の量が極端に減ってしまうのだ。大量のプランクトンが活動する(呼吸する)ことで、酸素を消費してしまう。

またプランクトンの死骸は沈殿・または浜に打ち上げられ、そこでバクテリアが分解してくれるのを待つのけれど、漁業を営む人間たちが浜のあったところにコンクリートの岸壁を建ててしまったことで、より多くの死骸が海上を漂い続けるになった。

死骸は日光を遮るため、海中の植物の光合成(酸素を作り出す作業)を止めてしまう。ちなみに沈殿していった死骸を分解する際にもバクテリアが酸素を消費するから、結果として酸素の量が減り続ける。

つまり赤潮になると、大量の生き物たちが酸欠で死んでしまう。

【まとめ】

以上、赤潮を含めて、海の色が場所や時期で異なる理由がわかった。

プランクトンが育つ環境は栄養が豊富な海で生じるので、海が濁っていることは多様な生き物たちが住む証。

でも栄養が豊富すぎると生態系のバランスが崩れて赤潮などの異常な現象を引き起こす。陸地から流れてきた過剰な栄養によって、生きたプランクトンとその死骸が増えて海に溜まる。

台風や季節風などの自然作用が時々起こるのは、そういった海中の偏りを洗い流し海の状態をもとに戻しす役割を果たしてくれるともいえる。

自然が築き上げた循環のシステムは凄すぎる。こういう風に自然作用の役割に気づいていくと、すべてのことに意味があることに気づいていく。

僕らが住む地球には、いろいろな生き物たちが暮らしている。海が濁っているのを見つけたら、それはプランクトンたちが生きる姿なのだ。

目に見えないくらい小さな彼らの「色」を楽しんでみよう。夜光虫の青く光る姿なんてのも感動ものである。

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