僕らは雪が降る町の住民になりたかった。これは東北のとある町に移住する夫婦の話。
今年は暖冬だと言われた東北にも、最後に帳尻を合わせるかのように雪が降った。薪ストーブの温もりを背中に受けながら、妻が作ってくれた葛湯を飲んでいる。ゴオゴオ、パチパチ、バタン。ストーブの奏でる冬の音を聴く。もうすぐ薪木を焚べないといけないだろうかと火の心配をしていると、雪国に暮らす人の仲間入りをしたみたいで嬉しくなる。でも雪が降って嬉しがる自分は、まだまだこの土地の人ではないかもしれないとも思う。
九州から北海道まで、一年をかけて旅すること。それは気の赴くまま、自由に旅するこ