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「なりたい人は、完成させよう」というアドバイスについて

なりたい人への、よくあるアドバイス

小説でも漫画でもなんでも、プロがなりたい人に向かって言うアドバイスに、「なりたい人は、完成させよう」というのがありますね。
「未完成にしてはいけない」「未完成のまま、次々書き始めて、未完成のものが並ぶのはよくない」「なりたい人の中で、完成させる人はごく一部。完成させたらその一部になれる」なんていう風に続くこともあります。

へーそんなもんかね、と思って生きてきたのですが、最近、私も小説を書いてみて、納得するところがありました。

長い文章を書くためのツールは、手元のものを使うことにした

1年半ほど前に、修士論文を書いたのですが、そのときにScrivenerというツールを使いました。
文章の構成を考え、構成要素ごとに書き、ときに順序を入れ替えたりしながら、最後にまとめる。そんなことが簡単にできます。

小説も、論文と同じく、構造を持つ文章であることは分かっていましたし、Scrivenerのマニュアルや使用例には「小説」というのもあったので、私が小説を書くのにも使うことにしました。

作法(さくほう)の本を読んでみた

いきなり小説は書ける気がしなかったので、小説作法(「さほう」でなく、「さくほう」。マナー的なものではなくて、より実際的なテクニックを説明・例示するもの)を読みました。

何冊か読んだ中で、実際に執筆する気持ちにさせてくれたのは、
『プロ作家・脚本家たちが使っている シナリオ・センター式 物語のつくり方』(新井一樹)でした。

他に『SAVE THE CATの法則』なども読んでみたのですが、私にはちょっと"重たい道具箱"でした。道具箱に全て揃っているんですが、どこから手をつけたものか分からなかったのです。たぶん、私がもう少し実作の経験を積んだら、もっと役に立つ気がします。

作法の効用

数冊読み終わって感じたのは、「作品を読む・分析する解像度が上がった」ということです。映画を見ても、小説を読んでも、作者の工夫や技巧を感知する能力が上がったように思います。これは想定しなかった効用でした。

そして書いてみた

大まかなログラインを考えたあと、書きたいシーン・書けそうだなと思ったシーンを散りばめつつ、プロットを整理しました。

書きたいこと・書けそうなことを少しずつ書く

作法の本では、「なるべくしっかりと全体の構成を考えて、それから書く方がいい」とされていることが多いように思います。
ですが、私は、書きたいシーンや書けるシーン、登場人物に言わせたいセリフを書いていく方が、モチベーションが維持できそうに思えました。なので、個々のシーンを書きつつ、全体の構成が破綻しないように修正しながら、書き溜めるることにしました。

週末に1、2時間、平日の夜にその気になったら30分から1時間。1日で数千字書ける日もあれば、数百字しか書けない日もありました。全く書かない週もありました。

少しずつ書くということ

断続的な書き方で、破綻しないで済んだのは、Scrivenerがあったからだと思います。全体の構成を簡単に見渡す仕組みが無いと、日々の思いつきで書いた断片によって、簡単に全体の構成が破綻してしまいます。Scrivenerを使って良かったと思いました。

早い段階で「書く日のテンションによって文体が変わってしまう」ということは自覚したのですが、これはなかなか修正が効きませんでした。気が付いたときに、後から微調整するしかなかったです。
おそらく、プロはたぶん、そういうブレが少ないんでしょうね。

なんとか完成

そんなこんなで数ヶ月にわたって取り組んで、なんとか一応の完成をみました。Scrivenerからテキストファイルのかたちで取り出し、Wordのファイルにして、段落などを少し整形して、完成です。

執筆中から「書いてるよ」という話をしていた家族に、作品を読んでもらいました。私が数ヶ月かけて書いた作品が、小一時間で読まれてしまって、正直、ちょっとガッカリしました。遠慮したらしく、あまり率直な批評は得られなかったのですが、「形にはなっていた」「お話として完結していた」と言ってもらえたので、「完成した」という自分自身の評価は、間違っていなかったようです。

完成させたことで分かったこと

作法の理解度が上がった

完成させたことで、作法の本に書かれているアドバイスや技法、注意点の意味が分かるようになりました。
自分自身の作品があるので、「これらの技法を使うと、自作をどのように改作することになるか」という風に、考えることができます。真剣に。

アイデアの時点、設計の時点で思いつくことが増えた

アドバイスや技法、注意点を、自分の実際の執筆作業に役立てられるようになったと思います。
たぶん、作法の本をあれやこれやと何冊も読むより、実作した上で1冊読む(前に読んだ本を読み返す)方が、実際に使いこなせるようになるのでは無いかと思いました。

私がまだやっていないこと

技法のあれこれを試してみましたが、やっていないことがあります。
人に読んでもらうことです。家族だけにしか読ませていないのです。

今は、書いた小説を発表するWebサイトもありますし、多くの公募があります。読んでもらって、評価をもらう方がいいんだろうなあ…と思いながら、検討中。
応募や公開のためのフォーマットに合わせるのがちょっとめんどくさいと思ってしまっています…

なかなか、作家への道は遠いようです。

「完成させろ」というアドバイスは妥当か

間違いなく、妥当なアドバイスだと思います。作家になりたい人は、書いて、完成させるべき。
そうすることで、他の人の作品を分析する能力が上がり、自作を設計する能力・執筆する能力が上がります。
変に大作・名作を目指して手を止めるのではなく、さっさと書くのが良いように思います。

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