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始発の電車:乗っている人たち:車窓の景色:車中で思うこと

遠出をするときはなるべく現地での時間を有効に使いたい。だから始発電車に乗る機会もそこそこある。

自分の場合、始発電車はだいたい5時あたりになろうか。

始発電車に乗る前は「そんなにはやい時間に電車に乗っている人なんかそうそういないだろうな」と思っていた。が、実際に乗ってみてびっくり。思っている以上に人は乗っているものだった。これにはちょっと驚いた。
確かに満席状態になるようなことはないが、座席はそこそこ埋まっていたりする。

どんな人が乗ってきているのかしらと見るともなく見るのだが、まあ多種多様で十人十色だ。

これが通勤や通学の時間だと制服姿の学生やスーツ姿のサラリーマン風体が中心だし、平日の日中ならご高齢の方々。休日の場合は子連れのファミリー層が目立ったり。
と、まあ概ねその時間帯にいるであろうなと想像にかたくない人々が乗っているわけだが、始発電車の乗客って正直言って想像がつかなかった。
いや、普段の層とは違うんだろうなという程度の想像はあったが、ここまでバラエティ感があり、そして思っている以上に乗っていた。というわけだ。

まず目につくのは泥酔してぐったりしている朝帰りの若者。流石に疲れているのか。グターっとしている。場合によってはシートに寝転がっていたり、扉脇に座り込んでいたり。迷惑感もないわけでもないが、始発だからね、そういう人もいるよね、とも思うひとつの風景。

それとは対照的なスーツ姿の人もいる。若干の場違い感もあるのはまだ陽も昇らない車中だからか。彼ら彼女らは静かにスマホを覗いているか眠っているか。早朝出勤なのか、はたまた直行出張なのか。単に勤め先が遠いのかもしれない。お疲れ様である。

休日の始発に多いのはレジャーを楽しもうとしている人たち。
例えば輪行している人。自分もやったこともあるので同好の士として心の中でエールを送る。そしてどこを走ろうと考えているのか知りたくもある。

釣竿を背負ったアングラーも多い。ちなみに、ここで自分がよく使う始発電車の路線名を具体的に出してしまうが、東海道線の下りである。つまり海沿いの電車だ。だから釣竿関係は伊豆方向あたりに向かおうとしているのだろうか。

軽登山靴に日帰りサイズのザックを背負ったハイカーは平日休日問わずに乗っている気がしている。比較的年齢層も高めで少人数の集団であることが多いように思う。そしてだいたい小田原あたりで降りていく。箱根かあるいは丹沢方面に向かうのだろう。

まれにどういう層なのかわからない若者も見かける。冒頭に挙げたウェイェイな感じではないのが不思議だったが、もしかしたら乗り鉄なのかもしれないと今思った。

体操ジャージと大きいバッグを持った学生集団がいるときもある。これはあきらかに何かの大会会場に向かう一団だろう。心の中で応援する。

仕事モードの人も遊びモードの人もボーダレスに乗っている。
そんなさまざま雑多な人々を乗せて始発電車は走る。

時間的には日の出時間にあたる。薄暗い夜明け前の窓から見える景色は山や林。まだ灯りの消えた家々。山肌の木々からは白いモヤが立ち上っている。
そして太陽が昇り、車窓から光が差し込んでくる。

車内の人々はそんな日の出の景色を見るでもなくただ乗っている。駅に着くごとに数名ずつ入れ替わりながら。

自分もまた、誰が誰ともつかない結びつきもない乗客と、光差し込む車窓ををただぼーっと眺めている。

自分にとって始発電車に乗るのは旅時間の有効活用のためだった。しかし始発電車を使ううちに始発電車の様子や雰囲気といった、その場そのものが好きになっていた。かもしれない。

24年4月19日 初出

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