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【鑑賞日記】サエボーグ/津田道子 Tokyo Contemporary Art Award 2022-2024 受賞記念展を観に行った

サエボーグ「I WAS MADE FOR LOVING YOU」/津田道子「Life is Delaying 人生はちょっと遅れてくる」Tokyo Contemporary Art Award 2022-2024 受賞記念展@東京都現代美術館

サエボーグとは3度目の進逅でした。ラバースーツの一見可愛く、しかしよくみると実は悪意ある存在、魅力的で面白いです。露悪的でもあるのかも。
館内に展示されているラバーギミック、うんことハエですからね。そりゃ悪意というか邪気というかそういう世界観ですよね。

これまでの作品映像のビデオ上映も、一見可愛いダンスなのですが、踊っているのは解体途中のブタとしかみえないわけで。クロテスクとキュートを行ったり来たり。

これって観る人によってはキモワカイイみたいなシンプルな感想になるんでしょうか。

今回の中心となる作品は犬のスーツ、サエドッグ。所々に脱毛しているような表現のスーツ。やっぱり邪気があるなあ。
顔長系の犬種で全体のフォルムもスラっとしていて、特に後ろ足がスンっと伸び上がっているせいか、どこかエロティックな印象もありました。

サエドッグのパフォーマンスが一日中となっていて、ずっと舞台にいるのかと思ったら時間ごとに交代していました。そりゃそうか。

サエボーグは可愛さとグロテスクとの共存をボディスーツに託しているのではないでしょうか。もっとも自分としては小難しい意図はあまり考えずに、単純に面白いなあと観るべき作品なんだろうなと思っています。

津田道子作品は親子3人の食卓風景。なのに登場人物が少しずつ入れ替わっていくことで感じる違和感や3人の関係性の変化あるいは無変化を感じる作品でした。

鑑賞者としては作家の創作意図を読み解き深掘りする、というよりは「あれ、なんかヘン」みたいな、アハ体験的な気づきを楽しむというような作品なのかも、と思いました。

スチル写真での連作ではある程度変化が明解に認知できるので、そこにある家族の関係性や様相を読み解くみかたもできるのですが、映像作品になるとストーリーの提示があることで、登場人物の入れ替わりそのものは主題ではなくなる。
結果、単純に面白いトリック映像だなあという感想で、こちらもサエボーグと同じように、あまり小難しく考えずに堪能できる作品だったんだなあと思いました。

両作品とも、表層的にはわかりやすさがあって、しかしそのわかりやすさはあくまでも表面的なとっつきやすさで、本質は毒もあるという作品。サービス精神のある現代アートだと感じました。

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