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電波戦隊スイハンジャー#218 閑話休題、ウカと葛葉のブルース

閑話休題、ウカと葛葉のブルース

ここは伏見稲荷大社のあかい千本鳥居をくぐる途中の、三次元と四次元の狭間にある料亭、木の葉。

2013年の12月は16年に一度の休眠期に入り13.5センチの愛くるしいマスコット体にさせられた6体の天使。

ミカエル、ラファエル、ガブリエル、ウリエル、ジョフィエルwith堕天使ルシフェルの

「こてんし団体御一行様」
のお世話で女将ウカノミタマと仲居の葛葉はてんてこ舞いなのである。

朝は朝で
「ウカさまー、おなかすいたでしぃ」
「はいはい、今朝は大根がゆですよぉ」

昼は昼で
「葛葉ちゃーん、おかずが足りないでしぃ」
「今オムレツ焼くから待ってちょー」

そして夜は夜で…
ぴんぽーん♪
「スクナビコナ族の長スミノエときなこ親子、そして優秀な部下の右近と靫負が見舞いに来てやったべよー」
と天使たちとは犬猿の仲ほどではないにせよ顔突きつけ合わせると必ず口喧嘩が始まるめんどくさい客がやってきて開口一番、

「ふはははははは、日頃宇宙の均衡を司っているとドヤ顔していたアークエンジェル諸君。休眠期に入って力を奪われ、クレーンで吊り下げられるマスコットレベルになり下がった気分はどうかね?」

と〇スラー総統コスプレをした松五郎にチョー上から目線で言われたこてんしたちはハァ!?と寝転がって読んでいたコミック本を放り上げて起き上がり、きなこ以外の小人たちに距離ゼロ(おでこと頬はくっつきあっている)でメンチ切りし合った。

「いったいどーゆー了見でここに来たんでしかぁ!?」

別に、とコスプレ小人は肩をすくめて鼻で笑い、

「おらたちと同じサイズになったのをいいいことに…見舞いがてら冷やかしに来ただけだべ」

そうやそうや!と松五郎の右側で囃し立てる右近が

「かわいいだけの存在になっただけの気持ちはどや?」

「カワイイ…それは愛玩されるばかりの自立してない存在とみなされてるようで…悔しいでし!」
とこてんしジョフィエルを泣かせ、

松五郎を挟んで左側では靫負ゆげい

「だーいたいこの惑星をいつかるだの、退化した人間が増えたていつかは粛清してやる。
だの…
中世の専制君主みたいな言動を繰り返しているウリエルはん、力で威圧する奴に本当の友達なんかできるもんかいな。

一時的に力を失ってウカ様とルシフェルしか友達がいない寂しい立場をせいぜい噛み締めることやな!」

ふはっはっはっはっ!と高笑いする靫負の前で何も言い返せないウリエルは悔しさのあまり、

「ちくしょー、毎期毎期小さくなるとマウント取りに来やがって…これでも喰らえっ!」

とウリエルがヌガー入りのチ〇ルチョコを投げつけたのを皮切りに、

こてんしたちの手からはアル〇ァベットチョコ、サイ〇ロキャラメルなどなんだか可愛いお菓子。

小人たちの手からはピーナツ、燕の学校、チーズキャンディなど酒のつまみ系のスナックの投げ合いになり、料亭の畳の間は雪合戦ならぬおやつ合戦の戦場と化した。

ああもう、16年に一度起こるこてんしたちの休眠期のお世話係をラジエルに頼まれてから早や1200年。

報酬として貰うものはものはしっかり貰っているけどさ。

うちなんとなく疲れた…

足元に積み上げられたおやつの山を箒とちりとりで回収した女将ウカはそのまま自室に戻って帯と髪を解いて上下スウェットスーツに着替えると

「葛葉ちゃん、チューハイ1ダース持ってきてー」

と言ったきり体長3メートルの九尾の狐である本体に戻った葛葉の腹を枕代わりにしたと思うと全ての仕事を拒否して眠ってしまった。

すわ、豊穣の女神のオーバーワークによるストライキ!

この国の経済どーなる!?

「とっくにサブプライムローンの破綻で世界経済ドボンしてるのに今更焦ってもしゃーないがな」

とかっかっか、と笑った葛葉は酒臭い息をしながら女将ストライキの代行ヘルプ要因、

コトシロヌシとカヤナルミ父娘を呼び寄せ玄関で出迎えた。

「ウカ大叔母上はこれで16回めのストライキになるな…」
「って葛葉ちゃんもストライキ?酒くっさ!」

と世を忍ぶ仮の姿は高知県の網元、古都水産ことすいさんの社長(世代交代しているようカモフラージュしている)であるコトシロヌシはこてんしたち接待用に捕れたての海産物を積んだ箱を肩に担ぎながら厨房に入り、

「取り敢えずは刺身から出すかー」とウカに代わって料理の支度を始め、娘のカヤに「おい、ウカ様のメンタルの下がり気味観察してくれ」と頼んだ。

「大おば上〜…」
とカヤがおそるおそるウカの私室のふすまを開けるとそこには、

腕に二本線の入ったあずき色のジャージの上下に髪は引っ詰め。

過去のヒーロー戦隊ものの動画を観ながら好物のたこわさを齧り、「この番組の敵役イケメン〜」とのたまう豊穣の女神が居た。

その姿はまさに、

仕事に疲れ、週末休みは特撮
ものDVD鑑賞とアトラクションショー観劇が楽しみな

大きなお友だち

そのものであった。

「やっぱりシグマブルーこと椛葉蓮司もみじばれんじは過去最高のスーツアクターよね〜…あらカヤちゃん来てたの?一緒に紅葉過去作品について語り合わない?」

あかん、ウカ様が椛葉を語り始めたら三日間拘束される!

と逃げようとする見た目中2女子のカヤの腕をウカが捕えようとしたその時、

口喧嘩で靫負に負けたこてんしウリエルがふらふらと部屋に入り込み、「ぱぴ〜ん…『このぼっち野郎』って本当のこと言われてしまいましたぁ」とウカの胸に取りすがって泣き始めた。

マスコット化した夫の姿に母性と妻としての愛情が蘇ったウカは紅い髪のこてんしの目からこぼれ落ちたラムネ飴を口にすると、

「どんまい、ウリエル」とこてんしを抱きしめたまま眠ってしまった。

どうやらこてんしの涙には強い鎮静効果があるらしい。

眠ったウカに毛布をかけてあげてその目元に口づけして「どんまい、ウカさま」彼女に添い寝するウリエルの姿にカヤは

「はいはい、ごちそうさま」

と声をかけて襖を閉めた…

後記
ちなみにウリエルの涙はフエラムネである。



























































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