見出し画像

【西条市長選挙2024】市議の議員報酬増額は本当に多すぎだった?



これまでの過程を整理する

西条市長選挙でよく聞く批判の一つが「市長は審議会答申より2万円も多く市議会議員報酬を増額させた」というものだ。
西条市議会議員の議員報酬の推移と、それに関する検討の過程は、以下のようになっている。

2004年11月~2023年3月 | 議員報酬月額 36万6,000円

2019年 1月(議会活性化推進特別委員会 03月13日-01号)
市長の給与額を基準とする考え方のもと、月額48万748円という試算額が示される

2019年10月
議会活性化推進特別委員会において議員定数28人、議員報酬月額 48万748円との方針に至る

2022年 2月
西条市特別職報酬等審議会は市長に議員報酬を4月から月額2万6,000円引き上げることを答申(月額39万2,000円) 市長は新型コロナウイルス感染症による影響を考慮し、時期が適当でないと判断し月額を据え置く

2022年11月(市議会12月定例会)
議案第98号 議員報酬の引き上げに関する条例改正案が可決

2023年 4月~      | 議員報酬月額 41万2,000円4万6,000円増

このような過程で、合併以来19年据え置きだった市議報酬は12.5%増額されている。


議会活性化推進特別委員会

ここに出てくる議会活性化推進特別委員会は市議会議員からなる特別委員会である。委員会は従来より、全国町村議会議長会の計算方式を根拠として議員報酬月額48万748円(市長の給与額を基準とする考え方)が妥当な額であるとしており、大学教授ら専門家を参考人招致した上で方針に至っている。

西条市特別職報酬等審議会

一方西条市特別職報酬等審議会は市長による諮問機関で、市民からなる審議会である。審議会は2万6,000円増の議員報酬月額39万2,000円が妥当とする答申を出したが、根拠は、議員定数が30人→28人と2人減により、36万6,000円×2=73万2,000円が宙に浮くことから、これを残る28人の議員に分配すると一人当たり26,142円になるからである。
平成31年 議会活性化推進特別委員会 03月13日-01号


委員会 VS 審議会

確かに納税者である市民としては、今までの議員歳費総額枠内に収まる審議会案が最善であろう。ただ筆者としては、そのような単純計算で人員カットと給料アップをワンセットで考えるのは、やや機械的過ぎるのではという気もする。
一方の特別委員会の数字にも全国の地方議員報酬の算定に使っている計算方式を用いており一定の根拠がある。しかしそこには10万円近い差があり、市民感情との著しい乖離があることは確かだ。
つまるところ、これは両者の綱引きなのである。


議員報酬が低いことによる議会の不活性化の問題 …若い議員の担い手が生まれにくい

なぜ議員報酬を上げたがるのか。
単に現職議員が金にがめついだけではない。
昔、地方議員は農業など他に生活基盤となる収入があり、地域の名士がなる名誉職だった。
しかし現代では、若干の副業はあるものの時間の大半を市政のために使う議員専業の人が大半になってきている。

総務省「地方議会について」より引用

このような議員専業で、年金や貯蓄がある高齢議員や資産家の議員は低い議員報酬になんとか耐えられても、脱サラした青年子育てママから地方政治に飛び込んだ若手議員は、十分な収入基盤がなければ生活に困窮する。実際そのような事例は全国にあり、これではせっかく政治に関心のある若者がいても立候補を躊躇することにつながりかねない。

そのようなことを危惧して、若い議員の担い手が多く生まれ、平均年齢が高齢化している議会の若返りに繋げるためにも、議員報酬は適切な額までは増やすべきなのである。

話を両者の綱引きに戻す。
審議会答申の2万6,000円の増額か、市議による委員会の求める11万4,748円の増額か。
正直11万円もの増額なんてと筆者も思う。しかし、議員定数が2減になることで政務活動費が削減されるなど、議員報酬以外にも浮くお金がある。
それらを勘案し、議会の活性化につながる施策として、最終的に答申より2万円プラスの4万6,000円の増額でバランスを取ったのではなかろうか。

国市議会議長会「市議会議員報酬に関する 調査結果 (令和3年12月31日現在)」より引用

全国市議会議長会の市議会議員報酬に関する 調査結果 (令和3年12月31日現在)によれば、市議会議員報酬の平均額は人口5~10万人未満の市では39.8万円10~20万人未満の市では46.4万円とある。現在10万人を若干上回る西条市において41.2万円という数字は、10~20万人のグループ平均よりかなり少なく下のグループ平均により近い。決して過大な額ではないと感じる。

議案採決時の討論では、ある市議は増額に賛成はするが「あくまで月額48万748円が望ましく、(4万6,000円増額は)それと一線を画すもので少なからず残念な思いがある」と述べている。
令和4年12月定例会 11月29日-01号
残念て。そこは思ってても言わない方が…」と筆者は苦笑する。が、近隣市を見渡してみれば新居浜市議会議員は定員26人で48万2,000円今治市議会議員は定数28人で49万2,000円と増額後の西条市よりまだ高い(もちろん人口比や地域性もあるが)。市議が隣の芝生を羨む気持ちもわからなくもない。
それを考えれば、市民の皆さんも議員の皆さんも、この月額が現状の西条市における妥協点だと納得できないだろうか。

議員の皆さんには、増額された報酬分に見合ったさらなる働きを市民に示してもらいたい。見ている市民はちゃんと見ているので。


市長が身を切る提案をしていたこと

直接、議員報酬増額と関係あるかはわからないが、令和3年3月定例会で市長が特別職の給与減額という「身を切る姿勢」を見せていたことが、調べている中でわかった。市議の真鍋顕伸氏が自身のサイトで資料を公開している。特別職(市長・副市長・教育長・監査委員)給与月額の減額について(pdf)

結局この議案は否決されている。コロナ禍の最中であり、市民感情を考えた市長なりに態度を示したものであるが、特別職の給料をちょこっとカットしたくらいで財政は良くはならない、そのかわり給料分の仕事をしろという至極当たり前の理由による否決だ。


北欧風のボランティア議員はありなのか?

最後に、議員報酬についての議論はかなり昔から続けられていたが、今回市長選挙の候補予定者である元県議は7年前の市議選挙時代に愛媛新聞のアンケートでこのように答えていた。

地方議員はヨーロッパのようなボランティア議員を目指すのがよいと考える。
(市議会議員の報酬 現行月額36万6千円は)過剰である。
議員報酬が生計が成り立つ額であると、議員の交代が起こりにくくなり、多様な意見が市政に届きにくくなり、市民派から議員が出にくくなる。

2017年 西条市議会議員選挙候補者アンケート 愛媛新聞より引用

確かにスウェーデン、ノルウェー等北欧の国では、無報酬のボランティア議員が、一期が終われば別の人と流動的に入れ替わって議会運営している例もある。それを理想的な民主主義という人もいる。
しかし筆者は、いま日本でそのような高潔な精神を政治に持ち込めるかというと、極めて困難だと思う。

タダより高いものはない。