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シンデレラガールには会えずシンデレラボーイにもなれない


法定速度があるならそれを超えるような車作るなんておかしい。


スピード違反で捕まった時の僕の言い分である。人を責めるのではなく、システムを責めろよ。人の欲望を叶えてしまう車のシステムがよくないんじゃないか。
スピードを出せてしまうのがおかしいんだ。
その日はパチンコに勝ち、車内の音楽のボリュームをあげ気分良く帰っていた。
帰宅したらゲームをし、Amazonでポチッとどうせ必要無くなるものを買い、自慰行為、と予定を掻き立てていた。
そんな中、かすかに社内の音楽とは別の音が流れた。サイドミラーを見ると、バイクと赤色回転灯が目立つように光っていた。

音楽の音をさげ、自分では無いようにと願うが意味はなかった。路肩に車を止めての警告が僕の耳に聞こえ逃亡するメリットも無く、仕方なく車を止め、バイクから降りてきた中年のおじさんに「スピード違反ね」あまりにも単刀直入すぎて僕ははぁと息と、まんまの「はぁ」の単語を漏らした。

「5キロ速度オーバーね。免許証出して」
流れ作業のように僕の罰は与えられた。
『9000円』罰金のようだ、パチンコで買った額が吸い取られる。運のなさに辟易した。

「法定速度があるならそれを超えるような車作るなよ」
警察官には言えず誰にも届くはずのない自分の心でプラカードを掲げて、デモを行った。
法には勝てない、プラカードを掲げて戦った僕の答えだ。10秒も経たないうちに答えが出た。
法を破ることがブラックで法スレスレをグレーというなら弱がりな僕は法をたっぷり守りに守ったホワイトで戦うしかない。

そこで僕は法定速度を遥かに下回る30キロで走り続けることを決めた。
え、それ、逆にダメなんじゃない?
残念ながらスピードが遅すぎることに関しては違反切符を切ることは出来ない。
そう法では取り締まることが出来ない
ホワイトで戦える事を見つけた。

あ、でも早く家に帰りたい。法定速度に戻した。

今日も自慰行為して寝る。




食べた物を素人が審査員のように評価する恐ろしい世界。


ネット上で飲食店を見ず知らずの資格のない者達に評価される昨今の雰囲気がすごく苦手である。
資格もくそもないのに勝手に賞賛したり悪態つけたりと好き勝手言える環境である。このシステムの利点としては本当に美味しいものを発見することが出来たり、見た目だけの店に引っ掛からずに済むと言うことだ。
ただ怖いのは、サイトに資格のないものが評価をする事で、プロパガンダとまでは言わないが、大衆を使って店を潰す事も可能であると言う事は忘れてはいけない。

僕は普段降りない駅に着くと、「〇〇駅 ラーメン」と調べる。
たくさんの評価されたラーメン店が出ててきては
星3後半だったりほぼ4の評価を得ているものが上に来る。
ただ、僕は天邪鬼な部分があるため、評価に逆らいたくなることがたまにある。
星2.5。その地域で最低評価に近いお店であった。

店の佇まいはすごく古く綺麗とはお世辞にも言えない。
ただこういうお店が美味いことが経験上よくある。
コメントには「麺が硬い」「店主が無愛想」「まずい」「コップが汚い」「スープは絶品」
人の匙加減で変わるような評価ばかり。さすが資格もない素人審査員。

のれんをくぐると、小声でいっらしゃい。
無愛想ではあるが評価を下げるほどではない。
水はセルフサービス。コップは、、少し汚い。
おすすめはラーメンと油で汚れた黄色の画用紙に書いてあった。
おすすめを頼むのが礼儀だと思い、迷わず頼んだ。

店内は少し埃だらけで、床は粘着感があった。
漫画はカイジとドカベンプロ野球編のみ。
観察しているとラーメンが運ばれてきた。これも無愛想。

見た目は昔懐かしいラーメン。ありきたりであるし、昔懐かしいと言う表現自体20年と少ししか生きていない僕が使って良い言葉かは分からないが、その表現が1番伝わるだろう。

レンゲでスープを掬い口に入れ舌で味を確認した。
絶品、こんな美味しいスープ飲んだことない。野菜と鶏ガラをうまくブレンドしている。絶品だ絶品すぎる。
流れるように麺へ手を伸ばす。硬い硬すぎる。全然ほぐれない。食べてもゴムのような食感が続く。なんだこれは不味いまずすぎる。
たまに麺と絡んで入ってくるスープに助けられた。

ありえないほど資格のない審査員の通りであった。
資格のない審査員の腕、いや舌はやはりさすがだ。
申し訳ない、全国の資格のない審査員のみんな。

僕は最後絶品のスープを啜り、支払いを済ませのれんをくぐった。
速攻スマホを取り出し、
「まず店内が汚すぎる、店長は愛想がなくコップは汚い麺も硬くてゴムのようだった。ただ、ただスープは絶品であり、このスープだけでもお金を払う価値があるかもしれない。僕はこのスープに救われた」
星4つと共に投稿した。

これで晴れて僕も資格のない審査員に仲間入りだ。



シンデレラガールには会えずシンデレラボーイにもなれない。

かぼちゃの馬車に乗ったシンデレラは来ないし、まず大きなパーティなんて開けないし、開きたくもない。この時点でシンデレラとは会えない。それと靴を落としたとしても街中探すのはちょっと面倒でTwitterで拡散希望とかで出してしまいそう。あ、でも自分のアカウントでやるのはなんか小恥ずかしいから別アカなんて作ってツイートするだろう。きっと周りと比べたらシンデレラガールと結ばれにくい性格である。

じゃシンデレラボーイになれるのだろうか、いやなれない。タバコを吸えないんだ。

なのでSaucy Dogの「シンデレラボーイ」の歌詞にある定義からはズレ残念ながらなる事が出来ない。


シンデレラボーイ 0時を回って
腕の中であたしを泣かせないで
気づかないふりをしてそのまま
つけるタバコが大嫌い

歌詞

じゃあ、シンデレラガールにも会えずシンデレラボーイにもなれない僕はどうするのか。どうすればいいのか。
いやまず、シンデレラに会いたい、白馬の王子に会いたいこのマインドこそダサくないか。ダサいんだよ。ダサいダサい。

そういえば、ベタな恋愛ドラマにすごく嫌悪感がある。
その嫌悪感の理由を探っていたら案外簡単だった。
あの世界の人達は、ほぼ1人を愛しハッピーエンドで終わる。そんなわけがない!そんなわけがないのだ、綺麗事である。今僕が生きてる世界はもっとドロドロしているし、ハッピーエンドばかりではない、かといってまだ終わっているわけでもない。


法のシステムに監視されながら、資格のない食評論家になり、シンデレラよりもリアルに生々しく生きていく。





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