好きな人と縁がなさすぎる話

昨晩は本業後にタイミーで食品工場へ。
5時間下を向きっぱなしで首を痛める覚悟で行ったものの、まさかの違う部署に回された。
解凍後の肉をひたすら割る作業で、途中で他の作業もするので姿勢は楽だったが、結構な力仕事だった。
「わたしをここに置くの絶対おかしくない?!」とずっと思っていたら、
「ここに女性が来たのは初めてです」と言われた。

だから男性社員がやたら顔を見てきたのか。
あの反応はやっぱりそうだったか。
タイミーを始めてから、いつも女性がいない現場に女性が来た時の男性の反応がわかるようになってきた。きっとあまりにも場違いなんだろう、
まるで会議室に子供か動物でも入ってきたかのように凝視されるのだ。
すれ違う人まで首をこちらに向けてまでこっちを見てきたりする。
「あれわたしそんなに美人だったかな」と一瞬思うが、あまりにも異質なだけだろう。
あの視線は普通の職場にはないと思う。


そして今日は好きな人の職場へ。
閑散期だしきっと土日片方休みのはずなので、
たぶん外すだろうと思っておそるおそる靴箱を覗いたら出勤していた。
ぃよっしゃぁぁぁぁぁ!!!!!1週間ぶり!
いつものように彼のポジションをボードで確認する。
あとはわたしも1階に行くだけだ。
手前に座るとたまに別の階に指名されてしまうので、なるべく奥の方に座って待った。

早く行きたい。早く顔を見たい。声を聞きたい。
今週はいろいろあったけど、やっぱりわたしが好きなのは彼なのだ。
予想通り手前に座る人たちが別の階に指名される中、ギリギリで1階に行けることになった。
安心して移動していると、突然社員の女の子がわたし目がけて話しかけてきて、
なんと別の階の作業を頼まれてしまった。
最悪だ。こんなの初めてだ。
わたし今日一体何しに来たの?もう立ち直れない。


別の階には休憩の交代時に短時間しか入ったことがなく、要領がわからない。
なんか人はキツい感じだった記憶はある。
落胆とイライラの真っ最中にわけのわからない作業を指示され、最悪の気分で働いた。
仕事が終わったらレビューにクソミソに書いてやろうと思ったくらいだ。

わたしを別の階に置いた社員の女の子を本気で恨みそうになりながら、彼女と二人で仕事をした。
指示を出してくれるのが彼だったら、二人で作業するのが彼だったら、わたしはどんなに幸せだっただろう。
今日は本当に最悪としか言いようがない。
もうこんなの事故じゃないか。

すると突然パートの女性が近くにやってきて、
「本当はあんた1人で急いでやればいいんだからね?
タイミーさんいらないんだから!
何ちょろちょろその辺歩いてんの?」

と社員の女の子に言った。
わたしとたいして年の変わらないここでは若い方のパートさんなのに、
めちゃくちゃキレてておばちゃんたちよりずっと怖かった。
タイミーで何回もこの会社に来ているし、このパートさんも見たことはあるけれど、あんな言い方をする人を見たのは初めてで驚いてしまった。

社員の女の子は20代前半だろうか。
でもお世辞にも可愛いとは言えないし、要領もよさそうではないし、人当たりもあまり良くない子だ。
だからあんな言われ方をするのかもしれない。
それでもなんだか可哀想になってしまい、
「わたしも若い時は立っているだけでも目ざわりだと言われたし、
すれ違い様に“最低“と言われたこともあるけれど、
今はわりと楽しく働いてるから辛いのがずっと続くと思わないで」
と言いたかったけれど、
彼女が高齢のタイミーの女性にキツい言い方をしているのを見たことがあるのでやめておいた。

その後は小休憩の時に好きな人が休憩室に行くところを見れたらと期待していたが、彼はそのまま1階で休んでいるようで上がってくることはなかった。

退勤する時、彼の靴箱を見たら上履きになっていた。
なんと彼は先に帰っていたのだ。
え?こんなに早く?まさか体調不良とかじゃないよね?!
しかし思い返せばわたしが退勤する十数分前に、なんか男の人達がぽつぽつと歩いていたような気がする。
きっとその中に彼もいたのだ。
わたしは絶望の最中でひたすら作業をするしかなく、
どうせもう彼は通らないからと振り向くこともしなかった。
彼は早く帰りたい人だから、
退勤時にこちらを見ることはないだろうし、
見ても後ろ姿でわたしだと気づくこともないだろう。
本当に、今日は彼に一目も会えずに終わってしまった。
次に行けるのは来週末だけど、なんだかもう行くのが憂鬱になりそうだ。
こんなに落ち込むんならもう申し込みたくない。

彼の名前を知ってから、彼がいるのに会えなかったのは初めてだ。
わたしは去年の夏からずっと、
彼が出勤してるかどうかに怯え、
彼と同じ階に行けるか怯え、
同じ階に行けても遠いポジションに送られないかいつも怯えている。
会いたいと思えば思うほど、会えない気がする。
でも彼が悪いわけではないし、
社員の女の子も悪意があるわけではないし、
勝手に期待して勝手に落ち込んでいるわたしが馬鹿なのだ。
帰り道、駅を見てこの辺一帯が心底嫌いになりそうになった。
お酒でも飲みに行きたかったが、明日も仕事だし金欠なのでやめた。
情けないことになんだか泣けてきてしまい、
神社に寄って、

「お願いだからもう二度とこんな思いをしなくて済みますように」


とお参りしてきた。



月曜日になったら、この前わたしを褒めてくれた若い男の子の職場に行く。
今、彼みたいな存在がいて本当によかったと思った。
彼はこの前会ったばかりのわたしに「次はいつ入ってますか?」と聞いてきた。
月曜日だと答えると、
帰り際にも再度「次月曜日に来るんですもんね!」と確認してきた。
わたしはここの力仕事でお役に立てているのかとても不安だったけれど、
「あー、これは月曜日絶対に行かなきゃいけないやつだわ」と思った。

彼がどんな人かはわからない。
わたしに好意はあるようだけど身体目当てかもしれないし、
たぶんあの現場に女の子が来たらみんなに同じ事を言うんだろうなとは想像がつく。
それでもわたしは彼を裏切るような事はしたくない。

彼はわたしに「一緒に住んでる人がいるんですか?」と聞いてきた時、少し悲しそうな顔をしていた。
帰り際わたしが駅まで歩いて帰ると言うと心配そうな顔をしていて、
タイミーのレビューの返信にまで「お気をつけてお帰りください!」と書いてあった。
(きっと仕事が忙しくなかったら車で送ってくれたんだろうなと思う)
わたしにはそういう気持ちが痛いほどわかる。
もし次に会って本当に連絡先を聞かれたら、
わたしが突然行けなくなった時にはちゃんと連絡してあげよう。
わたしのような思いを人様には絶対にさせたくない。
ましてや9歳も年下の男の子に。
こんな辛い思いをする人はわたしだけでいい。
いや、わたしだってこんなに辛い思いは二度としたくない。


恋をするなら幸せな恋がしたい。

辛い恋なんてこの世からとっとと消えてしまえばいいのだ。