タイミーを迎える側の気持ち

今日は本業で業務というよりパソコンの操作がみんなよくわからなくて、
(うちは事務なのにみんな機械に強くない)
社員の女の子がご機嫌ななめになってしまって、
ちょっと怖かった。
在宅勤務だからチャットでしかやり取りしないのに、
こういうのはなんで伝わってしまうんだろう。

これが運送会社のチャラい男の子なら、
いつも笑って教えてくれるのにな、めんどくさいなと思ってしまった。
わたしはやっぱり甘やかされている。

運送会社に着いたら、
いつものおじさんに「この前傘忘れてっただろー」と言われて、
「そうなんですよ!すいませーん!」と謝る。
今日のタイミーはいつもの女の子ではなく、
知らない男の子だった。つまんない。
チャラい男の子は新しい人が来たら仕事を教えるのがめんどくさいと言っていたけれど、
結局教えていたのはわたしと他のおじさんだった。
あの子はきっと女の子が来ないと教えないのだ。

なぜわたしが初めて来たタイミーに、

段ボールの並べ方やらラップ巻きのやり方を教えなければならないんだろう。


わたしもよくわかってないんだけどな。
ここ知らない会社なんだけどな。
わたしはめんどくさがりだから、
自分の会社でも新人さんに仕事教えたことほぼないんだけどな。

きっと最初にわたしを見て、
「なんでこんなところに女が1人だけいるんだろう?一体何者なんだ?」
って思われているところに、
他のおじさんに、
「この人常連さんだから何でも聞いて」
って変な紹介をされて、
結局わたしに付いてくるからわたしが教えるという、いや〜な流れができてしまいそうだ。めんどくさい。
もしここで雇われても、
力仕事もできないフォークリフトにも乗れないわたしには、
きっとそんな役回りしかないんだろうなと思う。


しかし自分がそんな役回りになると、

タイミーを迎える側の気持ちが少しだけわかるような気がした。


わたしの本業は事務だから、
パソコンのパスワードやら機械が足りないやらで、
おそらくタイミーが来ることはない。
だからいつもタイミーを迎える側ってどんな感じなんだろうと興味はあった。
わたしの好きな人は一体毎日どんな気持ちでタイミーを迎えているんだろう、
「この人また来た!」とか思うのかな?
などと想像しても、
正直あんまりよくわからないのだ。

自分がもう二度と会わないかもしれない異性に仕事を教える立場になってみて思ったのは、


「今日マジでめんどくせえ」



本当にこれだけだった。
本業とか年齢とか家族構成なんて聞く元気はない。
そもそももう会わないかもしれない人と、
世間話をしたいとは思わない。

そんな労力はわたしにはない。
最低限仕事のやり方だけ教えて、
なんとなく出来てるかだけ見て終わりだ。
それ以上話すことはない。

ここのドライバーさん達が、
初めからいろいろ聞いてきたのはすげえなと思った。

いくら相手が異性でも、
最初はわたしのような見るからに力のなさそうな女がここに何度も来るとは思えなかっただろう。
そんな女にいろいろ聞いてくる元気があるのがすごい。すごすぎる。
しかもわたしと違って朝からフルタイムで働いてるのに!!!

今日もここのドライバーさん達は、
初めて来た男の子に「ありがとう」とお礼を言ったり、
「またお願いします」と言って別れていた。
(チャラい男の子はなぜかわたしを見て笑っていた)

人間出来すぎやんけと思った。
わたしは一見さんにそんなに親切にはできない。


でもここで働かせて頂いているからには、
わたしもそういうふうにならないといけないのだろう。
わたしの感じが悪いせいでここに誰も来なくなってしまってはマズいのだから。

わたしの好きな人は、
タイミーに「ありがとう」とか「またお願いします」なんて絶対に言わない。

あの子は「またお願いします」って日本語すら知らないのではないかと思ってしまうような人だ。
仕事だけしてタイミーは配置して終わりって感じ。
わたしが初めてあの工場に行った日、
彼はわたしに仕事を教える前に、
一瞬ため息をつくような嫌な顔をした。
その気持ちが少しだけわかったような気がする。

この関係で女というか人間扱いしてもらうようになるのはおそらく至難の業だ。


わたしは彼に何度か差し入れを渡したけれど、
もし自分が貰う方だったら、
どのタイミーにもらったかすらもあんまり覚えていないかもしれないと思った。
あの工場10人とか来るし。いつも女ばっかりだし。
たぶん無理だ。

そしてわたしがもしタイミーを迎える側になったら、
きっとぶっきらぼうなおばちゃんになる。

余計な世話なんて焼かない。そんな労力はない。
だからいつも優しくしてくれる人って当たり前じゃないんだなと思った。あれは貴重な人だ。
わたしよりもずっとずっと人間ができている人だ。

そんなことを考えながら帰っていたら、
駅でまた若いカップルを見かけた。
なんかあまり幸せそうじゃない。 
お互い気まずそうな沈黙。
女の子、もしかして涙目?
あれは別れ話だろうか。

わたしがもし好きな人に、
「付き合ってください」と無理矢理告白したら、
あんな空気になってしまうのだろうかと一瞬思ったけれど、
きっと彼は「ごめん」とだけ言って、
すぐにその場を立ち去るに違いないと思った。
忙しい彼はきっとわたしにあんなに時間はくれない。
無言でも気まずくても、
駅で黙って立っている時間をくれるだけ、
まだあの子は彼に愛されているような気がした。