好きな人が健常者じゃないかもしれない話

わたしは記憶力が良いとたまに言われる。

もう人生の半分以上、ライブを楽しみに生きてきたので日付はすぐ覚える。
ライブ遠征のために生きているので、何年にどのあたりに行っていたのかも大体覚えている。
仕事だってタイミーで週に1度どころか数ヶ月に1度しか行かない職場もあるから、記憶力が悪かったら結構キツいと思う。 
人の名前は間違わないように気をつけているつもりだ。
(まぁタイミーだから名前で呼ぶこともないのだけど)

そんなわたしだから気になるのかもしれない。


わたしの好きな人は、記憶障害のような気がしてならないのだ。


仕事はできる人だ。
彼はタイミーをあちこちに配置する仕事だから、
人の顔は覚えているし、
どのタイミーに何の仕事を任せたかも覚えているし、
なんとなくその人が好んでいるポジションも覚えているからいつも同じポジションに配置してくれる。
だから彼とは本当に働きやすい。

でもたまに彼と話した時、すとーんと記憶が抜けているような気がするのだ。

前日に職場で起きたことを聞いた時に「俺昨日いなかったから」と言われて困惑した話は書いた。(バンギャが恋をした話参照)

あの時もなんとなくまずいことを聞いてしまった気がしたので、彼に過去の話はしないでおこうと決めた。


そして先日また彼の職場に行った時、彼は今度は自分が飲んでいた飲み物がわからなくなって困っていた。
いろんな人のペットボトルがいろんなところに置いてある職場なので、わからなくなっても仕方ないとは思う。
彼の働く工場は暑く、毎日遅くまで残業しているから、1日にペットボトルを何本も買っていたらわからなくなるのかもしれない。
でもわたしが気になったのは、全く異なるメーカーのパッケージも全然違うミネラルウォーターなのに、彼は自分のペットボトルがどっちだかわからなくなっていた事だ。
20代の健康そうな男の子が、おそらくその日の朝か昼に自分で買った飲み物がわからなくなるだろうか?
工場で毎日同じ作業をしていたら、それでもどっちのが自分のかわからなくなるものなんだろうか。
わたしは工場勤めはした事がないからわからない。
でもなんだか違和感があるような気がしてならないのだ。

若くても過労やストレスで記憶が抜けることがあるらしい。
彼は1度過労で倒れているし、毎月のように繁忙期があって、最近もたぶん半日以上働いているのだと思う。
もしかしたらそのせいなのか?
だとしたらたぶん本人に自覚はないだろう。
なんとなく触れてはいけない気がするけど、違和感がずっと消えない。

彼が勤める工場は、普通と違う感じの人がちらほらいる。そういう業種なのだ。
彼らはたいていパートの人が被る帽子を被っていて(社員とパートで帽子が色分けされている工場あるある)、大体定時で帰っていく。
彼は正社員だし、話しぶりからもなんとなく普通の人だと思っていたけれど、最初はパートで入ったと言っていた。
普通の20代の男の子が正社員ではなく、パート勤めから始めるものだろうか?
もしかしたら彼らと出どころは同じなのでは?という疑いがどうしても消えないのだ。

別に彼と付き合えるわけでもないし、仕事に支障はないから気にしなければいいのだろう。
彼がわたしに一切興味を持たないから、もういいかげん諦めようと自分で無理矢理に理由をこじつけているだけなのかもしれない。
でも彼はきっと、わたしが過去に頑張って話しかけたことや話した内容も何も覚えていないんだろうなと思うと、どうしても悲しくなってしまう。
わたしは何度か彼の体調を心配する素振りを見せたし、自分の仕事の話もちらっとしてみたけれど、きっと彼の記憶には残っていないに違いない。
この先もしもわたしが勇気を出して彼に好きだと言うことがあっても、彼の記憶には残らないのかもしれない。
そんな虚しいことがあるだろうか。

そんな事を考えながら週末もタイミーで働いている。(※遠征前のため)
最後に最近なんだか無性に聴きたくなった曲を紹介したい。
川村結花「バナナ」
僕が君を大好きな理由は 条件なんかとは無関係
どうしてバナナが好きかなんて 分からないのとかなり近いトコ

…きっとわたしは懲りてない。
つくづく呆れる。