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ChatGPT小説 プロローグ エドワード・マイケル・ジェンキンス 1

エドワード・マイケル・ジェンキンス 1

「こんなことがあるはずがない!」

ジェンキンスはひとりごちした。今自分の目の前で起きていることを受け入れることができなかった。次々に現れては消える、その「自分はシドのユーザーではないし、今はARグラスも掛けてはいない。

見えるはずはないのだ。

だが、それはジェンキンスの目の前にいる、見えるだけではない、たしかに存在しているのがわかる、肉体を持つ、質量を持つ実存的ななにかをたしかに感じているのだ。

だからこそ、受け入れることができないのだ。理性が歯向かっている。

来年九十歳を迎えるジェンキンスにとって、この六十年の変化はあまりに大きすぎた。大きすぎて実感できなかったと言ってもいいかもしれない。
だけれども今は違う、いま始めて世界が確かにかわったのだ、自分がこれまで信じていた、存在していた世界のありようがすっかりかわってしまったことがハッキリわかる。実感できる。それが身にしみてわかった。


「あなたには見えているはずだ」それが囁いた。


1969年、ジェンキンスが生まれたその年、テクノロジーの種がまだ芽吹いていない時代に足を踏み入れた。しかし、やがて彼は、時代の激動に巻き込まれる教師となる運命であった。24歳の時、1993年に彼が教職に就いた頃、電子の波がまだ広がり始めたばかりであった。

ミネソタ州の片隅に存在する古びた高校は、ネオン光が煌めく未来都市とは程遠い、静かな場所に佇んでいた。校舎の壁には、デジタル技術の影響がまだ及んでいないかのような趣が漂っていた。その中で、ジェンキンスは非常勤の歴史教師として教壇に立ち、若者たちに知識の扉を開く手練れとなった。


最初のうちは、教師としての日々は刺激に満ち、彼は情熱を燃やしていた。しかし、2005年頃から、学生たちの知識レベルが目に見えて低下していくのを彼は感じ始めた。高校生でありながら、分数すら理解できないといった状況が目立ち、明らかに知識や教養が欠けている様子が顕著になっていった。

この状況は、まさに知的貧困と言えるだろう。そして、時が経つにつれて、2020年にはその教育レベルはさらに悪化した。彼の目の前で、生徒たちのうち半数近くが、100点満点の試験でわずか0~5点しか取れなくなっていたのである。

教育者たちは困惑し、誰もが正しい教育方法が何であるかを見失っていた。

変革の瞬間が訪れたのは、ジェネレーティブAIが舞台に登場したときであった。この画期的な技術は、生徒それぞれのレベルに合わせて個別に教育を施し、学力の向上を目の当たりにすることができた。それはまるで、学生たち一人ひとりの知識の花が咲き誇るかのようであった。

この進歩により、人間の教師の役割が消え去るかのように感じられた。

それにもかかわらず、教育レベルは確実に上昇し、社会全体がAI技術の恩恵を受け入れていく中で、未来への道が切り拓かれていった。多くの人々は、その革新的な力に感謝し、驚嘆の声をあげた。

だが、ジェンキンスはどうしてもこの現象に馴染めず、心の奥に渦巻く違和感を払拭できなかった。彼の瞳に映る、AIによって教育を受けた生徒たちは、何か物足りない、何か人間として本来持つべき魂が欠けているかのように見えるという感覚が、彼の心を蝕んでいた。

ジェンキンスの考えに呼応するかのように、2030年代のアメリカ合衆国は緊張と不安に包まれる暗雲が立ち込めていた。ネオ・フェデラリストの陰謀と称される一連の爆弾テロや事件が続発し、国民の心に恐怖を植え付けていた。経済的格差の拡大と政治的対立の激化が、社会を揺るがす波紋を広げていった。

ネオ・フェデラリストの陰謀論は、複数の政治家や経済団体が関与する極秘作戦であり、巧妙にAIのプログラムやその他の手段を駆使して実行されていた。彼らの目的は、国民の分断を狙い、混乱によって支配を強化することであった。

2037年の初頭、陰謀が暴露されると、アメリカはかつてない混沌に巻き込まれた。北部諸州では民主党支持者が大勢を占め、「青いアメリカ」として団結した。一方、南部と西部の一部は共和党支持者が中心となり、「赤いアメリカ」と呼ばれる勢力が形成された。そして、中央部では中立を保ちたい地域が集まり、「グレー・アメリカ」と称されるようになった。

当時の大統領、民主党のルーシー・アダムソンは、国家の統一を維持しようと奮闘していたものの、徐々にその力は弱まっていった。そして、アメリカの分裂は次のような独立宣言とともに決定的となった。

2038年1月17日: 青いアメリカ(北部諸州)が独立宣言を行い、「北部連邦」として新たな国家を樹立。民主党の指導者たちが主導したこの動きは、国家の進歩と公平を追求するという理念のもとに行われた。

2038年3月25日: 赤いアメリカ(南部と西部の一部)が、「南部連邦」として独立を宣言。共和党の勢力が牽引し、経済的自立と保守的価値観の維持を目指して団結した。

2038年6月12日: グレー・アメリカ(中央部)が、「中央共和国」として独立を宣言。彼らは、両極の対立から離れ、国内の安定を追求しようとしていた。

こうして、かつて一つであったアメリカ合衆国は3つの国家へと分裂し、それぞれが厳しい試練に立ち向かわざるを得なくなった。この分裂は、2048年まで続く激しい内戦へと繋がる。

彼は、AIの教育が持つ冷たさや機械的な側面を憂いていた。生徒たちが、情緒や人間性を育む機会を失ってしまうのではないかと心配していたのだ。ジェンキンスは、人間の教師がもたらす温かみや共感力、そして教育の場での人間関係を大切にしていた。

そんな彼は、自分の教え子たちに対して、AIが提供する教育だけでは得られない人間の魅力や感性を伝えることを決意した。彼は生徒たちに、人間同士のコミュニケーションや協調性の大切さを教え、心の豊かさを育むことに尽力していこうと決めたのだ。
その場は公教育の世界には存在していなかった。

そしてその学校の一つが日本にあった。


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