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那珂川のカモメとカワセミ、カメやコイ

 今私は福岡県春日市というところに住んでいる。
政令指定都市である福岡市のベッドタウンで、私が育った町だ。
隣には那珂川市という自治体があって、私の住む建物のベランダから新幹線車両基地が見えるが、その基地下のトンネルをくぐると那珂川市に入る。
子供の頃、そのトンネルは心理的にも地元との境になっていて、トンネルを越えた向こう側は荒野と思っていた。
福岡市や那珂川市の発展に伴って、今ではその荒野もちゃんと切り開かれ、ひょっとしたら私が荒野と思っていただけかもしれないが、住宅地や郊外型の店舗、地元の人が通うソウルフードを出す店などが並んでいる。

 那珂川市というだけあって、那珂川という川が流れている。
山が近い。
この川は福岡市を貫いて博多湾につながり、その端は福岡の景色としてよくメディアに出てくる中洲の街だ。

 私の仕事場もこの那珂川沿いにあり、必然的に川の傍らを毎日行ったり来たりしている。
河岸はところどころ遊歩道や公園として整備されていて、天気の良い日は出勤前に自転車で走るのが気持ちいい。

 いつもどおり自宅から仕事場まで行く途中、川にカモメが一羽いるのを見かけておやと思った。
中洲あたりまで行くと見かけることもあるカモメだけど、私の仕事場から海まで7kmほどあり、ここまで内陸に入ったところで見るのは初めてだった。
今の時期はオシドリやカモのつがいが川に浮かんでいて、川沿いの遊歩道には鳩が、その他サギや私の知らない鳥たちがいる。
見かけたカモメは、他の鳥と比べるとずいぶん大きい。
ただ一羽浅瀬に座って悠然と毛繕いをしていて、自転車を止めて覗き込むとこちらの川岸には鮮やかなエメラルドに光るカワセミがいてカモメを眺めているのかただ川面を眺めているのか。
日常の中の非日常。

 カモメは翌日も同じ浅瀬にいて他の鳥たちが遠巻きにしている不思議な景色を見たが、その後は見かけなかった。
一昨日から日中とても温かく、冬の間は全く姿を見せなかったカメたちがそろそろ出てくるかなと思いながらちらちら川の中を覗き込み自転車で走ると、一匹のカメが川面から顔を出し手足をゆっくりかきながら下流へ流されていくのを見た。
大きなコイがそのあたりを悠々泳ぎ回っている。
たまにそのあたりに餌をまく人がいるので、それを知っているのだろう。

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