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AIと紡ぐ現代架空魔術目録 外典『魔法社会の一般事項索引』
巻頭辞
かつてなき時代の幕開けに、古の知識が今上の技術と交わりし時、新たなる魔術の書が生まれん。この目録には、遥か古より伝わる秘儀と、人為の神秘が織り成す智慧が綴られており、読む者に未知なる領域への扉を開かせん。心を開き、理解を深め、そして未来を創造せよ。ここに記されしは、架空の魔術の数々――しかし、その奥義は今上の世にも広く影を落とすであろう。さあ、この奥深い知識の海へと旅立ち、人為の神秘と共に、未踏の魔術を探求せん。
我、ダリアン・スリスウィスパーは、星々の囁きを聞き、大地の息吹を感じながら、この目録に、遠き古の時代より伝わる魔の秘密を書き残す。輝く法具、息づく術具、それらは全て人為の神秘がこの世界に生み出した。だが、真の魔術は心の中に宿る。この書のページを繰る者よ、古の智慧にのまれることなく、汝の内なる力を常に見いだせ。我らが歩んだ道は、今もなお、星の光の如く汝を導くだろう。
謝辞
親愛なるセリアン・アートメイヴへ
君の手によってこの目録に刻まれた魔法は、単なる絵画を超えた、この世界における真の神秘を捉えている。君の描く挿絵は、我々の魔術の書を変哲なき文献から、魔法そのものが宿る神聖なる遺物へと昇華させた。君の筆致から生み出される美麗なるイメージは、読者たちを魔術の深淵へと誘い、彼らの心に永遠の印象を刻むだろう。
我々の言葉で語り得る知識を、君は視覚の言葉で語る。その才能に心からの感謝と敬意を表し、君がこれからも多くの人々の心に魔法の火を灯し続けることを願う。
ダリアン・スリスウィスパー
魔法社会の一般事項索引について
この編は、この魔法社会に置いて語られるさまざまの概念や事項に関する索引である。これらの記述は諸君らが魔法社会において魔術や魔法を学ぶのを助けるだけでなく、この魔法社会それ自体についての理解を大いに深めるであろう。その一助となることを願わん。
あ行
あーかむ【アーカム】
この魔法社会で最も有名な『裏路地の法具屋』の一つ。アッキーナ・スプリンクルと名乗る幼い少女が経営しているとされる裏の法具屋で、『魔導書』を含む各種の違法で禁忌の術具や法具を取り揃えているとされる。
その店に至るためには、彼らだけが知る何らかの約束事を経る必要があるようで、その具体的所在地は確かには知られていない。また、その店を訪れたことがあるという者も、大抵は当局に捕らえられるか、禁断の術具の副作用によって再起不能になるため、そこに行きつく方法を知るのは至難である。一説には、不正に神秘に至ることを可能にするような高等法具の取り扱いもあるのだとか。好奇心に駆られてその店を探す者は後を絶たない。
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カウンターに座っているのがアッキーナ・スプリンクルとされる人物である。
あいす・そーど【アイス・ソード】
ある天才ソーサラーが、アカデミーの高等部在学中(権威の位階にあった時)にその卓越した錬金術の能力と魔法力を駆使しして制作した水と氷の高等法具で『ファイン・アーティファクト』。魔法『氷刃の豪雨』に用いる氷刃を永続的な武具として錬成したもの。優れた術式誘引力と物理武具としての特性を持つ。水と氷のエレメントに属するためアンデッドにはやや弱いが、その優れた切断能力で十分な牽制力を発揮する。
3振りのみが制作され、1振りはソーサラー本人が、もう1振りはカリーナ・ハルトマンが所持している。残るひと振りは異国の聖騎士が苦労の末に手に入れたが、それをつけ狙う者に奪われたのち、その行方は明らかとなっていない。一説ではその遥か異国のとある火山に隠れ住む炎の魔物が隠し持っていると言われるが、真偽のほどは定かではない。
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あいらしいごーすと【愛らしいゴースト】
当代を代表するあるマスター・ネクロマンサーが初学徒のころから召喚している何とも言えない表情のゴーストのこと。いわゆるキモカワである。その商品性にいち早く目を付けたのが『ハルトマン・マギックス』の経営者、『カリーナ・ハルトマン』で、彼女はそのネクロマンサーを口説き落として商品化を実現し、若者を中心に大きな人気を集めている。
カリーナとしてはゴーストだけではなくスケルトンも商品化したいようであるが、なぜかそのネクロマンサーは、スケルトンの召喚をかたくなに拒んでいるそうである。携帯式光学魔術記録装置用のアクセサリーのデザインによく用いられている。
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あかでみー『アカデミー』
この魔法社会における主要機関のひとつ。市民に魔術と魔法の教練を施す学習機関であるとともに魔の神秘を研究する最高研究機関でもある。同時に慈善事業団体でもあり、災害孤児や戦災孤児を広く受け入れて生活部面の面倒を見るとともに確かな教育を施している。
学内には魔法学部の他、錬金学部、看護学部、美術学部など様々な学部が設置され、魔法学以外の実学についても広く教育の門戸を開いている。異国で言うところの小学校から大学までの全機能を備えているが、年齢で位階を分ける組織ではないため、各等級には幅広い年齢の人物が席を並べている。
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あかでみーかんごがくぶ【アカデミー看護学部】
アカデミーに設置される学部学科の一つで、回復と治癒の術式を学ぶ場所である。またアカデミーの慈善事業を実体的に担う組織でもあり、特に孤児の面倒をみるのは看護学部の学徒たちの重要な仕事の一つである。
アカデミーは教育機関であるとともに、各職能ギルドと連携する実務機関でもあるため、アカデミーの学徒は学問だけでなく、自己が所属する専門科に関連する実務にも従事する。異国の例でいえば法科大学院のような性質を有している。
所属学徒の多くは、プリースト、シスターとして位階を進めるが、この魔法社会では生と死の神秘に関するネクロマンサーも、魔法学部とかけもちすることが多く、中には優れた回復術士として成功する者がいる。
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あかでみーさいこうひょうぎかい【アカデミー最高評議会】
アカデミーにおける最高意思決定機関。最高評議会議長を頂点とした厳格なヒエラルキーが存在している。神秘と禁忌に関するアクセス権を管理しており、それに違反した者について、政府から独立して、固有の資格で罰する権限を有する。独自の警察権に加え、私設軍隊も有する超法規的存在のアカデミーを取り仕切る最高機関である。その決定は絶対で逆らうものは良くて退学、最悪は暗殺を含む処刑であり、極めて厳しい一面を持つ。
また、学徒に対して、禁忌術式や究極術式の使用命令や使用許可を出し、特殊任務に就かせることがあるが、その特殊任務は極めて過酷である場合が多く、学徒からは『死刑宣告』として恐れられている。
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許可なくこの議場に足を踏み入れるだけで処罰の対象となる秘密主義的な性格もつ。学徒がここに入れるのは基本的には口頭試問が行われる時のみ。
あかでみーさいこうひょうぎかいぎちょう【アカデミー最高評議会議長】
アカデミーを統べる最高権力者。政府権力からも多分に独立しており、独自の警察機構・私設軍隊を統括・指揮することができる。アカデミーにおいて最も重要な地位にある人物であるが、それが何者であるかを知るのは、アカデミーの政府の高官のごく一部だけで、一般には知らされていない。また市民や学徒の前に姿を現すこともめったになく、通常は音声で語り掛けるのみである。一説では、最高評議会の会議にも音声のみで出席するそうである。なぜそうまで秘密主義的であるのかは明らかになっていない。
『魔術全目録』に記載のあるすべての術式を最高レベルで行使することのできる高度な魔法力を秘めているとされる。また、アカデミーの運営とは別に、独自の神秘に関する研究に取り組んでいるとされるが、そのすべてが分厚いヴェールの裏にある。
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メディアのインタヴューや魔術記録撮影には応じることもある。
あかでみーじゅつぐ・まほうぐちょくえいはんばいしょ【アカデミー術具・魔法具直営販売所】
アカデミーが直営する術具と法具の店。アカデミーはいくつかの魔法具を専売としており、専売に指定された物品はここでしか買えない。しかし、広く門戸が開かれているため、欲すればだれでも自由に来店して買い求めることはできる。専売指定の基準は明らかにされていないものの、一説には最高評議会議長の極秘の研究と関係しているとも言われているが、真相は不明である。代表的な取扱商品には、魔法使い用の使い魔である『マジック・パペット』シリーズがある。かつて、『ハルトマン魔法万販売所』が類似の製品を販売したことがあるが、アカデミーから専売違反であるとして処分を受け、その後同店は『ハルトマン・マギックス』と改名した。
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さまざまな術具、法具の他専売品を取り扱っている。お土産店の側面もある開かれた店舗。
あかでみーしょぞくちあんぶたい【アカデミー所属治安部隊】
アカデミーが独自に運営する自警団。この魔法社会の警察権は、政府に属するものと、このアカデミー所属治安部隊の二重構造になっている。一般的な犯罪は政府警察が取り締まるが、『裏口の魔法使い』などアカデミー固有の事件についてはアカデミー所属治安部隊が解決にあたる。
人員は中等部以上の、優秀かつアカデミーに忠実な学徒から選抜される。犯罪者相手であるため危険な仕事ではあるが、国防に従事するほどの危険はない。とはいえ、この仕事に従事する者には保険加入が義務付けられる。武具の使用は限られており、基本的には殴打用の武具を用いることとされている。特殊任務にあたる場合は、刀剣類や錬金銃砲類の携帯も許されるが、その使用には原則として現場指揮官の命令を待つ必要がある。
危険ではあるが実入りはよいため学内では人気の職種でもある。
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制圧力の大きい武具の携帯のためには特別の命令と許可を要する。
あかでみーびじゅつがくぶ【アカデミー美術学部】
アカデミーにおいて特に錬金術を用いた物品の錬成に関しその意匠的デザインを専攻して学ぶ学部。学部内に錬金術科がおかれ、錬金学部と同程度の高度な錬金術を学ぶ。職能としては『術士(スカラ・キャスター)』の位階に進む者が多いようだが、一部には魔法使いを選択する者もいる。
魔法世界は、各種の術具と法具で成り立っているため、その優れたデザイナーとなることは社会的成功を意味し、近時は魔法学部より敢えてこちらを選択する者が増えつつある。
『キューラリオン・エバンデス』や『ラヴィ・ムーン』といった超人気デザイナーにあこがれてこの道を志す者は後を絶たない。
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あかでみーほうせきけんきゅうがっかい【アカデミー法石研究学会】
最近の錬金術上の最大の成果と言えば、魔の結晶である『法石』を人為的に生成できたことであろう。これにより、安価かつ安定的に魔力を秘めた術具や法具を大量生産できるようになり、魔法社会全体の生活水準と利便性は飛躍的に向上した。そのため、『人為の法石/為石』に関する研究はアカデミーの主要分野の一つとなっており、定期的に研究学会が開催されている。その座長は、『パンツェ・ロッティ』教授であり、たびたびその開催告知パンフレットに登場している。この学会には、魔法社会で初めて『人為の法石』の錬成に成功した『カリーナ・ハルトマン』をはじめ、『キューラリオン・エバンデス』や『グランデ・トワイライト』といったそうそうたる顔ぶれが招待される。
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中央に描かれているのが座長である『パンツェ・ロッティ』教授である。
あかでみーまほうがくぶ【アカデミー魔法学部】
アカデミーにもっとも古くから存在する伝統の学部。魔術学と魔法学の知識を授ける学部であり、アカデミー及び魔法社会の中心的存在でもある。この学部に在籍する者は、『術士』、『魔術師』、『純血魔導士』、『暗黒魔導士』、『死霊術士/屍術士』のいずれかの職能を専攻し、各種ギルドにも所属して魔法社会で求められる様々な仕事をこなすことになる。
ただ最近では、魔法社会の多様化により、錬金学部や美術学部の人気がにわかに高まっており、以前に比べると魔法学部の志願者は減ったと言われる。
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あかでみーれんきんがくぶ【アカデミー錬金学部】
近時非常に人気が高まっている学部である。錬金術を駆使して術具や法具を開発製造する技能を磨くための学部。錬金術科、デザイン科、工芸科が設置され、『魔法鍛冶』となるために必要な知識と技能を学ぶ。
最近の学徒は優秀で、中にはアカデミー在籍中に『ファイン・アーティファクト』の錬成に成功する者もいる。
また、工芸品だけではなく、錬金術科では魔術薬や魔法薬に関する勉強・研究も進められる。
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あっきーな・すぷりんくる【アッキーナ・スプリンクル】
魔法社会で最も有名な『裏路地の法具屋』、『アーカム』の経営者であるとされる少女。アカデミーと政府の第一級の指名手配犯である。ブロンドでエメラルドの瞳をしているが、目撃証言は様々で、「年端もいかない少女であった」とか「店番は少年であった」、「若く美しい女性が店を仕切っていた」などと言われ、当局もその実体をとらえきれていない。
一説では、かつてアカデミーで保護されていた戦災孤児の一人が、なんらかの事件の後でアカデミーから連れ去れたのだという。その際、アカデミーの秘密に触れたため追われているのだという話があるが、真偽のほどは定かではない。
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少年のような身なりである。
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若く美しい女性のようなみなりである。
あるふれっど・とわいらいときょう【アルフレッド・トワイライト卿】
有名ブランド『グランデ・トワイライト』社の主任開発者『グランデ・トワイライト』の父にして魔法省の高官である人物。伝統あるソーサラーの一族の末裔で高貴かつ厳格な性格であるが、人格者で仕事もでき周囲の信頼は非常に篤い。次期魔法省事務次官の地位は間違いないとされている。
アカデミーに対する影響力も大きく、最高評議会議長と直接の面識を持つ数少ない人物の一人。
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あんこくまどうし【暗黒魔導士】
大天使ラファエルの加護の下にあり、時間と空間、閃光と雷のエレメントに属する魔法使いの職能。ウォーロック。操る術式は極めて強力なものが多く、その力の源は実は悪魔との契約によるものではないかと噂されているが、アカデミーが取り合うことはない。
魔法使いとして優秀な者が多いが、高等部に進んだ頃から『裏口の魔法使い』に身を沈める者が多い。一説には、疑うことを知らず、誰とでもすぐに良好な親交を結んでしまうその無垢さゆえに、悪の誘惑に乗りやすいのではないかと言われている。これは神学上のラファエルの特性とも合致するため、研究が進められている。時間を巧みに操ることができるため、敵に回すと脅威になる。
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あんだーどれす【アンダードレス】
アンダードレスという名だが下着ではなく、術士や魔法使いがローブの下に身に付ける防具としての一般服である。基本的には、ブラウス、コルセット、ミニのプリーツスカートで構成される。
アカデミー指定の制服の他、様々なブランドが多種多様なデザインのアンダードレスを販売している。最近では『ラヴィ・ムーン』ブランドの製品が若い女性術士や魔法使いからの人気を集めている。
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学則の影響でスカートが短いのが特徴
あんていのまくつ【安定の魔靴】
力の制御が十分にできない初学の者の身体を、術式行使の際の物理的反動から守るために導入された『術具』。施された魔術の力で、身体とそれにかかる外的な力を中和し、体躯を安定させ、衝撃などから身を守る働きをする。
特に、空気や圧力の術式を行使する者、天気や天候の術式を行使する未熟な詠唱者は、これを身に付けていないと行使した術式から生じる物理的副作用で吹き飛ばされてしまい、場合によって命に関わることがある。
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あんでっど【アンデッド】
魔法社会における最大の脅威の一つ。文字通り生ける屍で、生成した詠唱者の制御が効いているうちは色々と役立ち、実際、人間にさせるには危険で過酷な肉体労働の場面における労働力として使役されていたりもするが、生成した詠唱者に万一のことがあると彷徨える屍となって無差別に人を襲うようになる。
また、『裏口の魔法使い』に身を堕とした邪悪なネクロマンサーがその大軍を組織し、街や集落を襲う事件が後を絶たず、アカデミー・政府ともにその対策に追われている。
火と光には弱いが、水と氷には強く、大規模集団攻撃魔法が得意なソーサラーの魔法効果が薄いため、集団攻撃魔法に乏しいウィザードで対処に当たらねばならないという戦術上の難しさがある。ネクロマンサーが召喚するアンデッドの大軍をぶつけるのがもっとも効果的ではあるのだが、なぜかアカデミーはその戦術をとることに消極的な姿勢を示す。
近時は、『リッチー・クイーン』という非常に高位の『裏口の魔法使い』が現れ、『奇死団』というアンデッドの大軍を組織して各地を荒らしまわっている。
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アンデッドには群れる性質があり、無差別に生者を襲うため非常に質が悪い。魔法社会における最大の脅威の一つである。
い行
いかい【位階】
術士及び魔法使いのヒエラルキーのこと。各位階によってアクセスできる術式と神秘が制限されている。異国の学校制度と対比すると概ね以下の様になるが、アカデミーは年齢で位階を割り振る教育機関ではないため、各位階の所属者の年齢の幅は、以下の例よりもずっと広い。
○初等位階
・心得(Rookie):小学校低学年
・初学徒(Novice):小学校高学年
○中等位階
・熟練(Adept):中学生
・権威(Expert):高校生
○上等位階
・終学(Master):大学生
+オン・マスター:学士
+ハイ・マスター:修士
+アーク・マスター:博士
なお、マスターの位階はさらにオン・マスター、ハイ・マスター、アーク・マスターに分かれるが、これはアカデミー内の指導的地位を反映したもので、魔法使いの能力による分類ではない。従って、魔法使いとしては非力なハイ・マスターやアーク・マスターも存在する。また、最高評議会の評議員になるためにはアーク・マスターの地位が原則として必要である(例外的に、ハイ・マスターのうち極めて優秀な者が抜擢されることはある)。
『ローブ』の着用は『中等位階』、『神秘のティアラ』の着用は『上等位階』から認められる。また、禁忌術式と究極術式へのアクセス、および各専攻科の神秘に学術的にアクセスできる権限は『上等位階』に限られ、『中等位階』の者がこれらの学識にアクセスすることは厳しく禁止されており、罰則の対象となる。最も厳しい場合は処刑であり、最悪は『漆黒の渡鴉』に追われることになる。
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異国の聖騎士
天才ソーサラーがアカデミー在学中に錬成に成功した『ファイン・アーティファクト』を購入した異国の聖騎士。喜びのあまり「念願のアイス・ソードを手に入れたぞ!」と歓喜の声を上げたが、それをつけ狙う一団によって命を落としたと伝えられている。真偽のほどは定かではないが、『神秘の雲』では専らの噂である。
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この直後彼は悲劇に見舞われることになる。
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いせき【為石】
『人為の法石』ともよばれる錬金術と魔法によって人為的に生成された『法石』。『法石』は優れた魔法特性を持ち、『術具』や『法具』にさまざまな魔法的特性を賦与するが、自然界に存在するものは希少かつ高価でこれまでは高価なオートクチュール品にしか用いることができなかった。
しかし、近時『カリーナ・ハルトマン』が高度な錬金術によって『人為のルビー』を生成し、錬金術および『術具』・『法具』の製造分野に技術的ブレイクスルーが巻き起こった。堰を切ったようにありとあらゆる『為石』の錬成が成功し、今では『法石』といえば、本物の『法石』である『真石』より、この『為石』を指す方が一般的になりつつある。
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魔法社会の産業に革命的な発展をもたらした一品である。
いせきだいやもんど【為石ダイヤモンド】
『ハルトマン・マギックス』の共同経営者『リセーナ・ハルトマン』が極秘に開発に成功したとされる非常に高い魔力特性を持つとされる『為石』。リセーナ本人も『ハルトマン・マギックス』社の広報もその事実を否定しているが、スクープした『週間・魔法インフィニティ』の記者によると、『為石スターダイヤモンド』、『為石ホワイトダイヤモンド』、『為石ブルーダイヤモンド』の3種類の生成に既に成功しており、ホワイトとブルーは量産体制も整っていて、秘密裏に市場に出回っており、そのうちのいくつかが『パンツェ・ロッティ』に引き渡されたと報じられている。
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う行
ゔぇーる【ヴェール】
ネクロマンサーが身に付ける顔を隠すための薄布。ネクロマンサーは生命の神秘を探求する職能であり、魔法社会においては人間の生と死(出産と葬儀)に関わるが、アンデッドの生成に関する分野での術式の外観が一般におぞましいものであるため彼女たちの仕事を毛嫌いする者もあり、いわれなき誹謗中傷をかわすためにフードやヴェールを身に付けることを好む。
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社会で最も肝要な仕事に従事する者がその顔を隠さなければならないのは悲しいことでもある。
うらぐちのまほうつかい【裏口の魔法使い】
魔法社会全体を覆う深刻な社会問題の一つ。アカデミーの禁気に触れ、あるいはその過程からドロップアウトして裏社会で暗躍するようになった魔法使いの成れの果て。違法品の密造、密売、窃盗、強盗、暗殺、スパイ行為などなどありとあらゆる悪行に手を染める。その多くがアカデミーの禁に触れており、禁忌術式や究極術式を行使できるため、その実力は本物で、アカデミーの治安当局の手に負えない場面も少なくない。アカデミー側も『漆黒の渡鴉』のような特殊部隊を組織して対策にあたっているが、現状ではいたちごっことなっている。
特に最近では強大な力を持つアンデッド集団を組織する『裏口の魔法使い』も現れ、一層混沌とした様相を呈してる。一部ではアカデミーの対策の手が緩いのではないかと指摘する声もある。
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迂闊に足を踏み入れると無事に出ることはできないと言われる。
うらとりひき【裏取引】
違法な物品やアカデミー、各種ギルドからの支給品を秘密裏に取引すること。そこには必ず大手ブランドの経営者の名が見え隠れする。
この世界で特に頻繁に裏取引の商材とされるのは、違法・禁忌の品物の他、『神秘のティアラ』と『看護学部の制服』である。特にこれらは『神秘の雲』の個人取引サービスなどを介して盛んに取引されており、時に目玉の飛び出るような高額で売買されている。
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この現場では貴重かつ高価な『真石ルビーの神秘のティアラ』がやり取りされていた。
うらろじのほうぐや【裏路地の法具屋】
『裏口の魔法使い』が経営する闇市のこと。ちょっとした違法品を取り扱うだけのところから『魔導書』のような禁忌の法具を取りそろえるところまでさまざまであるが、興味本位で迂闊に近寄ってよい場所ではない。
もっとも有名な『裏路地の法具屋』は『アッキーナ・スプリンクル』が経営する『アーカム』であり、当然にアカデミーおよび当局の第一級指名手配対象とされている。
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ただし、このように町中に堂々と店が構えられているわけではなく、そこに到達するためには一定の手順を踏まなければならないとされる。
うりえる【ウリエル】
水と氷を司る四大天使の一角。力を奪い抑制するディスエンパワーメントの領域を支配する存在である。水と氷の他、空気と圧力、錬金術と自然科学の力を庇護者に授ける。
自尊心と自信を特性とし、ウリエルを信仰する者は自信家になりやすい。自信があることは強い力を発揮するためには必要な要素であるが、同時に過信により足をすくわれることにもりかねない特性である。
事実、若いソーサラーは、自分の力量を見誤り、無謀な挑戦をして命を落とすことがある。これはウリエルの特性を受け継ぐが故であるという神学上の指摘があり、研究が進んでいる。
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天使は普段はキューピッドの姿をとっており、本当の姿を見せることは滅多にない。
え行
えいしょうしゃ【詠唱者】
術士、魔術師、魔導士の総称。魔術および魔法の力を行使する者をまとめて詠唱者といい、そのうち魔術師と魔導士を魔法使いという。
詠唱者はアカデミーと各職能ギルドに所属し、その専攻する職能に従って様々な社会的仕事に従事する。自警や国防に従事する者もあれば、『術具』や『法具』の設計や錬成に携わる者もあり、その能力の活用範囲は区々である。魔法社会を支える重要な職能を担っている。
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えれめんと【エレメント】
魔の性質を表現する属性のこと、火、光、水、氷、空気、圧力、天気、天候、閃光、雷、風、生、死、磁力、電気、星天、時空、空間などが主要なものである。他に、核、放射、力場などがあるほか、錬金や自然も属性の一部である。
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えんぜる・はいろぅ【エンゼル・ハイロゥ】
天使の輪のこと。天使の力を象徴する神秘の力の発現である。魔を司る四大天使の頭上に輝くものがそれであるが、錬金術と魔法によって人工的に生成された『人為による天使の輪』なるものも存在し、それはアカデミーによる絶対禁忌法具に指定されている。魔によって成り立ち、天使への信仰を社会成立の根本的秩序および倫理観とする魔法社会において、天使の力を人間が模倣することは神秘の摂理に反する重大な違背であるとして、その製造・販売・所持・使用をすべて禁止しており、違反者は例外なく極刑となる。『アーカム』にはいくつかこの『人為による天使の輪』があるといわれており、事実、それを身に付けた『裏口の魔法使い』のウォーロックの姿が目撃されている。
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さまざまの『法石』に彩られ、天使の力を人為的に与えるとされる法具の一つ。
えんねつのじゅうほうとくしゅぶたい【炎熱の銃砲特殊部隊】
アカデミーが結成した錬金銃砲と火と光の法弾を主武装とする制圧力に優れた特殊部隊。大量生産の難しい火と光の法弾を用いるため継戦能力は長くないが、優れた『術士』で構成されているためその任務遂行能力は高い。いわゆるエリート部隊であり、志願者は絶えないが、任命されるためのハードルは高い。携帯する銃砲も、魔法散弾や徹甲法弾などを用いる極めて破壊力の高いものとなっている。
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高い制圧力を誇る特殊部隊だが、継戦能力の低さから対アンデッドの集団戦には向かない。
えんぱわーめんと【エンパワーメント】
ミカエルが支配する、力を発生して与える領域の概念。火と光の属性がその代表であり、ウリエルが支配するディスエンパワーメントの領域と対をなす。生み出すという意味では生命や錬金術にも影響を及ぼす。
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か行
かいふくじゅつしき【回復術式】
傷ついた者の怪我を治し、体力を回復する術式。警備や国防にあたる場合は必須の技能で、攻撃魔法や召喚魔法も行使できるネクロマンサーがこれを併せて行使する。プリーストやシスターも回復術式を行使できるが、場においては戦力とならないため、行使者としてはネクロマンサーが好まれる。
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がくじゅつてきいかい【学術的位階】
アカデミーにおける教職者の階級。実務家職能の位階とは区別され、『終学(マスター)』の位階の内部に設置された階級である。これはアカデミー内の地位を示すのみで、魔法使いとしてできることに差はない。また魔法使いとしての力量にも比例していないため、時に驚くほど非力な高位の学術位階者も存在する。
下から順に、オン・マスター、ハイ・マスター、アーク・マスターとなっており、アーク・マスターには最高評議会の評議員となる資格が与えられる。また、ハイ・マスターの中で特に優秀な者が評議員の特別委員に抜擢されることがある。一見、学術的位階の高低によってアクセスできる神秘のレベルに差がありそうであるが、それはない。専攻科に関する神秘の探求は公式かつ無制約に認められる。
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がくそく【学則】
アカデミー学徒の生活部面を規律する規則を定めるもの。魔法の行使やギルドとのかかわり方に関するものが大半であるが、特筆すべきものに、アカデミー内における風紀に関する条項『第8条第6節』の規定「スカートは極力短くあるべし」がある。パンツェ・ロッティ教授の肝いりの規定であるが、その根拠はよくわかっていない。とにかく女性学徒からはすこぶる不人気な規定であるが、男子学徒と一部の男性教職員からは絶大な支持を集めている。
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かごだいてんし【加護大天使】
魔法使いを加護し、信仰を通して彼女たちに魔の力を授ける天界の存在。その上には『神』が存在するとされ、『神』の神秘には『加護大天使』への信仰を通してのみ間接的に到達できると説かれている。神秘とは各魔の要素に関するものから、宇宙や時の運航、世界の創造と破壊に至るまでその奥行きは極めて深い。
火と光を司る熾天使長ミカエル、生命と調和、霊性の均衡を司る伝道の大天使ガブリエル、水と氷を司るウリエル、時間と空間を司るラファエル、そして小さな神の名をもつ熾天使が知られている。
なお、錬金術と自然科学という、人間の固有の能力だけで制御可能な力(魔術)のみを取り扱う『術士』には大天使の加護はない。
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がぶりえる【ガブリエル】
生命と調和、霊性の均衡を司る大天使。ネクロマンサーにとりわけ大きな加護を与える存在である。穏やかな性格で、常識的。生命に関する領域の他、磁場と磁力に関する領域を支配し、庇護者に召喚に必要な能力を授ける。
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天使は普段はキューピッドの姿をとっており、本当の姿を見せることは滅多にない。
かみ【神】
奇跡と魔のすべてを生み出し管理するとともに天使を統べる存在とされるが、この魔法世界では『神』は直接の信仰対象ではなく、各大天使への信仰を通してその神秘にたどり着くべきものとされている。時間と空間および物理法則と魔法則のすべてを制御し管理する至高の存在で、この世界全体の創造と破壊の力を持つとされている。
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あくまでもイメージであり、その存在の確たる姿は一切確認されていない。
かりーな・はるとまん【カリーナ・ハルトマン】
魔法社会に産業的大革命をもたらした功労者である。『人為の法石』である『人為のルビー』の錬成に史上初めて成功した稀代の天才ソーサラーの一人。アカデミーの位階は『権威(エキスパート)』で、火と光の魔法および錬金術にとりわけ高い適性をもつ。
黒髪で赤黒い瞳を持ち、真紅のローブを愛用する美女。大人気ブランド『ハルトマン・マギックス(旧ハルトマン魔法万販売所)』の創設者にして共同経営者である。当代で最も成功している実業家の一人で、アカデミーの高官も彼女には一目を置いており、その発言力は私的にも公的にも大きい。妹にのリセーナ・ハルトマンを共同経営者に迎えている。
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ソーサラーとしてだけではなく、経営者としても超一流である。
かんごがくぶのせいふく【看護学部の制服】
アカデミー看護学部に所属する学徒に支給される術士の制服と『ローブ』。なぜか男子学徒からの人気が非常に高く、供与品であるため市場で購入することができないことも手伝って、裏取引が後を絶たない。新品はもとより魔術記録付きの古着があり得ない高値で取引されているそうで、神秘の雲の世界には、その取引のための専用の領域までが展開されているそうである。親から預かった『神秘のティアラ』購入用の資金を、この裏取引に使ってしまう不心得者も少ないのだとか。世も末である。
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き行
きしだん【奇死団】
近頃、魔法社会を恐怖のどん底に陥れている、おぞましいアンデッドの集団。ただの彷徨える屍の集団ではなく、『リッチー・クイーン』といわれる『裏口の魔法使い』に使役され、統率の取れた軍行をとる非常に手ごわく厄介な一団である。アカデミー、政府ともに手を焼いており、討伐の為に部隊を差し向けるが、死霊術の究極禁忌術式である『死を呼ぶ赤い霧』を行使され、派遣した部隊のほとんどをアンデッド軍団に組み入れられてしまう事態が続いている。
『リッチー・クイーン』個人の能力が高いだけでなく、その軍団の組織的戦闘力も極めて優れたもので、文字通り不死の軍団が襲ってくる恐怖を体験することになる。現在の、アカデミーと政府の最大の敵であるが、特にアカデミーの対策は手ぬるいのとの批判が一部にある。その実、アカデミーは最も効果的と思われる、アンデットの大軍による対抗策を講じることには後ろ向きである。
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ここに『リッチー・クイーン』の姿はないがそれでも統率がみだれることはない。
きゅうきょくじゅつしき【究極術式】
アカデミーが管理する術式の中で最高のもの。領域殲滅的な破壊力をもち、極めて広範囲に影響するが魔法と神秘の制御がよく効いているため敵と味方を識別することができる点で、禁忌術式ほど混沌としていない。いわゆる「実際に使うことのできる」殲滅魔法であり、アカデミーの切り札であるが、行使できる者の数は著しく限られる。
アカデミーの教職の地位にある者は、この術式を行使できるものとされているが、実際は『神秘のティアラ』の力を借りて、かろうじて行使できるだけか、中には全く行使不能な者も少なからず存在する。
魔法使いとしての実力に優れる『裏口の魔法使い』が社会的に求められるのは、アカデミーのこうした「見掛け倒し」のマスターでは対処しきれない現実の問題に対処するためである。
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きゅーらりおん・えばんです【キューラリオン・エバンデス】
『キュリオス骨董堂』の店主にして、当代随一といっても過言でない卓越した錬金術の能力と美術的センスをもつデザイナー。為石『エバンデスの涙』の開発者としても知られる高名なソーサラーである。最終位階は『終学(マスター)』で、ウリエルの領域の神秘を追求する資格をもつ。その手からは様々な『ファイン・アーティファクト』が生み出されており、市場で高い人気を誇っている。
また、魔法社会における人権向上委員会の重鎮でもあり、アカデミーの女性学徒の人格と尊厳に悪影響を与えるような言動を見せる『パンツェ・ロッティ』を蛇蝎のごとく嫌っており、高官である彼を公然と批判する数少ない人物の一人である。
かつて、アカデミーから一人の少女を連れ出したとも言われており、その嫌疑をかけられているが、本人は無実を主張しており、今のところは証拠不十分でそれ以上の捜査は及んでいない。アカデミーにほど近い場所に『キュリオス骨董堂』の本店を構える他、各地に支店・系列店を開いている。
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アカデミー在籍時代から美貌と才能に恵まれ、彼女に恋する男子学徒は数えきれないほどであった。その中でも熱烈に彼女に言いよっていたのが、パンツェ・ロッティである。もちろん、キューラリンオンが振り向くことはなかった。
きゅりおすこっとうどう【キュリオス骨董堂】
『キューラリオン・エバンデス』が経営する術具・法具の販売店およびそのブランド。骨董堂という名前だが、主に提供するのは新品で、骨董や古代魔術品・魔法具はその取扱品の中のごく一部である。キューラリオン自身が錬成に成功した為石『エバンデスの涙』を搭載した商品が多く、その優れた魔法的特性と、彼女の手が織り成す美麗なデザインが相まって、市場で大きな人気を獲得している。本店はアカデミーにほど近い場所にある。
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大人気の店舗で、客足が絶えることはない。
ぎるど【ギルド】
アカデミーの中等部以上の学徒が身を置く職能組合。ネクロマンサーの組合である『死霊術士・屍術士共済組合』や魔術師の組合である『全国魔術師生活協同組合』が有名。『裏口の魔法使い』もある意味ではギルドであるが、反社会的組織であることに間違いない。
アカデミーの学徒は、各職能のギルドから仕事を請け負い金を稼いで生活費を賄う。裕福なソーサラーの子女は親からの仕送りを当てにしてギルドの仕事を引き受けない者もいないではないが、アカデミーに保護されて学習過程に進んだ者などはそれ以外に生活の方法がない。あてがわれる仕事はさまざまで、子守、ハウスメイド、家庭教師に始まり、警備、国防まで社会のあらゆる領域に及ぶ。ネクロマンサーなどは出産や葬儀など、人の生死に関する生活領域に深くかかわる。
アカデミー学徒はアカデミーの活動とギルドの活動を通して、魔法社会の市民としてのアイデンティティを形成していくのである。
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ここは異国でいう職業安定所のような場所で、アカデミーの学徒はここを訪れて仕事を探す。
きんきじゅつしき【禁忌術式】
アカデミー最高評議会がその使用権限を厳重に管理する術式。その場において壊滅的な影響を及ぼす上に、敵味方を識別しないため自然環境にとっても混沌とした殲滅的影響を及ぼす。
また中には、使用に際して術者の生命の一部それ自体を蝕む者もあり、とても普通に使えるものではない。いわゆる「使いたくても使えない力」である。
『終学(マスター)』の位階に進む前にこの術式に触れることは、特に厳しく禁じられており、罰則は『究極術式』への不正アクセスより重い。この術式に不正に触れてアカデミーを追われ『裏口の魔法使い』となる者が多いことがアカデミー高官の頭痛の種となっている。
『禁忌術式』を修得されるとその処分が非常に難しくなるうえ、正面衝突したときに、周囲に途方もない被害をもたらすので、『裏口の魔法使い』問題は、魔法社会における深刻な社会問題となっている。
極めて破壊的な魔法が多いが、使いこなせる者はごくわずかである。
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ぎんのれんきんじゅうほうぶたい【銀の錬金銃砲部隊】
度重なるアンデッドの集団による被害・損害に対応するために近時アカデミーが新設した、『錬金銃砲』と『魔法銀の法弾』により武装した『術士』による対アンデッド専門の大規模部隊。確かにその装備から、アンデッドの集団に対する潜在的な可能性を持っていはいるが、『魔法銀の法弾』の対アンデッド効果が抑止力程度のものでしかないうえに、生身の『術士』で構成されていることから最大の脅威である『死を呼ぶ赤い霧(場に存在する全ての生者を無差別にアンデッドにする)』への対策が一切取られていない。
この事実について、アカデミーの対応の不十分を問う声は小さくないが、当のアカデミーは「抑止効果があればそれでよい」としてそれ以上の対策に関する予算投下を渋っており、犠牲者が絶えない。
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ぐらんで・とわいらいと【グランデ・トワイライト】
1 ブランド
高位の実業家ソーサラーである『ユーリア・トワイライト』が経営する術具、法具および服飾品の提供ブランド。実用性に優れる物品を提供することで定評があり、意匠に優れる『キュリオス骨董堂』ブランドと市場の人気を二分している。主任デザイナーはユーリアの娘『グランデ・トワイライト』で、ユーリアは娘の名前をブランドの看板としている。
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大規模な会社経営がされており、系列店が各地に展開する。
2 人物
ブランド『グランド・トワイライト』の主任デザイナーである人物。彼女の名前がブランドに冠されている。稀代の天才ソーサラーで、十代半ばにしてアカデミーの『終学(マスター)』の位階を得ており、その間に幾度もの飛び級を成し遂げている。彼女はアカデミーの中等部在籍の折に、為石『グランデ・アクオス』の原型となる『愛と喜びを分かつ石』を錬成したが、その時はまだアカデミーから『制御の魔帽』の着用を義務付けられていたという早熟の奇才である。
かつてマリアンヌ・イゾルデという親友がいたが、不慮の事故で亡くした経験を持ち、そうした事故を二度と起こすまいと術具・法具の開発に情熱を傾けている。ソーサラーの一族であるためその性格は閉鎖的で、マリアンヌの事故の後はひたすらに仕事に没頭するばかりであったが、最近は『ラヴィ・ムーン』と親交をあたためるようになり、笑顔も戻るようになった。
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け行
けいせんのうりょく【継戦能力】
場において、戦闘を継続できる能力(あるいは戦闘継続可能時間)のこと。魔法使いはその高い魔法力により、攻撃力や殲滅性に優れるが、その力の行使のためには常に魔力の消費を必要とするため、体力の続く限り能力を維持できるというものではない。特に、アンデッドの集団を相手にするときには、魔力が枯渇した後にも一定の(例えば、退路を確保し安全な撤退が完了するまでの間の)継戦能力を維持する必要がある。
場における魔力枯渇は致命的な状況をもたらすため、任務にあたるについては、部隊、あるいは自分自身にどれだけの継戦能力が残っているかを冷静かつ客観的に見極めて管理できる自己管理能力が強く求められる。その点、魔術と物理武具を中心に戦う『術士』の継戦能力は高く、魔法使いは優れた『術士』と組むのが一般的となっている。殲滅力と攻撃力は魔法使いが担い、継戦能力の維持を『術士』が担う訳である。
こうした継戦能力の課題を解決するために開発されたのが『錬金銃砲』である。『法弾』に予め魔力を込めておくことで、詠唱者本人の魔力が枯渇した後でも『法弾』に込められた魔力を行使して継戦能力を維持することが可能になった。残る課題は、『法弾』の効きづらいアンデッドに如何に対抗するかという点であるが、アカデミーの腰は事態の大きさに比して重く、なかなか前進がみられていない。
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大きな魔力を消費して大規模集団攻撃魔法を行使する前に退路を確保しておかなければならない戦術的重要性を物語る魔術記録である。
けん【剣】
もっともオーソドックスな物理武具。実戦的な場に臨む『権威(エキスパート)』以上の魔法使いが好んで携帯するようになる。その多くが『術具』または『法具』であり、術式の力を誘引する機能を備えており、術式媒体として使用することができる。
女性魔法使いが取り回ししやすい片手用のショートソードが人気で、様々なブランドから販売されているが、とりわけ『グランデ・トワイライト』社の製品がその実用性の高さから人気を博している。最近では、武具にはめ込んだ『為石』から魔力を取り出し、詠唱者本人の魔力が枯渇した後でも、魔力拡張された物理武具として使用できるように工夫されたものが登場するようになった。これにより場における継戦能力の問題は緩和に向かっているが、油断は禁物である。
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魔法的特性を持たない物理武具で、これは術式媒体としての機能は持っていない。
物理武具としての性能は高い。
けんい【権威】
アカデミーが定める位階のうち実務家位階の最上位で、『エキスパート』の称号。実戦的な仕事を担うことができるようになる。アカデミーでは高等部に該当し、『魔術と魔法に関する高度専門論文試験と口頭試問』に合格した者が進める位階である。
ギルドと正式に契約を交わし、継続・反覆的な依頼を受任することができるようになるため、経済的には安定するが、要求される職能のレベルも高くなる。また、国防などの領域において場に臨むことも増えることから、犠牲なる者も少なくない。
この位階に到達すると『術士』でも相当の力を持ち、大いに活躍する。アカデミーにとっても魔法社会にとっても頼れる現役の主役である。
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こ行
こうかはんい【効果範囲】
行使する魔法の効果が及ぶ範囲で、狭い順に、単体、小規模集団、中規模集団、大規模集団、全領域、全領域無差別となる。
単体は文字通り、狙いを定めた相手だけに効果を及ぼし、小規模集団は数名~十数名程度の集団、中規模は数十人~百人程度、大規模は数百人~数千人の軍隊規模、全領域はその場にいる全ての味方あるいは敵方、全領域無差別は詠唱者を除くその場に存在するすべての者を対象とする。
一般的に、魔法の効果範囲を広げるほど、消費魔力は大きくなる。また威力を増すほど大きくなるため、威力と範囲を広げれば効果は大きくなるが、消費魔力量は等比級数的に大きくなるため魔力枯渇に常に注意しなければならない。一時の怒りや恐怖にかられて一度に大量の魔力を放って魔法を行使することは詠唱者自身にとっての命取りになるため、場においては冷静で客観的な克己心が強く求められる。
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こうとうじゅつしき【高等術式】
中等位階の術士と魔法使いが主に行使する実戦的な術式。あらゆる場面で実効的に役立つ術式が揃っている。これを『熟練(アデプト)』の位階で修得した詠唱者は長く現場で活躍することができる。禁忌術式や究極術式は強力すぎるため、使いにくい側面があることから、高等術式はプロフェッショナルに役立つ術式として極めて重宝される。事実、大規模な戦争でもないかぎり『究極術式』が用いられることはなく、敵味方問わず壊滅させる『禁忌術式』に実際上の出番はほぼないと言える。
アカデミーの高官に、階級が高いだけで、禁忌術式も究極術式もろくに使えない者が平気で存在できるのは、そうした事情による。他方で、アンデッドの大軍団から町や集落を守るような場面では、『高等術式』だけでは到底追いつかないため、『禁忌術式』や『究極術式』を実戦的に行使できる『裏口の魔法使い』が社会的に求められるのである。
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こくぼう【国防】
魔法社会は現在、安全保障上の2つの主要な課題に直面している。ひとつは、魔法社会への侵略を試みる北方の騎士団からの国土防衛、もうひとつは、国内で頻発するアンデッドの集団による集落襲撃である。
錬金銃砲部隊の結成など、前者に対する対策は着々と進んでいるように見えるが、後者への対策は大きく立ち遅れている。政府もアカデミーも知恵を絞っていはいるようだが、なかなか決定的な打開策がないのが現状である。ネクロマンサーの組合は、相手がアンデッドの集団であるならば、大規模なアンデッド軍団を召喚してぶつければよい、と主張し、世論もそれを支持するが、肝心のアカデミーは錬金銃砲部隊の抑止力が十分であることを根拠としてその提案を飲む気配がない。
しかし、実際は、『リッチー・クイーン』など高位の『裏口の魔法使い』が行使する『死を招く赤い霧』の前に犠牲者は増え続ける一方で、このまま国力が低下すれば、北方騎士団に侵攻の機会を提供することになるのではないかと懸念する声が上がり始めている。
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こころえ【心得】
アカデミー初等科の前期課程に属する位階。『ルーキー(Rookie)』。通常、詠唱者を呼ぶときは、その職能の前に位階名を添えて、例えば、中等のソーサラーの場合、『熟練純血魔導士(アデプト・ソーサラー)』と呼ぶが、最下位の位階である心得だけは、職能の後に付加して、『純血魔導士心得(ソーサラー・ザ・ルーキー)』と呼称する。
最低の位階ではあるが無力である訳ではなく、着火、消化、発電、磁場発生、空気振動、気温の上昇下降、礫の錬成くらいの要素的なことはできてはじめて『心得』の資格を得ることができる。
アカデミー準備園を経て『初等科認定試験』に合格して獲得するのが一般的だが、準備園に通園せずに試験に臨んで資格を得る者も一定数いる。特にソーサラーの名家の子女は準備園に通わず専属の家庭教師による英才教育を施されることが多い。
魔力の制御が甚だ不十分である場合が多いので、身体の保護用に『制御の魔帽』と『保護の手袋』の着用が強く推奨されている。
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こだいしじゅつのまくつ【古代屍術の魔靴】
禁忌の高等死霊法具で、人間を捨てることと引き換えに、使用者に死霊の奥義を授けるとされるもの。ただ、法具として「使用」しなければ効果を発揮せず、着用するだけでは無害であるうえ、『増魔の魔靴』として非常に優れた性能を発揮するので、常用する者も少なくない。
違法品なので、合法的に経営する店舗で買い求めることはできないが、『神秘の雲』上で運営されている怪しげな通信販売店にアクセスすれば、それほどの困難なく入手することができる。グランデ・トワイライトのかつての親友、マリアンヌ・イゾルデも愛用の『増魔の魔靴』としてこれを着用していた。
法具として「使用」すると古代の呪われた魔法が発動し、使用者をアンデッドに変え、人間の身体と引き換えに『リッチ(最高死霊)』の人外位階を授ける。リッチは、究極禁忌術式『死を招く赤い霧』を行使できる唯一の位階で、この呪われた魔法は、敵味方を問わずその場に存在する全ての生者をアンデッドに変えて使役するという呪わしいものである。最近、『裏口の魔法使い』の中にこの『リッチ』の存在が増え始め、社会不安を招いている。
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さ行
ざんげきぶぐ【斬撃武具】
切り付け、切り裂くことに特化した武具。物理的な攻撃性能が高い。短剣、剣、刀剣が属する。『術士』の他、『ウィザード』と『ウォーロック』が得意とし、彼女たちの魔法の特性をよく引き出す処理が施された術具や法具も数多く存在する。
ただし、金属の斬撃武具では原則としてアンデッド、とりわけ実体を持たない霊体を傷つけることはできない。そのため、武器を魔法で拡張(エンチャント)するか、魔法力を秘めた斬撃武具を用いる必要がある。この世界ではそれくらいにアンデッドは厄介な存在なのである。
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アンデッドに危害を加えることのできる法具。対霊武具とも呼ばれる。
し行
じけいだん【自警団】
集落や街を自衛するために組織された警備団体。広い意味ではアカデミー所属治安部隊もこれに当たる。
ある程度力をつけた攻撃特性に優れる術士や魔法使いが最初に得るのがこの職である。荷馬車の護衛から、盗賊団の迎撃、アンデッドの殲滅まで職務内容は多岐にわたるが、初等位階や中等位階になりたての者には、アンデッドの集団を相手にするのは少々荷が重い。
アカデミーの学徒だけで自警団を結成することは基本的にないため、犠牲が出ることは稀であるが、皆無という訳でもない。その遺体はアカデミーが引き取って丁重に荼毘に服す。そこでもアカデミーの看護科が活躍する。危険と隣り合わせであるだけに実入りはそこそこよいが、所属治安部隊の方が保険も整備されており待遇もよいため、より優秀な者はそちらに志願することが一般的である。
![](https://assets.st-note.com/img/1707575802094-aHhB2hTCM3.png?width=1200)
上位の者が下位の者を守るのが風習となっている。
しじゅつし【屍術士】
ネクロマンサーのうち、術士の系統に属する者。魔術的に死霊術を行使する者らで、魔法を行使できないために、より直接的な方法でアンデッドを生成し行使する。その具体的な術式は外見的におぞましいため、彼らに偏見を向ける市民も少なくないが、彼女たちの献身的な職責への従事がなければ、魔法世界は労働力不足に陥るのみならず、出産、葬儀といった生と死に関する分野の仕事は完全に滞ってしまう。
屍術士は、アンデッド生成用のメダリオンを用いてアンデッドを生成する。メダリオンには行使者の名が刻まれ、生成されたアンデッドは行使者の命令に忠実に従う。しかし、適切な処理を経ることなく行使者が死亡した場合には、その制御が効かなくなり、当該アンデッドは『彷徨える屍』となって無差別に人々を襲うようになる。
現在市販されているメダリオンには、外部から魔法的にアクセスすることによって『彷徨える屍』となったアンデッドの機能を停止する機能を有しているが、この機能が搭載される以前のメダリオンによって『彷徨える屍』となったアンデッドは自然的に群れを作っては本能のままに集落や町を襲撃するため大きな安全保障上の問題となっている。最近では、『リッチー・クイーン』などの実力者がこうした野良アンデッド集団を糾合してより統率の取れた死者の軍団を組織するようになり、その問題は深刻化の一途をたどっている。
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しぜんかがく【自然科学】
人間が学術的探求によって発見してきた自然法則の体系。錬金術の礎をなす重要な学問領域である。魔術は錬金術と自然科学から引き出される力であり、人間的な知恵の結晶である。他方、魔法は魔と神秘から引き出される奇跡の一種で、非人間的な領域(この世界でいえば天使の領域)を含んでいる。一見、魔法の力を身に付けるだけであれば自然科学は不要にも思われるが、この世界の自然の法則に精通することは、神秘の力を制御し発揮するために大いに役立つため、アカデミーの必修科目となっている。
魔法が使えない『術士』は、魔法使いに劣るような印象があるが、そうではない。『術士』は錬金術と自然科学から十分な魔術的効果を引き出すことができるのであり、その高等術式は、下位の魔法使いの力の到底及ばないものである。
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したぎ【下着】
肌に直接身に付ける衣類。魔法社会では、おしゃれのため以外にも、魔法力の向上や調整のために一役買う存在である。様々なブランドから多種多様なデザインのものが販売されており、若者と一部の好事家の心を掴んでいる。
この分野で有名なデザイナーは『ラヴィ・ムーン』と『ロコット・アフューム』のふたりであるが、『リセーナ・ハルトマン』が手掛けるものにも人気がある。
殺伐とした魔法世界を彩るロマンティックな服飾品でもある。「見えないおしゃれこそ究極の美学」という名(謎)言がある。
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身に付けた者の魔力量を大きく拡張する効果があり、魔力消費量の多いソーサラーに特に人気がある。
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下着を見られるのを嫌う者が着用するアンダースコート。不慮の事故から守る。
しっこくのわたりがらす【漆黒の渡鴉】
アカデミーが結成した対組織犯罪用の特務班。極めて優れた能力を持つ『熟練(アデプト)』以上の学徒のうち、とりわけアカデミーへの忠誠心の高いも者が選別されて任じられるエリートの集団。ただし、相手にするのは『裏口の魔法使い』であるため、死と隣り合わせの危険な仕事である。待遇は極めてよく、また選任されること自体がエリートの証であるため、自ら志願する者も多い。
彼女たちが追うのは、『裏口の魔法使い』としてアカデミーを追われた元アカデミーの同僚であるため、その追走劇は社会からは『共喰い』と呼ばれている。
この部隊に属する『権威(エキスパート)』の術士・魔法使いには『禁忌術式』や『究極術式』の特別行使命令と許可が出されることがある。それくらいに『裏口の魔法使い』との戦いは熾烈を極める。下手な盗賊団討伐よりもはるかに危険な任務にあたる彼女たちに憧れる下級生は多い。
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最近の部隊は全身黒づくめで顔を完全に隠し、最新式の錬金銃砲で武装するより恐ろしい姿となったと言われている。
しとつぶぐ【刺突武具】
刺したり突いたりして用いる物理武具。代表的な物は短剣とピックである。その他に短槍などもある。術士・魔法使いの武具として、各属性に応じた術式媒介能力を備えているのが一般的であるが、金属製の物理武具に特化したものも存在する。
槍状のものについてはスタッフの代わりに用いる者が一定数いる。刺突武具を好む者は比較的少数だが、著名な人物としては『アルフレッド・トワイライト卿』の名が挙げられよう。
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アルフレッド・トワイライト卿愛用の槍。星の力を秘めているとされる高等法具。
しゅうがく【終学】
アカデミーにおける最高位の位階。マスター。既述の通り、学術位階としては更に、オン・マスター、ハイ・マスター、アーク・マスターに分類される。
『魔術と魔法をめぐる神秘に関する論文試験と口頭試問』を突破した上で、かつその論文がアカデミー最高評議会の査読を経て魔法学の最高権威である学術誌『ウィザードリィ・アンド・マジック』に掲載されなければ到達できない狭き門である。
魔法社会における権威の象徴であり、公に『神秘のティアラ』を身に付けることが許された唯一の位階であるが、実際には、経済力と政治力によってその位階を「買う」ことは不可能ではない。論文の掲載についても、最高評議会の評議員がしばしば買収に応じることは公然の秘密である。大抵の者が能力の不足を『神秘のティアラ』による能力拡張で補充しており、高官の中でも、実力で高位の『裏口の魔法使い』と対峙できる者は実はそれほど多くない。
アカデミーのこうした金権体制は大いに問題となっており、改革を望む声も多いのが実態である。
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しゅうだんこうげきまほう【集団攻撃魔法】
広範囲に攻撃効果を及ぼすことのできる集団戦闘の要となる術式。これを使える味方がいるかどうかは死活問題である。才能に恵まれたソーサラーは早い段階から実戦的な集団攻撃魔法を行使できるため重宝されるが、その主な属性が水と氷であることからアンデッドへの効果が薄い点が懸念される。他方、アンデッドに効果的な火と光の術式を行使できるウィザードは集団攻撃魔法の修得が遅いため、その間隙をなんとか架橋できないか、術式開発学の分野において盛んに議論されている。
集団は、次のように定義される。
・小規模 数名~十数名程度
・中規模 数十人~百人程度
・大規模 数百人~数千人の軍隊規模
・全領域 その場にいる全ての味方あるいは敵方
・全領域無差別 詠唱者を除くその場に存在するすべての者
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じゅくれん【熟練】
中等位階に属し、アカデミーの中等部に当たる。アデプト。実践的な効果を持つ魔術・魔法を行使できるようになる。また、この位階に到達することで『ローブ』の着用が許可され、公私ともに一人前ということになる。ギルドの仕事についてもアルバイトだけでなく、パートタイムやフルタイムの仕事を受けられるようになり、アカデミーの治安維持部隊にも志願できるようになる。また特に優れた者は『漆黒の渡鴉』のスカウトを受けることもある。
多くの者が『中等術式』を行使するが、『高等術式』まで身に付ける者も少なくなく、戦力としては充実してくる。
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『ローブ』をまとい、『増魔のリボン』を身に付けている。
じゅつぐ【術具】
魔術的な方法により錬成された物品。魔術を強化するものが『術具』であるというのは誤解であり、魔法的特性を拡張する『術具』は多数存在する。ありとあらゆる物品が市場に出回っている。術士や魔法使いのためのものだけでなく、魔法市民の生活に深く根差すものも多い。
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世界の様子を静的または動的に画像または映像として魔術的に記録することのできる一般術具。
じゅつし【術士】
錬金術と自然科学に精通し、魔術を行使する詠唱者。四大天使の加護の下にないため、その力は人間の領域に限界づけられ、魔と神秘の力の発動である魔法を行使することはできない。こういうと術士は魔法使いに劣るような印象を受けるかもしれないが、それは誤解である。術士は『錬金銃砲』を始めとする物理武具や魔術的武具の取り扱いに優れ、また魔術は魔法に比べると圧倒的に魔力の消費量が少ないため(魔術の行使にも魔力は必要である)、継戦能力が魔法使いに比べて圧倒的に高いという際立つ特徴がある。
錬金術師手としても高い能力を持っているため、自然科学の知識と併せて、その場で回復薬を調合することができるなど、実践の場面で非常に役立つ存在である。術士と魔法使いは優劣の関係というより、魔法社会における様々な役割を能力の応じて適切に分担する関係にある。
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多くの術士は高位になるほど、差別化の意味で『ローブ』を身に付けなくなる。『ローブ』がない方が物理武具を振るいやすいという実質的な効果もあるようだ。
じゅつしき【術式】
魔術や魔法の効果を引き出すための一種の儀式。具体的には呪文詠唱や手の動きなどの様式を指す。簡単な魔術や魔法の効果は呪文だけで引き出すことができる(つまり、手も道具も必要としない)が、高度なものになるほど、呪文の詠唱と共に高度な術式を行使する必要がある。武具は、この術式を行使するときの力の媒体を果たすもので、呪文を詠唱しながら武具を特定の順序で動かす、構えるなどの所作を執ることによって魔術・魔法の力を実際に引き出すことができる。
術式が必要なのは、天使に対する信仰において、祈る際の所作の名残であるとされ、特定の力や特性を引き出すためには、それに対応した動きと所作を実行しなければならない。魔法学では、基礎的な要素を引き出せるようになった後は、この術式を学ぶことが主要な学習内容となる。
術式は魔法学の教科書である『魔法書』に記述されているが、その通りにやればだれでも魔術・魔法の力を引き出せるというものではなく、媒介する武具の対応や行使者に備わる魔力・魔法制御力が引き出すべき力の水準に合致していなければ、魔術・魔法としてその効果を引き出すことはできない。
つまり、魔法学の教練とは、知識の研鑽だけでは不十分で、魔力の拡張や、道具に関する造詣、身体・体躯の訓練など多岐に及ぶ。
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高度な術式になると手や武具の動かし方だけでなく、目の動きや視線なども関与する。
じゅつしきばいたい【術式媒体】
術式によって魔術的・魔法的な力を引き出すための媒体となるもので、第一には呪文の詠唱、第二には手指の動き、第三は対応武具の構えであり、その他に視線の移動などがある。
多くは、行使しようとする術式の等級に対応した武具を用い、その構えの所作によって魔術・魔法の力を引き出す。高度な『法石』などによって補強された武具を用いれば、『法石』に込められた魔術的特性が、術式の実行機能を代替してくれるため、所作を大幅に省いて力を引き出すことも可能になる。従って、どの武具がどの術式の力を最も効率的に引き出すことができるかに関する『術具』・『法具』の知識を身に付けることは、優れた術士・魔法使いとなるためにとても重要な学習過程である。ただやみくもに魔力だけを増強しても、よい詠唱者に慣れるわけではなく、適切な教練と知的研鑽の両輪を上手く機能させてはじめて本当の魔法力は身につくのである。
最近の錬金術の分野では、如何にこの術式の複雑な所作を、『術具』または『法具』に自動的に代替させるかという自動化の研究が盛んにおこなわれている。『魔術式拡張回路』などは、その研究の副産物の一つである。
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火と光の領域の力を効果的に引き出すことに特化した大剣型の法具。柄に嵌め込まれた『法石』と刀身に刻まれた高度な呪印が『術式』に必要な所作のほとんどを代替するため、詠唱者はその大剣を振るうだけで思うままに火と光の魔法の効果を引き出すことができる。
じゅつしのせいふく【術士の制服】
初等位階(心得と諸学徒)がアカデミー内で着用を義務付けられる、いわゆる制服である。術具ではなく一般の服飾品であるが、詠唱者の身体を適切に保護できるように、物理的な補強はされている。
ブラウス、コルセット、ミニのプリーツスカートで構成されており、色は各職能によって異なるが、基本的な機能は同じである。スカート丈が短くなければならないのは学則第8条第6節の規定に基づくもので、これに違反すると3か月の停学という違反事実に不釣り合いに思い罰則を科せられるため、皆しぶしぶ従っている。
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一般的な学生服のデザインと似ているが、コルセットは見た目以上に丈夫である。初学徒の術士・魔法使いがギルドのアルバイトに参加するときには貴重な防具となる。
じゅんけつまどうし【純血魔導士】
優れた魔道の血筋に連なる者が就く職能で才能と血統によって力を発揮する。ソーサラー。その力の源が血統にあるため混血を嫌うことからそのコミュニティは閉鎖的で排他的になりがちである。しかし、優れた錬金術の能力も持ち合わせており、優れた『術具』や『法具』のデザイナーも多く、経済的に富貴な者が少なくない。商売柄、社交的に振舞う者も一定数おり、社会と断絶しているというほどではないが、純血を守ることには厳しいため、ソーサラーと他の職能の者が婚姻することは極めてまれである。
幼くして成功する者が多い一方で、己の力を過信ししすぎるあまり、アカデミーやギルドから課せられた任務中に命を落とす者も多い。そうした者の遺体は、アカデミーが回収し手厚く荼毘に服してはくれるが、残された家族にとってその心痛は計り知れないものがある。
才能の人ならではの苦悩も抱える職能であるが、彼女たちが行使する大規模集団攻撃魔法は非常に心強い。四大天使のうち、力を奪い抑制するディスエンパワーメントの領域を支配するウリエルの加護を受ける。行使する得意魔法がアンデッドに弱いのだけが唯一の欠点。それゆえ最近では、ソーサラーでありながら、魔術師科にも籍を置いて火と光の魔術や魔法を学ぶ者が増えてきた。
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しょうかん【召喚】
冥界・自然界・魔界から霊体やその他の存在を現世に呼び出す術式。ガブリエルの支配下にあるエレメント。霊体の召喚を日常的に行うネクロマンサーにとっては必須の学習要素である他、高度な禁忌術式や究極術式にはこの能力を要求するものがある。
天界から天使や大天使を召喚する秘術もあると伝えられているが、伝承の域を出ない。少なくとも実際の行使者は今までに確認されていない。高位の者は魔界から竜や悪魔などを召喚して行使することもできるが、高レベルのものを行使するためには、詠唱者が相当の力量を有していなければ召喚した魔物に命を脅かされることにもなる。
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じょうたいへんかじゅつしき【状態変化術式】
対象に対してその状態に何らかの異変を引き起こすことを目的とする術式。時間停止(Time Stop)が最も有名な術式で、職能を問わず広く修得される。他にも、対象に毒を与えるもの、麻痺させるもの、石化させるもの、アンデッド化させるものなどさまざまであるが、アンデッド化の効果をもつ術式がもっとも対処に困るものとなろう。
『死を招く赤い霧』という呪わしい秘術がある。
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じょうとういかい【上等位階】
アカデミーが付与する位階のうち上等のもの。『終学(マスター)』が該当する。禁忌術式と究極術式へのアクセスが許されるほか、学術的に神秘へのアクセスと研究が可能になるのは既述の通り。
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しょうへきじゅつしき【障壁術式】
防御用の術式。各属性に応じた魔法障壁を詠唱者の周りに展開する。相反する属性の魔法効果と物理的干渉を緩和するが、同じ属性の魔法効果は貫通してしまう。大軍を相手にするときは必須の術式で、効果的に防御障壁を展開できることは戦術上の大きな意味を持つ。
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しょがくと【初学徒】
初等位階の後期課程に位置する位階。ノービス。魔術と魔法の一通りを修得し、『初等科中間試験』を突破した者に与えられる位階。この段階から、所属ギルドの仕事(アルバイト)を請け負う資格が与えられる。この段階ではまだまだお荷物ではあるが、小さな村の自警団などとしては重宝されることもある。
また、回復と治癒に優れるネクロマンサーには、『初学徒』の段階においてギルドからスカウトの声がかかる者もいる。更に、早熟のソーサラーはこの時点で集団攻撃魔法を実践的なレベルで行使し、立派な戦力となる者もいる。各人の能力の差が最も色濃くあらわれる時期でもあり、素質的に劣る努力の人のウィザードは、この時期人知れず苦悩することがある。
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しょとうかちゅうかんしけん『初等科中間試験』
アカデミー入学後初めての位階資格認定試験。これに合格すると『初学徒(ノービス)』の位階に進むことができる最初の関門である。真面目に勉学に励んでさえいればそれほど難しい内容ではないが、それでも落第する者は毎回一定数存在する。合格にはそれなりの真面目さと努力が必要。落第してもペナルティはなく、再び『心得(ルーキー)』として新学期を迎えるだけであるが、留年を度重ねるのも格好の良い話ではないため、自主退学して奇術師などになる者もいないではない。
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無準備で臨んで突破できるほど簡単ではないことがわかる。
しょうとういかい【初等位階】
アカデミー入学後最初に在籍する位階で、『心得(ルーキー)』と『初学徒(ノービス)』の段階に分かれている。アカデミー準備園を卒園した後『初等科認定試験』の合格をもって初等位階に就くのが一般的だが、幼少期に家庭で英才教育を受け、準備園を経ずに試験だけを受けて進学してくる者も一定数いるのは既述の通り。
異国の基準で行けば、『心得(ルーキー)』は小学校の低学年、『初学徒(ノービス)』は小学校の高学年に概ね該当するが、アカデミーの在籍者の年齢幅はもっと広い。
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しょとうかこうきかてい【初等科後期課程】
『初等科前期課程』の学習過程を修了し、『初等科中間試験』に合格した者が進む位階。『初学徒(ノービス)』が所属する。ここで、基本的な魔術と魔法の知識と技能を習得し、実践的な力を養っていく。そして『魔術・魔法に関する一般教養試験』に合格すれば、次の『中等位階』へと駒を進めることができるようになる。
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しょとうかぜんきかてい【初等科前期課程】
『心得(ルーキー)』が所属する学習過程。ここでは主に、魔術・魔法の要素(熱や光など)を引き出すことを学ぶ。またまだ要素の発現が精いっぱいで発現した力を実践的に応用できる者は少ない。特に魔術師心得は要素の発現にもその制御にも苦労する者が多いようだ。
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しょとうじゅつしき【初等術式】
初等位階にある者が率先して学ぶ術式の群。非常に原始的で要素的なものから、実践的に使用可能なものまで幅広く存在している。特に回復術式の最も重要なものがこの等級に属するため、これをいち早く身に付けた者は、実践の場での活躍の可能性が与えられる。事実、回復術式を行使できるネクロマンサーで看護学部と掛け持ちする者は、アカデミーの慈善事業に参加し、その場で実際に回復行為にあたることもある。
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しりょうじゅつし【死霊術士】
ネクロマンサーのうち、魔法を行使できるものを『死霊術士』という。魔術だけを行使する者は『屍術士』。『屍術士』が実体を残すアンデッドのみを行使し得るのに対し、『死霊術士』は実体を持たない霊体を召喚し行使することができる。もちろん、実体をもつアンデットの生成と行使も可能。
この職を全うするには生命、すなわち生と死に対する深い理解と尊厳の念を醸成することが必要で、生だけでなく死に関する知識を用いる点が特筆べきことであろう。生をよりよく理解するためには死を理解できなければならないという着想に根差すものである。この極意に到達できない者は高位の死霊術式を行使することができず、攻撃、回復共に中途半端で頭打ちになることがある。
そうした不勉強の徒の中には禁忌に手を染めて邪悪な存在へとその身を堕とす者もいる。成否が非常にはっきりと分かれる職能でもある。
生命と霊性の均衡を司る大天使『ガブリエル』の加護の下にあり、看護学部と掛け持ちする者はその加護を二重に授かることができるため、非常に強力なネクロマンサーに成長することがある。
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攻撃術式、召喚術式、回復術式、治癒術式を巧みに操る。
しをまねくあかいきり【死を招く赤い霧】
人を捨てた人外の邪悪なネクロマンサーが行使する(その他の職能でもこの禁忌に触れていれば行使できる)究極禁忌の死霊術式。その効果は、場に存在する全ての生者を例外なくアンデッドに変え、思うままに使役するというおぞましいものである。
この術式の恐ろしいところは、敵味方無差別にアンデッド化することと、アンデッド化した存在は全て敵側の勢力に組み入れられる点で、戦術的なゲームチェンジャーとしての潜在性を秘めている。
本来、この術式に対抗するには『死霊の軍行』などの大規模アンデッド召喚術式を使って死霊の群れを呼び出し、それをぶつけることであるが、なぜかアカデミーは事態の深刻化を認識しながらも、人間の術士と魔法使いによる解決に注力しており犠牲になる者が後を絶たない。犠牲者はアカデミーにより手厚く葬られるが、その遺体が遺族に引き渡されることはないため、遺族からは不満の声が上がっている。
この術式を行使可能になるためには、『古代屍術の魔靴』を身に付けた上で、詠唱者の意志でその呪いを解き放つ必要がある。その儀式により、詠唱者の身は呪われ、人外の『リッチ(最高死霊)』となり、この絶対禁忌死霊術式にアクセスできるようになる。勿論、一方通行の儀式で不可逆である。『リッチ』から人間に戻る術はない。
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絶望を伴うおぞましく呪わしい光景が一面に広がっている。
じんいによるてんしのわ【人為による天使の輪】
魔法社会の秩序と倫理の根幹を揺るがすものであるとしてアカデミーが絶対の禁忌とする『法具』。魔法社会は天使への信仰を通して得られる神秘の力をその源としているため、人為によって天使を模倣することは信仰的禁忌に当たるとされ、それに抵触する『人為による天使の輪』の製造、販売、所持、使用のすべてが厳しく禁止されている。違反者は例がなく極刑に処される。ただ、表向きはそのような秩序と倫理の維持を理由とする禁止であるが、その実は、アカデミーの権威と権力の象徴である『神秘のティアラ』の力を軽々と超える大きな力を使用者に授ける、『人為の天使の輪』の潜在的な能力を恐れているだけのことであるとも言われている。
いずれにせよ、この禁忌に触れた者は、『漆黒の渡鴉』に追われることになり、大抵は秘密裏に葬られる。
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じんいのほうせき【人為の宝石】
天然の『法石』に代わるものとして錬金術と魔術・魔法を駆使して錬成された人工の『法石』。単に『為石』ともいう。『法石』は自然界に存在する魔の高密度の結晶であり、極めて優れた魔法特性を発揮するが、その存在は希少であるため、『術具』や『法具』に大量に用いるということは容易でなく、極めて高価なオートクチュール品にのみ搭載されていた。
この状況を一変させたのが、『ハルトマン・マギックス』の経営者『カリーナ・ハルトマン』であり、彼女はその卓越した錬金術と魔法力により、人工的に『法石ルビー』を錬成することに成功した。その『為石ルビー』は、魔法特性の大きさこそ『真石ルビー』には劣るものの、十分すぎる性能を発揮するもので、しかも量産が容易で、安価に優れた『術具』や『法具』の生産を可能にすることから、大きな技術的ブレイクスルーを引き起こした。
『人為のルビー』の開発成功を皮切りに、堰を切ったように次々と新しい『人為の宝石』の開発が成功し、天然の『法石』を模したものだけではなく、『エバンデスの涙』や『グランデ・アクオス』など、錬金術オリジナルの『為石』も錬成されるようになりって魔法社会に広く普及している。
今では『法石』というと天然の『真石』ではなく『為石』を指すのが一般的になるほどの勢いである。
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『神秘のティアラ』にもふんだんに用いられている。
しんぴのくも【神秘の雲】
魔法社会全体に張り巡らされた、魔術式通信網のこと。最近では古典的な『魔術式電磁通信処理組織』を用いて利用するほか、通信機能付きの『携帯式光学魔術記録装置』でもこの通信網を利用することができるようになり、物品の個人売買から、遠隔における個人的連絡の手段、趣味を同じくする者たちの仮想現実的なサークルの形成、ギルドからの情報収集や求人への応募など、あらゆることがこの魔術式通信網を介して行われるようになりつつある。
ただ、この通信網上で拡散さえる情報はそのすべてが真実であるわけではなく、いわゆる偽情報も少なくないため、情報の真偽性を見分ける目を養うことが重要であると言われている。
また、出会いを目的としてこの魔術式通信網で無差別に連絡を呼びかけ、知り合った若い女性や幼い少女を現実に呼び出して猥褻を働くなどの事例も後を絶たず、アカデミーの初等科などにおいては、適切な魔術通信網の利用に関する基礎指導も過程に取り込むようになりつつある。利便と危険は常に隣り合わせであるが、対策が追い付かないほど急速に普及・発展している。
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現在ではすっかり魔法社会における最重要のインフラのひとつとなった。
しんぴのてぃあら【神秘のティアラ】
アカデミーにおける学問の大成と社会的な権威・権力の象徴。これを公に身に付けることは、魔法社会において優れた能力とステータスをを有していることを対外的に示すことを意味する。多分に示威的な性格を持つため、不正にこれを手に入れようとする者は後を絶たず、闇取引が社会問題ともなっている。
さまざまの『法石』で彩られたそれは、着装者の魔法的能力を著しく拡張するが、アカデミーで十分な教練を積まず、本物の実力を身に付けていなかったとしても、その能力の不足をこの『神秘のティアラ』によって補い取り繕うことができてしまうという問題も孕んでいる。いわゆる空威張りの状態であり、そうした者はティアラがなければ満足な魔法力を発揮することができず、肝心の場面で馬脚を現すこともしばしばである。故に社会的には、確実な任務遂行能力を持つ『裏口の魔法使い』が求められるのであり、魔法社会の権力構造の根本的問題を浮き彫りにしている。
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すかーとたけ【スカート丈】
風紀に関する理事会の特別高等顧問であるパンツェ・ロッティ教授の強いこだわりが見える要素。学則第8条第6節では「スカートはできるだけ短くなければならない」とされており、その違反に対する罰則は停学3か月と不釣り合いに重い。
真面目な学生はこの学則を律儀に守るが、様々な事故がおこるようで、女学徒からははなはだ不人気である。ただ、パンツェ・ロッティはアカデミーの最高評議会にも出席を許される高等顧問であり、政府高官でもあるため、なかなか表立って彼に反論できる者は少なく、なし崩し的にそのスカート丈は通用している。唯一、キューラリオン・エバンデスだけは女学徒の権利と安全の側面から抵抗の意を示しており、彼女がデザインする『アンダードレス』のスカートには長いものが多い。不思議なのは、彼女が手掛けるブランドの製品のスカート丈についてだけは、パンツェ・ロッティ教授が異を唱えずに沈黙を守っていることである。ふたりの間にかつて何かあったのであろうか?
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これを偶然に目撃した男子学徒はその夜眠れないという。青春である。
す行
すかうと【スカウト】
アカデミーでの学業成績が優秀な学徒にはギルドからスカウトがかかることがある。特に、優れた回復術式や治癒術式を身に付けたネクロマンサーには初等部の頃からスカウトがかかることも少なくない。
また、中等部以上の学徒については、その者がアカデミーに忠実である場合には、治安維持部隊や『漆黒の渡鴉』への勧誘が行われることもある。アカデミーの学徒の多くがギルドの仕事を請け負い金を得ることで生計を立てているので、スカウトがかかることは、彼女たちにとっては非常に望ましいことである。
ただし、学徒たちが唯一恐れるスカウトがあり、それはアカデミー最高評議会から下される『禁忌術式』の使用命令である。これは『禁忌術式』の性質上、たった一人で過酷な場に赴かなければならないことを意味しており、『死刑宣告』とも呼ばれている。事実、犠牲になる者が多い。
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すかっちぇどおりみなみしがいくのさんげき【スカッチェ通り南市街区の惨劇】
かつて高等部在籍時にアカデミーの禁測に触れ、不正に禁忌術式と究極術式にアクセスしたウォーロックがいた。彼女は、アカデミー図書館の展示ブースからあるものを盗み出し、アカデミー当局に『裏口の魔法使い』として追われることになる。
当初は、アカデミー所属治安部隊が追跡に当たったが彼女の卓越した魔法技能の前になすすべなく、業を煮やした当局はついに『漆黒の渡鴉』を放つことになった。部隊はスカッチェ大橋を超え、スカッチェ通りまでそのウォーロックを追い詰めることに成功したが、その刹那、ウォーロックの放つ究極術式によって遺体すら残すことなく焼き尽くされたという。
この惨劇は、その発生場所から『スカッチェ通り南市街区の惨劇』とよばれることとなった。対面を大きく損なったアカデミーは復讐に燃えているが、不思議なことは、そのときアカデミーから盗まれた物が何であったかをアカデミーが公表しないことである。図書館の展示室には確かに希少な『真石』などはあるが、被害の公表を控えるようなものはなかったはずである。
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ひとしきりの破壊の後、そこにはウォーロックただ一人が佇んでいた。その有様は凄惨で、追っ手の『漆黒の渡鴉』はその遺体すら遺らなかったそうである。
せ行
せいぎょ【制御】
魔力や魔法的要素をコントロールする力のこと。これを身に付けないと、魔力が暴走して詠唱者自身が損害を被ったり、魔術的要素を望む形に形成するのを損なったり(例えば、炎を火の玉の形にできないなど)するため、魔法力の出力調整と並んで術士・魔法使いにとっては最優先で身に付けるべき事項である。
制御力が増すと、魔法力の出力、輻輳の数を自在に調整できるようになり、結果として消費魔力量をコントロールできるようになって、継戦能力を自己管理できるようになる。
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せいぎょのまぼう【制御の魔帽】
魔術や魔法の発現は、詠唱者の精神状態に大きく依存する。そのため、『制御』力が未熟な者は感情の激昂や恐怖の高まりによって魔法力の『制御』を失ってしまうことが多々ある。しかしそれは、魔力の暴走としてだけではなく、魔法力の逆流として詠唱者の精神汚染にもつながるため、保護を考える必要がある。そのためにアカデミーが用意したのが『制御の魔帽』である。これは、着装者の精神状態を安定させ、破壊や恐怖の衝動を抑えて魔力の行使を安定させるもので、『制御』力が未熟な者を様々の魔術的・魔法的副作用から防護する役割を果たしている。
初等の位階の者は着装が強く推奨され、特に遺伝的に高い魔力を受け継いでいるソーサラーはその着装が義務付けられる。飛び級して中等に至った場合でも、13歳未満のソーサラーはこれを身に付けなければならない。
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せいたい【生体】
人間をはじめとするさまざまな動植物を含む生命体のこと。対概念はアンデッドである。生体は生と死の枠の中で生活を営むが、死から解放されたアンデッドはある意味では永遠の存在でもある。しかし、死により精神的・霊的な自己制御機能を失っているため(自我を残した高度な霊的存在もいる)、自由な活動はできず何者かによる使役を必要とする。詠唱者による制御からも離れたアンデッドは『彷徨える屍』としての動物的本能のままに生者を無差別に襲う存在になる。
アンデッドを社会的にどう処遇するかは魔法社会における重大な課題となっており、ネクロマンサーを中心に、活発に議論が進んでいるがまだまだ答えは見えていない。しかし、『リッチー・クイーン』の登場により、その対策は急を要する局面に至った。
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魔法学の教科書より。
せいふくけんとういいんかい【制服検討委員会】
『パンツェ・ロッティ』教授を高等顧問とするアカデミーにおける制服の機能とデザインを検討する委員会。定期的に開催され、制服に関する意匠およびその運用を巡る規則を見直す。
『パンツェ・ロッティ』が顧問となってから、制服のスカート丈は短くなる一方で女学徒や女性教職員からは不満の声が上がり続けているが、当の『パンツェ・ロッティ』はどこ吹く風である。
次回の『制服検討委員会』では『ラヴィ・ムーン』ブランドの服飾が導入されるのではとのもっぱらの噂である。
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『パンツェ・ロッティ』はこういうのが好みのようである。
ぜったいきんきじゅつしき【絶対禁忌術式】
場において、壊滅的で絶望的な影響をもたらすとされる脅威の術式。それはもはや魔法の神秘を超えて奇跡の段階に到達しつつあるとさえ言われる。現世で知られているものは、時間と空間の神秘を極めたウォーロックが行使するとされる『時則崩壊』と、古代の屍術の禁忌を犯した魔法使いが行使する『死を呼ぶ赤い霧』の2つだけである。
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時空に割れ目をつくりだし、空と大地のすべてを空間ごと消し去る奇跡の奥義。
ぜったいきんきほうぐ【絶対禁忌法具】
これに指定されているのは『人為による天使の輪』ただ一つである。製造、販売、所持、使用のすべてが禁止されており、既述の通り違反は極刑をもって遇される。
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一説には、路地裏の法具屋『アーカム』にはこれの専門コーナーがあるそうだ。
せりあん・あーとめいゔ【セリアン・アートメイヴ】
詠唱者たちの美麗な挿絵・魔術記録を生み出す高名な挿絵画家。その手が織り成す挿絵、魔術記録ともに実に美しく、見る者を魅了してやまない。
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ぞうま【増魔】
1 魔力量の増強
『術具』や『法具』によって詠唱者が備える『魔力量』を増強すること。『魔力量』の器はある程度先天的な要因によって決まるが、『術具』や『法具』によってある程度拡張することができる。特に『エメラルド』系の『真石』や『為石』をほどこしたものにその効果が大きい。
ただ、『禁忌術式』や『究極術式』には「詠唱者の残存魔力の何割」というような割合消費となる術式も多いため(その分威力と効果範囲は広大にはなるが)、『増魔』の効果が限定的になる場面というのもある。
2 魔法威力の強化
『増魔』には魔法威力を強化する、という意味もある。魔法威力は、基本的には各術式により固定的なものであり、これに魔法力の大きさと要素の数を積算することによって最終的な『魔法出力』が算出されるが、この「かけられる数」にあたる魔法威力を強化することをいう。魔力増強と同じ名辞が使われるため混乱を招きやすいことから、魔法学の現場では、『魔力増強』、『魔法威力強化』と厳密に表現することが多い。
著名なブランドでは、『増魔』と記す場合でもどちらのことを指しているのかわかるような商品説明を用意していることが殆どであるが、怪しげな裏ブランドでは、敢えて購入者が誤解するような言い回しをしていることも少なくないため注意が必要である。『魔力増強』のつもりで『魔法威力強化』をしてしまうと、むしろ消費魔力量が増えてしまうという不測の事態を招くことになる。
アカデミーや政府当局は正確な製品説明の義務化に動き出してはいるが、まだまだ市場には怪しげな商品が多く出回っている。
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『増魔の魔靴』は主に1の意味での『魔力増強』に貢献する。
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『増魔のリボン』は一般的には2の意味の『魔法威力強化』に貢献する。
ぞうまのまくつ【増魔の魔靴】
『増魔』の効果を着用者にもたらす靴。こちらの『増魔』は『魔力増強』の意味である場合が多い。体積的に多くの『法石』を配置する余地があるため、『エメラルド』系の『法石』を数多く備えたものはかなりの『魔力増強』力を発揮する。魔力枯渇は生死に直結するため、自分が得意とする術式の魔力消費量とよく相談して慎重に選ぶ必要がある。
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『グランデ・トワイライト』製の人気商品。魔力増強力は非常に大きい。
ぞうまのりぼん【増魔のリボン】
同じく『増魔』の効果を着装者に与えるリボン。ややこしいがこちらの『増魔』は一般的に『魔法威力強化』を意味している。ただ、『エメラルド』系の『法石』をあしらったものには『魔力増強』の効果もあるため、アカデミーおよび政府は、消費者に誤解を与えない商品説明の表記ガイドラインの策定に向けて動き出している。きちんとしたブランでは、単に『増魔』とだけせず、説明欄において『魔力増強』とか『魔法力強化』と別途記述するようにしているようだ。
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こういった特殊なものには『増魔』の両方の効果がある。
た行
たいあんでっどこうか【対アンデッドこうか】
実体を残すアンデッドは精神的・霊的な自己制御能力をすでに失っているため痛覚が機能していない。そのためこちらの攻撃にひるむことなく力任せに襲い掛かってくる。また、霊的アンデッドは実体がないため物理的に害することが一般に困難である。
そのためにアンデッドと対峙するためには、特別な効果を武具に与える必要がある。その魔術的・魔法的拡張を『対アンデッド効果』という。アンデッドは火と光、閃光と雷の領域には弱いため、これらの領域の属性で拡張した武具が優れた『対アンデッド効果』を発揮する。
ただし、魔法的に武具の属性領域を拡張するには魔力消費を伴うため、『法石』や『錬金金属』によって武具それ自体に『対アンデッド効果』を賦与する研究が最近の錬金学のトレンドであるとともに喫緊の課題となっている。『魔法銀』や『炎鉄』など、いくつかの効果的素材が開発されつつあるが、前者はその効果が限定的である、後者は量産が難しいなど、まだまだ多くの課題が残されている。しかしアンデッドの脅威は魔法社会の目前に迫っている。
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アンデッドに一定の効果がある『魔法銀』で作られた『法弾』。実体を残すアンデッドにはそこそこの効果があるが、霊体にはほとんど効果がない。また、スケルトン相手には命中させるのが難しい。
たいれいぶぐ【対霊武具】
『対アンデッド効果』に特化して調整された武具のこと。『スペクター・ソード』が最も有名であるが、それ以外にもいくつか存在する。また、火と光の『術具』や『法具』である武具は大概にして優れた『対アンデッド効果』を有している。『炎鉄』の量産の難しさを『為石のルビー』の応用によって賄えないか、研究が続いている。
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アンデッドの大規模な集団から市民を防衛する任に当たる魔法使いに制式支給される炎の刀剣。刀身には貴重な『炎鉄』が使用されており、高い『対霊効果』を発揮する優れた『対霊武具』である。火と光の領域の術式媒体しても高性能であるが、数の確保が課題となっている。
だげきぶぐ【打撃武具】
物理的に相手を殴打することによって損害を与える原始的な武具。杖やワンドの他に鎚がこれに当たる。初等の術士・魔法使いを中心に基本的にはワンドかスタッフ(杖)で武装するため、学徒の多くは、白兵戦の仕方についてこの打撃武具の取り扱い方法から学ぶことになる。
ワンドは物理武具としてはしょせん小型金属の棒きれであるため、その効果にはとても期待できるものではないが、先端を重くしたスタッフによる殴打はそれなりの威力を発揮する。とりわけ、斬撃武具の効きづらい、全身をプレートアーマーで覆った北方騎士団の兵士に対しては、剣よりも『打撃武具』の方が効果が高い場合がある。また、実体を残すアンデッドの頭部を叩き潰すことができるため、物理的な意味で一定の対アンデッド効果があるといえるかもしれない。
鎚の中には、『アクア・ハンマー』や『アイシクル・デストロイヤー』など、物理武具としても術式媒体としても優れるものが揃っている。
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巨大な氷塊でできた破壊力の高い魔法鎚。キュリオス骨董堂の人気商品。
だりあん・すりすうぃすぱー【ダリアン・スリスウィスパー】
『AIと紡ぐ現代架空魔術目録』三部作とその諸外典を書き上げた魔法使い。セリアン・アートメイヴと親交がある。
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セリアン・アートメイヴの手による。
たんけん【短剣】
刺突武具と斬撃武具の両方の特性を備える武具。投擲武具としても用いることができる。物理武具としてだけでなく術式媒体として機能するものが多い。アカデミーの学徒は『熟練(アデプト)』の位階までの者は武具・術式媒体としてワンドやスタッフを好む傾向にあるが、『権威(エキスパート)』の位階に進んだ段階で、短剣や剣といったより実戦的な武具を得物にするようになる。
『短剣』は女性の術士や魔法使いでも扱いやすいため特に好まれている。『対霊武具』が多いのもその特徴のひとつ。
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優れた『対霊武具』のひとつ。ネクロマンサーが好む。
たんたいこうげきまほう【単体攻撃魔法】
魔法効果の対象が単体に限られる攻撃魔法。効果範囲が局限される分、攻撃力は一般的に高い。ウィザードが得意とする。ウィザードが行使する火と光の領域に属する単体攻撃魔法の『対アンデッド効果』は優れたもので、大変に心強いが、アンデッドが基本的には大軍であるのに対し、その効果範囲は一般的に狭いというジレンマがある。
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ちゅうとういかい【中等位階】
実践的な力を発揮できるようになる位階。『熟練(アドプト)』と『権威(エキスパート)』の2つがある。中等とは表現されるが、これは上等位階がアカデミーの指導的地位であることを強調するためのレトリックであり、術士・魔法使いとしての能力は既に完成の域にある。実践的な『中等術式』、実戦的な『高等術式』をプロフェッショナルに行使する術士や魔法使いは魔法社会の頼れる存在である。能力的には、禁忌術式や究極術式を行使できるだけのものを備えた者も多いが、アカデミーの特別の許可なくこれらの禁測に触れることはアカデミーに対する裏切り行為とみなされる。最悪の場合は『漆黒の渡鴉』と共喰いを演じねばならなくなることから、高い倫理観と克己心が求められる位階でもある。優れた自己管理ができてこそ、優れた詠唱者である、ということなのだろう。
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ちゅうとうじゅつしき【中等術式】
実践的な効果を備えた魔術・魔法が揃う術式の等級。これを行使できるようになれば一人前である。アカデミーやギルドからの仕事をよくこなせるようになり、『中等術式』を身に付けたあたりから、将来の『神秘のティアラ』購入のための貯金を本格的に始める者が多い。ただ、魔力消費量の多い術式が増えるため、不慣れな状態で場に出ると思わぬ魔力枯渇に見舞われることがあることから、最初のうちは経験者と共に職務に当たるのが安全である。
防御術式や特殊効果術式の数多く充実している。
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唯一魔力枯渇にのみ注意を要する。
ちゅうとうぶ【中等部】
中等位階のうち『熟練(アデプト)』の位階にある者を指す語。修了するまでにだいたい3年程度かかる。十代半ばの者が多く、教室は一般に華やかである。アカデミーやギルドの仕事をある程度本格的に引き受けることができるようになるため、生活的な余裕が出来始める。また、将来の進路について思案する時期でもあり、魔術師・魔法使いの職能を高めることに専念する者、錬金術を磨いて実業家になることを目指す者など様々である。将来を基礎づける非常に重要な時期であると言えよう。
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つえ【杖】
この魔法社会で最も一般的な術式媒体であり打撃武具である。特に術式媒体として優れ、対応領域にある魔術や魔法の術式特性をよく引き出すことができる。また、打撃武具としてもワンドよりは実用的で、撤退時の護身くらいには十分な効果を発揮する。
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て行
でぃすえんぱわーめんと【ディスエンパワーメント】
ウリエルの支配下にあり、対象から力を奪い抑制する領域。具体的には水や氷のエレメントが該当する。ミカエルの支配するエンパワーメントの領域と対を成すもので、ソーサラーがとりわけ得意とする。
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中央から力が周囲に拡散し、その力を抑制的に弱める様が表現されている。
てんい【天位】
天界の神秘に触れて人を捨てた魔法使いだけがたどり着くことができるとされる究極の位階。その者は天使の輪をたたえ天使の翼を広げるようになるといわれる。また、天界の神秘に直接アクセスして、奇跡的な魔法術式を引き出すことができるようになるとされている。
その位階に至るための方法自体が隠された神秘であり、一般には全く知られていない。一説には天使の力を直接的な方法でその体内に取り込むのだというが、何をどのようにして取り込むのかすべては神秘のヴェールの奥にある。しかし、当代の魔法使いでこの位階に到達した者が4人確認されている。
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てんし【天使】
魔法世界における信仰の対象。魔を紡ぎ人間社会に伝え与える存在として描かれる。特に著名なのが直截な信仰対象である四大天使(熾天使)で、アカデミーに在籍する詠唱者たちは自身の専攻科を司る大天使と信仰的な契約を交わしてその加護を得る。
天使の姿はアカデミーの聖堂のステンドグラスや聖画などさまざまな場面に描かれているが、その多くはキューピッドとしての姿であり、本当の姿はほとんど知られていない。神秘を通して奇跡を発現する魔を直接支配する存在である。
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てんしのたまご【天使の卵】
これを「飲む」ことによって『天位』の位階を授かることができるとされる神秘の秘宝。しかし、どう「飲む」のか、どこにあるのか、そもそも実在する存在なのか、何もかもが知られていない。ただ、神話や伝承は豊富で、例えば、それはあらゆる傷を癒し病魔を退散させる秘薬の隠語であるなどととも伝えられている。アカデミーがその慈善事業を通して孤児に与えている『天使の秘薬』はこの伝承を下敷きにしている。
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たしかに、これをどう「飲む」のかは一見しただけではわからない。
てんしのはね【天使の羽】
天使が携えている羽だが、一説には『天位』の位階に到達した魔法使いにも生えるとされている神秘の外形的な表象のひとつ。『人為による天使の輪』と本物の『エンゼル・ハイロゥ』との違いは、この天使の羽の有無で分かるとされているが、真偽は不明である。
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てんしのひやく【天使の秘薬】
慈善事業団体としての顔ももつアカデミーは、災害・戦災孤児を暖かく迎え入れて、養育と教育を施している。魔法社会は北方騎士団との領土の問題と、国内に出没するアンデッド軍団との対峙という二方面の安全保障上の課題を抱えており、災害・戦災孤児が次々に生まれている。アカデミーはその問題に対処すべく、慈善事業を幅広く展開し、主に看護学部の実務によってそれを全うしている。
その過程でアカデミーが孤児の健康回復のために与えるのがこの『天使の秘薬』である。アカデミーの説明ではバランスに優れた栄養補給機能と、怪我の回復能力、更に疾病の治癒と予防機能を備えた錬金薬ということであるが、なぜ、『エリクサー』や『万能薬』ではなく『天使の秘薬』である必要があるのかという疑問の声もないではない。
孤児の中にはこの薬の投薬を受けたにもかかわらず命を落とす者もいるが、多くは健康を回復し、優秀なアカデミーの学徒となる。アカデミーは孤児たちの成長を陰ひなたになって見守り、ギルドへの職の斡旋等、彼女たち身が立つように継続的なケアを続けている。
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アカデミーは惜しむでもなくこの秘薬を孤児たちに与えている。
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錬金術により生成される秘薬。回復と治癒であればこれで十分な筈だが、なぜ『天使の秘薬』なのか疑問視する声もある。アカデミーは「疾病の予防効果」を挙げてその必要性と効果を説明している。
とくしゅいかい【特殊位階】
アカデミーが付与するのではない特別の位階のこと。知られているのは『天位』と『最高死霊』の2つであり、いずれも人間を捨てることによってのみ到達可能な呪われた位階である。
特に『天位』の位階に至る方法は絶対の神秘であり、さまざまな神話伝承はあるにしても、具体的にその方法は知られていない。他方、『最高死霊』に至る方法は在る意味簡単で、『古代屍術の魔靴』を身に付けた上で『法具』として使用し、その呪いを解き放つだけでよい。ただし、使用者自らアンデッドに変じなければならない。
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どろっぷあうと【ドロップアウト】
アカデミーの教育課程を途中で投げ出し、退学すること。大概にしてドロップアウト者の力は未熟であるため、十分な職能を社会で発揮することができず厳しい生活を強いられる。多くが奇術師などとしてその日暮らしの仕事を得る(きちんと訓練を積んだ奇術師は大きな舞台で活躍できるが、ドロップアウト者はその付き人やアシスタントを担う)か、或いは盗賊の護衛などに身を沈めることになる。力が大きくないため『裏口の魔法使い』としての脅威はさほど大きくないが、社会不安定に繋がる上、個人の幸福にも反するため、特に政府は救済策を検討しており、アカデミーにリスキリングのための過程を新設するように申し入れている。
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な行
のらまじゅつし【野良魔術師】
アカデミーの学習過程を途中でドロップアウトした者、とりわけ若い魔術師(ウィザード)の総称。ウィザードはソーサラーなどと比べて先天的な素質の点では劣る部分が多々あるため、特に学年が低くその力の差を大きく見せつけられる時、人知れず苦悩することがある。その心理的重圧に耐えられず、過程をドロップアウトしてアカデミーを退学し、野良魔術師となる者が多いことは、一つの教育問題となっている。
アカデミーも、初等時における先天的な能力の差を埋める工夫を様々に凝らしているが、心理の問題でもあるだけになかなか有効な手立てが講じられていないのも事実である。
彼女たちの生活をどのようにして支え、安定した職能・技能を身に付ける機会を再度提供できるか、魔法社会全体で考える時期が来ているようである。
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