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花手帖|#140字小説

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2018年12月の記事一覧

191-200|#140字小説

191 / 2018.11.27
温めたぎゅうにゅうは膜が張って、剥がせば真っ新の水面がひとつ。この膜、たんぱく質なんだって。へえ、じゃあおれそれでよかったのに。「人間より、感情があるたんぱく質の塊より全然いい」軽率なきみは服を脱いで、陶器のような素肌を生み出す。どんな物質でもよかった。不服だけれど、きみならば。

192 / 2018.11.29
数学のプリントに唸るきみ。「わからないの?」「も

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181-190|#140字小説

181 / 2018.11.09
あなたが死んだ後を空想する癖があった。ひとりのままの私、ひとりではない私、いろんな場合を考えて、どれもやはりかなしかった。遅起きなひとが挨拶をしながら私を抱きしめる。どうして生きているの。そう言えば「ごめんね」と笑われる。あなたがいる、まぼろしのような当然に、ぎゅ、と目が眩んだ。

182 / 2018.11.11
きみが死んだら花となって、隣で咲ってあげる。戯言

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171-180|#140字小説

171 / 2018.11.02
蛇口が錆びていた。転がっていたタワシで擦ってみても、随分と銀色に執着をしているよう。こうばしい香りに振り向けば、珈琲を持ったきみが「きたない」と私を咎める。そのカップだって茶渋がついていたけれど。呑み込んだ言葉は鉄のにおいがした。錆び付いている、ここもかしこも、私も、きみだって。

172 / 2018.11.02
水平線を眺めた。となりの、横顔のまつげが海面に消

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161-170|#140字小説

161 / 2018.10.24
すぐに絶望するあなたが好きだった。怖い、とふるえるあなたを抱きしめて、か弱い背中を撫でる。濡れる肩筋に唱えたのは白骨化した魔法の呪文。「私がいつか終わらせてあげるからね」泣き声は夜をふやかした。あなたの劣性がいとしい。けれど忘れないで、本当は私があなたにころされたかったってこと。

162 / 2018.10.24
遠くの惑星ですらここにいるよとひかるのに、私たち

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151-160|#140字小説

151 / 2018.10.13
合わせた手のひらは骨みたいだった。力無いそれは、しまいにぼくの太腿に落ちる。「おれたちはどっちつかずだな」あなたの勝手な言葉はぼくを、そしてあなたをも濡らす。ふたりで泣くものだから、滴の音の区別がつかなくなる。このまますべて絞られて、愛、なんて、あやしいものだけで繋がりたかった。

152 / 2018.10.15
ふるえる銀色の鋭角。きみは汚らしく顔を濡らして、

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141-150|#140字小説

141 / 2018.10.03
元恋人に置き去りにされたCDのやり場を考えあぐねた。「この曲、あなたみたい」彼は私にそう言って、けれど、決して私に聴かせようとはしなかった。どんな曲だろうか。うかれた指先で、再生ボタンに触れる。うんと幸せな曲がいい。それなのに。流れてきたものは、どうしたって悲しいラブソングだった。

142 / 2018.10.04
幸せにすると言ったくせに。檸檬の紅茶をおとこの

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