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パンチライン百科事典 p.27 -Tear Gas-

 『God Don't Make Mistakes』、それは先日Conway the Machineがリリースした既にマスターピースとの呼び声も高いアルバムです。そんな私も、本作品をマスターピースだと信じて止まない人間の一人であり、数日前に解説動画をYouTubeに投稿しました。動画内では、時間の関係でConwayのラップ以外の部分についてはほとんど触れられなかったのですが、実はこの作品、客演アーティストが凄く良い仕事をしているアルバムでもあります。Beanie SigelLil WayneT.I.Jill Scottなど、名だたるメンバーが参加し、各々Conwayのバイブスに合わせた素晴らしいラップを披露しています。今回は、その中でも特に私が気に入っている、フロリダのボス、Rick Rossのラインを1つ紹介したいと思います。


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Rick Ross - Tear Gas 3:46〜

I keep the guns and the drugs(drums?) just for the paranoia
勘ぐりのために銃とドラッグ(ドラム?)を持っておく
3:46〜

 「Paranoia(パラノイア)」とは、過度に不安や恐怖を感じたり、被害妄想をしてしまうような精神状態のことを指します。いわゆる勘ぐりの状態ですね。恐らく、Rick Rossも過去の恐怖体験や、ドラッグ、酒、大麻の影響で考えすぎてしまう癖がついているのだと思います。そしてそんな彼が、パラノイアになった時の対処法として「銃とドラッグ(ドラム?)を持っておく」とラップしているのが今回のラインです。ただ一つ気になるのは…果たしてここでの彼は「Drugs(ドラッグ)」と言っているのでしょうか、それとも「Drums(ドラム)」と言っているのでしょうか。前半の「Guns(銃)」は確実に言ってますよね。恐らく、銃の携帯は身を守ることに直結するため、身の危険を感じるような恐怖から逃れられるんだと思います。ただ後半は何度聴いても、僕の力では正直どちらだとも断言することは出来ませんでした。この曲がリリースされてから数週間、僕の頭の中でこの疑問がずっと渦巻いており、夜も眠れない日々を過ごしてきたのですが、今回やっと自分の中で答えが出た気がします。それは、どちらでも良いということです。そんな馬鹿な、と思うかもしれませんが、これは捉え方によってはダブルミーニング的な表現になり得る面白いラインだと思います。
 もし彼が「Drugs(ドラッグ)」と言っていた場合、「精神安定剤で精神の起伏を抑えることで(もしくはなにも気にならなくなるくらいトリップすることで)気持ちが楽になる」という意味だと解釈できます。そして、仮に「Drums(ドラム)」だと言っていたとしても、「音楽をすること、ラップをすることで正気を保てる」という、God Don’t Make Mistakesの精神に通ずるような意味が浮かび上がって来ますよね。ラップをするには、ラップを乗せるビート、つまりドラムが必要なので。どちらであっても意味が綺麗に成立します。さらに、このドラッグもしくはドラムという選択肢は、実行は簡単だけど自分のためにならない選択もしくは実行は簡単ではないけれども自分のためになる選択という自身の精神の弱さ強さを象徴する表現だとも捉えることが出来ます。つまりこのラインは、苦悩や苦痛をラップで乗り越えるという点と、自身の弱さと向き合いながらも強気なラップをするという点の2つの観点から、God Don’t Make Mistakesと共振したRick Rossの渾身のラインなのではないでしょうか。


P.S. 正直に言うと、このラインは単純に聞き取りづらいだけで、ここまでの意図はないと思うのですが笑 ただ今回のような捉え方をすることでダブルミーニングが見えてくるとうのも、偶然性の芸術のような感じで楽しいなと思ったので、取り上げてみました。皆さんはこの歌詞どう思いますか?



written by じょん

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