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保護観察付執行猶予は仕方ないこと?

「仕方ないですね。」
と、公判中の方が口にした。

保護観察付執行猶予とは、刑の執行が猶予される期間中、保護観察が付される措置です(現行刑法25条の2第1項)。 保護観察とは、保護観察所のもとで、遵守事項を守るよう指導監督し、また、保護観察対象者に住居や仕事を確保させて、自立した生活を営めるように生活環境などについて援護をするものです。

覚醒剤の所持または使用の場合
どちらも10年以下の懲役で、罰金刑はありません

初犯であれば、懲役1年6月、執行猶予3年となることが多いです。

判例が多すぎて、司法福祉の界隈では「イチロクサン」で通じます。

執行猶予とは、「懲役1年半、執行猶予3年」という判決を受けた場合、刑の言い渡しを受けてから3年間罪を犯すことなく過ごせば、この刑の言い渡し自体が無効となって、1年半の懲役に行かなくても良くなるということです。3年経ったら収監されるわけじゃありませんからね!

覚醒剤の所持や使用を理由として、裁判を受けるのが2回目以降であれば、基本的に科せられる懲役刑の年数が増加していきます。

例えば、2回目は、懲役1年10月、3回目は、懲役2年、4回目は懲役2年6月といった具合で、2回目以降は、(再犯までの期間にもよりますが)全て実刑となるのが基本です。
もちろん、実刑以外の例外もあり、例外の場合は、必ずといっていいほど、保護観察付の執行猶予になります。

して、この、入り口にあたる保護観察付執行猶予

逮捕された方の弁護にあたる場合、
その、被告人の方が社会復帰しやすいよう、更生支援計画を作ることがあります。

だいたいの被告人は、目の前の裁判の量刑を軽くするため、最善を尽くします。
また、それを弁護するものも、その意思を尊重して協力します。

更生支援計画は、本人ありきのものですが、

量刑を軽くすることと、
更生になると思われる事柄は、
差が出てきます。

国内に初めて薬物依存症患者のための回復施設「ダルク」を創設した近藤恒夫さん、
彼は、初犯で逮捕されたとき、刑務所に入ることで「これで覚せい剤を辞められる」と、ほっとしたのですが、
裁判で執行猶予を言い渡されます。

近藤さん、自分の意志で覚せい剤をやめられない状態を理解していたのですね。

この、自分の意思ではどうにもならないかどうか
というのが、
更生を左右するものと思います。


私の友人に、お酒を飲んでは暴れる人がいます。

その方は、
「私はお酒をいつでも辞められる。実際、3日間飲んでいない」

そして、4日目には、
「あんなことあったから、今日は飲んでもいい日」

と、「酒飲み音頭」のような理由を持ち出し、泥酔します。

喫煙者の漫談でも、こんなネタがあります。

「タバコを辞めるなんて簡単だよ。
俺はもう100回はタバコをやめている。」

こういうネタを持つ方に

「依存症は病気です!」

といっても、否認されるでしょうね。


話を戻し、

保護観察付きの執行猶予を得たら、
中間施設と呼ばれる、
薬物依存症回復施設などを利用するという更生支援計画がある。

刑事手続は小さな取引の連続です。

この場合も、
実刑の代わりに、保護観察となり、中間施設利用をする。
という、罰の代替処置の意味合いに取られる。


罰と思って中間施設にいるなら、
その思いが変わらない限り、治療効果は得られない。


冒頭の
「仕方ないですね。」
は、その環境への諦めを含んでいます。

自分への行動の責任がなく、
仕方なく、そこへ 行かされる。

でも大丈夫。
人は、失敗する権利がある。
その方も、自由に自分の行動を決める権利がある。

更生支援計画がうまくいかなかろうが、
計画者はやれることはやる。

薬物の単純所持、使用なら、数年で社会に戻ってこられる。

また、
仕方ないですね。
には、諦め、自分の感情の消滅を含むものがある
感情の消滅は、精神にとって必要不可欠な自己保存のメカニズム。

自分が自由にいたいと思いつつ、その環状を殺し、長いものに巻かれ、それも良い道として服従する。


巻かれた先が自分に合うもので快適なら良いですね。

中間施設にしても、まずはどういった施設か知ってもらうことがないと、始まらない。




話が広がりすぎないように、冒頭に戻ります。

「仕方ないですね。」

の言葉に含まれる諸々を

知りたいと思ってしまうのです。


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