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百鬼夜行?

20歳代の後半は東京の方南町通り沿いにある小さなワンルームマンションに住んでいた。
ちょうど今くらいの時期の事だった。
確か2~3時頃、やたらと外がうるさい。
多くの人が会話をしている声が聞こえてきた。
何人が話しているのだろうか。見に行こうと思ったけど、何かとても高い危険性を感じていた。平易な言葉だと「ヤバイ感じ」がして見に行けなかった。

マンションの裏手は善福寺公演に続く細い道がある。
そこに、とてもスタイリッシュな一戸建ての家があった。
玄関はとても狭いけど、中に入ると左側が大きなガラスの壁で、そのガラス越しにお隣の中庭があった。いわゆる借景だ。
どうも近代的な京都の町家づくりを意識して造られたようだ。
そこから人の声がずっとしている。

ボクは2階に住んでいた。
真上の階に住んでいた年上の男の人も、うるさいのでベランダに出ていた。
そのマンションは少し不思議な造りをしていて、そこが気に入って入居したのだけど、階が上がるごとに部屋が広くなっていく。
下の階から上の階のベランダが見える。
「なんですかね」と上の階のお兄さんと話してたけど、ボクの危機回避能力が「危険だよ」と言っている。なので、そのまま無理やり寝たように記憶している。

翌日の朝、出社するので、その家の前を通ったところ、その家の玄関横に設置されているコルクボードに、和紙にきれいな達筆で書かれたお知らせが小刀で張り出されていて、その告知を見て絶句した。
前日の夕方、その建物を自ら設計した家のご主人が亡くなっていて、夜遅くにお通夜が行われていたそうだ。
でも、お通夜って夜中まで行われることはないと思う。
そもそも人が一人もみうけられなかった。

思わず「百鬼夜行」という言葉が頭の中に出てきた。
きっとたくさんの「人だった方たち」が見送りいうか、お迎えというか、たくさん集まったのだろう。
そういえば、そのお家の玄関は、その深夜、とても明るかった。
特別に何か照明を入れているような明るさだった。
あれは一体何だったのだろう。
今でも時々思い出す、とても印象の強かった出来事であった。

ではまた。

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