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戦略と組織で診る梨泰院クラス

そろそろ、梨泰院クラスを戦略と組織の視点で診たい。


遅ればせながら梨泰院クラスにハマった。どハマリしている。
梨泰院クラスはNetflixで配信されている韓国ドラマ。

ストーリーに夢中になった1周目。
もう一度しっかり観たいと感じて2周目。

せっかくなので戦略と組織の観点でパク・セロイ率いるタンデムもとい株式会社ICについてすこし考えてみたい。

※ネタバレを含みます。

1.株式会社ICの組織の強さ

「いかに利益をあげるか」
いうまでもなく企業の重要なポイントだ。

しかし、時代の変化に伴い利益だけでなく透明性であったり従業員が幸福感や楽しさを感じられていることも重要になってきている。これは福利厚生の一環としてだけではない。従業員が「満たされている」ことが競争力の源泉となり得るということだ。心理学者のマーティン・セリグマン氏が提唱した「PERMAモデル」は従業員が幸福な状態にある時の心理を以下のように定義している。

  • Positive Emotion:前向きで明るく、モチベーションが高い

  • Engagement:チームへの帰属意識が高く、積極的に関わる

  • Relation:チーム内の良好な人間関係

  • Meaning:働きがいと働く意義を発見し腹落ちしている

  • Achieve:仕事での達成感や自己実現、成果

セロイ率いる株式会社ICはこの5つの特性を満たしている。
セロイは事あるごとに
「この店が好きか?」「おまえはどうしたいのか?」
と仲間に問いかける。
これにはEngagementとMeaningが含まれており、帰属意識を高め自分が働く意義を見つめ直す機会を与えている。また、セロイの目標は韓国外食産業トップの長家グループの会長を超えることであり、すなわち韓国外食産業トップを獲ることである。この目標達成のために、乗り越えるべき障壁をRelationを高めてAchieveすることでPositive Emotionを維持向上させている。

2.多様性の尊重

セロイが経営する株式会社ICの幹部となるメンバーは多彩だ。刑務所で出会った後輩(スングォン)、トランスジェンダーのシェフ(ヒョニ)、韓国籍をもたないギニア人と韓国人のハーフ(トニー)、IQ162のソシオパス(イソ)。

あるとき、税金対策として法人化するときに仲間と会社名のアイデアを出し合っていた。スングォンが「梨泰院クラス」という会社名を提案する。読み方はイテウォンクラス。セロイが「キャッチーでいい」とその案に乗ると、イソが「クラス?子どもっぽい」と反論する。

この件に限らず、仲間同士で議論すると必ずと言っていいほど反対意見が出る。それぞれ背景や考え方が違うからだ。一方で全員が店と仲間のことを想っている信頼関係が前提にあるため、心理的安全性が確保され遠慮のない意見が言い合える。

そして、セロイは言う。「梨泰院クラスと聞いて思い浮かんだ言葉は、自由だ。多様な文化が自由に入り混じった場所。束縛もない」ここでタイトルの意味が言語化される。

第2話あたりで、梨泰院の異文化が混ざり合うハロウィンの夜をセロイは体験する。そのシーンが「梨泰院クラス」というタイトルを象徴するシーンである。

3.掲げるMVV

株式会社ICが掲げるミッション・ビジョン・バリューは以下だ。僕の理解。

  • ミッション(社が社会で実現すること):
    「僕と仲間が誰にも脅かされないような自分の言葉と行動に力が欲しい」
    「不当なことや権力者に振り回されない」
    「自分が人生の主体であり、信念を突き通せる人生であること」

  • ビジョン(未来の姿):
    韓国外食産業トップになること(≒長家グループを超えること)

  • バリュー(行動指針):
    「人と信頼」

これにはセロイ自身の性格、セロイが体験した壮絶な過去、仲間たちのエピソードが多重に絡み合っており、企業戦略としてのストーリーにより深みがでている。

多面的にみると面白い

他にもコアコンピタンスやマーケットにおける立ち位置(長家グループとの対比)など書きたいことはあるが、この物語の深みや他の考察には遠く及ばない。

ドラマでありフィクションではあるのだが、株式会社ICは成功するための条件を揃えていたような気がしてならない。

また、無性に韓国料理が食べたくなってキムチ鍋を食べて塩分過多となったことは言うまでもない。そして、早く仲間とチャミスルを酌み交わしたい。

なにとぞ。


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