30歳、隠居生活 その22 退職して間もなくの頃1

さて、いざ退職してからの話になる。

手続き的なものは簡単で、市役所に行き、必要な書類を出して、健康保険証をもらう。

混んでいなければ10分もかからなかった。

始めは緊張して出向くのだが、よくよく考えれば国保への切替など向こうは慣れっこである。

そういうものだと思えばそれだけの話しであるので、身構える必要なし。

また、失業に伴う国民年金の免除申請を説明され、これも行った。

当初の説明だと、失業から1年間程度は免除になるような説明であったが、

なぜか3年近く経った今でも免除期間は続いている。(年金の1/2を納めていた扱いになるとのことだ。)

ハローワークにも失業手当の申請に行った。こちらも必要な書類を出して話を聞くだけだ。

自己都合の退職にはなるので、失業給付金が出るのは3ヶ月ほど間をおいてからだった。

給付金をもらう間、就職活動をしていた証明の書類を提出、など面倒そうなことが書いてあるが、

なに、応募した企業名と電話番号など基本的な情報を書いて終わりである。

全く形式ばかりで、こんなことでいちいちハローワークまで届け出るまでもない。

向こうも対して中身を見たりせず、形式だけで済ませる。こんなものである。

会社が必要な書類を出さない場合などは面倒であるが、私の場合は別に円満退社であるし、

その任に当たっている古参の総務も健在であったから、特に心配には及ばなかった。

その年の出費は、1,2月に入る給与と失業給付金で賄える範囲で収まることが分かっていたので、

特に心配もしなかった。

私は自分のために存分に時間を使えることに興奮していた。

毎日、朝起きてやるべきことがなにもないこと、不安なくぐっすり眠れて気持ちがいいこと、

食べるご飯がなんでもおいしく食べられることに感謝していた。

折しも、最終出社日の翌日が私の30歳の誕生日であったから、自分からの最高の誕生日プレゼントのように感じた。

やりたいことはたくさんあった。漫画など無駄なものが多くなっていたので、家の中の整理。

余計な支出の元になっているサブスクリプションの解約、格安の携帯回線の調査、

テレビを置かなくなっていたのでNHKも解約手続きをした。

普段は時間を取れず、そこまでするのは面倒くさいなというところにも、今日からはこれが仕事と

深く手を突っ込んで整理していった。

家の中も収支計算表も整理され、無駄も少なくなった頃には、慢性的な肩凝りから解消されたような解放感があった。

支出が減っているため、受けているサービスは減っているはずなのに、生活の満足度は更に上がっていったのである。

まこと不思議であった。

今までは、一番の趣味であるゲームなどでも、時間がないからと言ってやっていなかったものをどんどんとやるようにした。

自分のために使える時間がたくさんある以上、私にはその言い訳は使えないのだった。

毎日時間はすぐに過ぎ去り、気がつけば日が暮れて夜になっていた。


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