30歳、隠居生活 その23 退職して間もなくの頃2

■反応

まず、辞表を出したあとに妹には真っ先に事情を話しに行った。特に共用の費用の払いでお願いがあったためである。

これまでは、私の方が収入の良かったので払いを多くしていたが、これからは妹の方が収入が良くなるので、

これを逆転し、6:4程度であったところを4:6にして欲しいと願い出た。

流石に突然の話に少々嫌な顔をされたが、ここまで気前良く恩を売っていた分をいくつか返してもらおうというだけの話である。

渋々と言った調子であったが、ここは首を縦に振ってもらった。

付き合いのある友人などにも、今の生活の話をすると、大体は面白そうだなという反応が帰って来る。

実際面白いのであるし、私もそのような調子で話すのだから当然である。

実家に帰った際に、両親にも事情を伝えた。別に両親の財布をあてにしている訳でもないので、堂々開き直っての説明である。

これまで中々良く仕事できていると伝えていたのに、いきなり退職したという話が出てきたので少々驚いたかも知れぬが、

まぁさもありなん、という反応であった。内心はよく思っていないかも知れぬが、この件に関しては私の方が文句が多いので、

知ったことではないというのが正直な感想であった。

こうして、公然と週休7日の人間が誕生したのである。

私の兄などは、高校を中退してから親の世話になってずっと無職であるが、収支を自分で賄えるかどうかが私との違いである。

つまり、私の週休7日は自身のコントロールの上でそうなっているが、兄の場合には本人の思い通りにならぬ。

ここに明確な差がある。

■その後

休みだけの毎日など3ヶ月で飽きる、などとはどこかで聞いた言葉であるが、私の場合には全く当てはまらなかった。

仕事を辞して一年が経っても、飽きるどころか益々元気良く毎日を過ごしており、この生活をやめることなど到底考えられなくなっていた。

むしろ、今の生活を続けるために必要なことはなんでもやってやろう、という意気込みさえ出ていた。

2022年に入り、差し当たっての課題は引越であった。

妹は私より早く家を出て神奈川で美容師をしており、駆け出しの頃は稼ぎも少なく、生活環境の悪い寮生活から抜け出すために

たまたま同じく神奈川に就職の決まった私と二人暮らしになったのは説明した通りである。

しかし、それから随分時間も経っており、妹もすっかり一人前の美容師になっていた。

前にいた会社も潰れ、今は先輩の居た会社にフリーランスの美容師として出ている形なのだと言う。

要するに、稼ぎも増えてきたし、そろそろ一人暮らしをしてみたいと言うのだ。

私も、整理作業などしているとどうしても二人暮らしでは整理しきれぬところもあり、

妹に生活費の一部を依存している形が気になっていたし、それに賛同した。

始めは米など同じ場所に送れるからいいなどと言っていた両親も、流石に30歳近くになって二人暮らしもどうかと

五月蝿くなっていたので、ちょうど良いタイミングであった。

引越に当たっては徹底的にものを減らした。冷蔵庫など共用で使っていたものは基本妹に譲り、

1人暮らしに最低限必要な家電だけ新たに買い揃えることにした。

冷蔵庫であれば2ドアでなく、1ドアの小さいものが実家にあったのでこれを頂いて使うことにした。

自炊をするので、当初は貯蔵量の少ない冷蔵庫にやきもきしたが、

どうせ毎日好きなものを買ってきて料理するのだから、

買い置きをせず、その日と翌日分だけの食材だけあればいいと割り切ってからは、却って快適であった。

実際これまでは、食材があるのでこれを食べねばならぬと思い、余り愉快でない自炊になっていたことも多かったのである。

これで、その日思った料理だけをちょいと作って食べるというのが更に愉快になった。

エアコンさえ最初は導入しないことにした。

後々導入するのであっても、絶対にこれがないといけないという確信のもと導入したい腹積もりであった。

これは流石に2023年の猛暑もあり、今では考え直したが、納得の元に出費をするために必要な工程という認識である。

洗濯機も、洗濯・脱水・乾燥の工程の内、機械に任せねば面倒なのは

脱水部分のみと判断し、持ち運びに便利な脱水機だけ用意した。

粉石鹸で軽く揉み洗いをしているだけだが、別に普段から泥になるような生活でもないし、

下着くらいしか洗い物も出ないので十分に衣類は清潔を保てている。

電子レンジと炊飯器は、小奴らは対して場所も取らないし、毎日使うものであるので

そのまま持ってきて使わせてもらっている。

唯一、新しく購入したのが二口のガスコンロである。

引越のキャンペーンの祝で1口のIHクッキングヒーターを頼ったのであるが、全く火力不足であった。

味噌汁を用意しながら肉を焼くなど、絶対に二口が必要であり、また火力も足らず肉がよく焼けぬ。

散々苦心した末に、やはりガスには勝てぬとこればかりは購入した。

購入したての頃、大火力で作った炒飯などは格別であった。

しかし、火を使うとやはり掃除など大変であるし、調理の手間も考えると、

IH圧力鍋には自炊を更に快適にできる可能性を感じており、いつか試してみたいと思っている。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?