30歳、隠居生活 その15 転職先へ
退職前の有給消化中であったが、次の職場から早く出てくることはできないかとの相談があったので、
恐らく契約上はあまりよろしくないのだろうが、特に憚ることもないので事情を伝えた上で出ることにしたのである。
改めて紹介するが、私の転職先は50名程度の小規模の税理士事務所であった。
パソコンを使った定型の事務仕事と、できればマクロを使った自動化、
さらにできれば所長先生向けの資料作成もできると嬉しいと言った話である。
いずれも分かりやすい、いい仕事ではないか。私がやる仕事などこのくらいの話でいいのだ。
採用面談時、質問があるかと聞かれ、業務量と残業の様子について確認したところ、このような解答であった。
確定申告業務のように忙しいタイミングが決まっている業務ではなく、所長からして毎日定時で帰っているので、
事実上全く残業がない、あるとしても数分程度何かで残ることがたまにあるくらいであるし、
あったとしても1分単位で残業時間が付く形になっているのだ、と。完璧ではないか。
面談の最後に、課題のプログラムも良く出来ていたし、特に所長に推しておくかと聞かれ、
是非お願いしますと頭を下げた。仕事は簡単で残業の心配もない。結構である。
後に、この採用に当たってくれた総務の方の業務も幾分か楽にしてやれたので、
ここで強気に自分を推した義理は果たせたと思っている。
果たして、業務内容は想像した通りに簡単であった。
鉱山を掘るような決まり切った定型のデータ入力業務があり、それをやっていればまず良し。
そして定時が来たら挨拶をして帰る。それだけの日々のなんと幸せであったことだろう。
同時に、定時で帰宅する際に存外に同じ時間に帰宅するものが多く驚いたのを覚えている。
作業のリーダーなどは、終わりの見えない単調作業に苦しめられていたので、
鼻歌など歌うような調子でこの作業をやっている私の様子を見て呆れたようだった。
別にノルマがあるわけでもなし、既にほぼ限界まで仕組み化もされており、やるだけになっていたので、
私にとってはなんの苦もなかったのではあるが。
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