もうすぐ俺の、公式戦初打席がくる。
1-壊れる-
1ヶ月前。
たまたま、3年のユウさんのいない日だった。
7番ショートで、代わりに俺の名前が呼ばれた。
チームスポーツは向いてない。
仲間と座席を争い合うなんて、したくない。
負けるのは辛い。
でも勝つのは、仲間を負かすこと。だからもっと辛かった。
そんな俺が、呼ばれた。
ああ辛いなあ。
活躍したいのに、活躍なんかしたくない。
誰が3年の夢を壊したいんだよ。
でも俺はここで結果を出した。
結果を出してしまった。
涙がこぼれそうだった。
2-ただ一つの答え-
今日も練習試合で、俺の名前が呼ばれた。
後ろから急に、背中を叩かれた。
「思いっきりやれよ、いつも通り。」
俺はその瞬間、涙が溢れて止まらなかった。
「勝負の世界は、ズルして勝たなきゃなんでもアリだ。勝つことは傲慢じゃない。」
負けたくなかった。
勝ちたくなかった。
でもやっぱり負けるわけにはいかなかった。
ありがとう、ユウさん…。
俺がやってきたこと、全部思いっきりぶつける。やることはそれだけなんだ。
負けるんじゃない。ただ勝つんじゃない。
誰もが認めるくらい圧倒的に、勝つんだ。
それが俺に残された、唯一の道だ。
俺の初打席がきた。
マウンドには、ユウさんの因縁の相手が立っていた。
ユウさんはマウンドに視線をやる。
いつでも出られる準備をしている。
オレは自分に誓って打席に入る。
”一撃で、認めさせてやる。”
__改(かい@3分で読めるおいしい物語)
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