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人間主義的経営 [読書録]

高級カシミヤを使用したイタリアのラグジュアリーアパレルブランド「ブルネロ・クチネリ」のCEOブルネロ・クチネリ氏の著書「ソロメオの夢。私の人生と人間のための資本主義」の日本語訳本。

この会社は、イタリアのソロメオ村を拠点とし、創業当初から「人間の尊厳を守ること」を経営の目標に掲げ、社員には世間の水準を上回る給与を支給している。さらに会社の収益は村の修復(文化、芸術、人々の交流促進のための劇場、図書館、公園などの整備)や、若者に技術を身に付けさせるための無償の職人学校の運営などに投資している。

創業者でありCEOのクチネリ氏の企業家としての指針が定まったきっかけは、子供時代の経験にあるという。

彼は少年時代は貧しい農家の子供として農村で生活し、高校生の頃に一家で郊外に移住。父親はコンクリートの製造工場の工員として働き始めたが、雇用主からひどい侮辱を受けてしまう。不当な扱いに傷ついた父親を見て、クチネリ青年は将来、倫理的にも経済的にも、人間の尊厳を守るために生きて働くと決意するに至る。

我々は今日の資本主義経済の中で、事業をより大きくしたり、売り上げをよりたくさん上げることを目標として掲げた経営指針のもので働き(あるいは働かされ)、その実現のために不相応な労働を犠牲にしている、といったことを考えたり実際にその状況にいる人は少なくないのではないでしょうか。

この現状を、「人間の尊厳」が保たれた正常で健全な未来に向かうようにすることはできないのでしょうか?

本書は、そんな理想的な働き方、豊かな生活を創り出すためのきっかけになりえる一冊です。

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