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小鳥遊じゃよ(2023/05/03の日記)

・「小鳥遊(たかなし)」という苗字を見るたびに(といってもフィクションの世界でしか見ないが)、「苗字ってそんなにちょけていいんだ」という気持ちになる。一族で代々引き継いでいくことになるであろう苗字をつけるにあたって、やっぱり学識や権威のある人につけてもらうのがよかろうと思って偉い人のところに行ったら、「鷹がいなければ小鳥たちが悠々と遊べるから”たかなし”なんてどうじゃろうか」とか言われて、釈然とするはずがない。うちの大事な苗字の話をしてるんですよ! 読者投稿なぞなぞコーナーのハガキ職人「なぞなぞおじさん(都内男性・55)」の最高傑作じゃないんですよ、という気持ちになってしまう。ああくそ、あの「どうじゃ? 面白いじゃろ?」と言わんばかりの顔、思い出したらまた腹立ってきた。もうあの屋敷二度と行かん。

・調べてみたら、信濃の領主「高梨氏」が四人の息子にそれぞれ「高梨」「鳥楽」「小鳥遊」「仁科」の姓を与えたのが由来らしい(”仁科”以外はいずれも”たかなし”と読む)。ますますダルい。「鳥楽」なんてもう居酒屋チェーンみたいになっちゃってる。あと仁科も仲間に入れてやってよ。4人目は流石にネタが切れたのかな、とか変な勘ぐりをしちゃうじゃない。

・ああ、可哀想な仁科。不遇な仁科氏のためにも、私が「四つ目の”たかなし”」を考えるしかないですね。当然の論理の帰結として。

・案1「鴨漕船」。タカがいなければその獲物であるカモも水面で眠ることができることから。「船を漕ぐ」という慣用句にもかけてある。どうじゃ? おもしろいじゃろ?

・案2「一富士三茄子」。初夢で見ると縁起が良いとされる「一富士、二鷹、三茄子」から「鷹がなくなった」ものである。気に入ったか? 縁起もいいじゃろ?

・案3「不可算名詞」。数えられないものには「多寡がない」ので。知的でかっこいいじゃろ? 軍師の家系として大成するんじゃぞ?

・どうじゃ? この三つから選ぶんじゃ。仁科なんて姓は捨てい。そうじゃなあ、おすすめは「不可算名詞」かの。ほら、わしってまだマインドが中学生じゃから「不」とか、そういうネガティブなワードに惹かれるんじゃよ。これ、なんなんじゃろうな。漢字も多ければ多いほどかっこいいと思っておるし。「とにかく」を「兎に角」とか、「やたら」を「矢鱈」とかって書いてしまうし。意味もないのに「しかし」を「しかしながら」とかにしておるし……。えっ? そんな時期なかった? 嘘じゃろ。そういう表面上のオリジナリティに頼ることがないまま、どうやってあの多感な時期の自尊心を維持し続けてこられたんじゃ? 思春期特有の息苦しさに対抗する手段は、ハリボテの作家性からくる、しかし根拠のない「お前らとは違う」という優越感だけじゃないんか? あ、そういう息苦しさを、そもそも感じたことがないじゃと? そうか、そうか。まあ、そういう若者もおるじゃろうな。えっ? やっぱり仁科のままでいい? なんでじゃ? 一生懸命考えたんじゃぞ? わしの青春時代が間違いではなかったことを証明するために。それを、いともたやすく踏みにじりおって。たのむ、わしを、助けてくれんか。そうでなければ、この息苦しさを抱えたまま、わしはゆっくりと窒息してしまうのか?

・↑最悪のオーキド博士みたいになったので終わります。

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