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【短編】まゆみ(27)OL

今日はHさんと会った。ひとりでぼーっとしたくて早めに待ち合わせ場所へ行ったけど、少しだけ感じる肌寒さと、あったか〜いが一つもない自販機、サッカーをしている子どもたちの声だけが聞こえてくる冷たいベンチ、何本目だろう通り過ぎていくだけの電車と、迎えを得て帰ってく人々、空は当たり前にまっくらけ...それらと自分の心情とがちょうどいい感じに混ざり合って心臓がきゅううっと寂しくなってしまった。
なんならちょっとだけ泣いてしまった。もう帰ろうと思った頃、Hさんが来てくれて良かった。
車に乗って、彼の手をちょんっと触ってみた。「わー!冷たいねー!」と驚いて、これでもか!というくらいヒーターを強めにしてくれた。
この手を冷たくしたのも彼だけど、すぐに温めてくれる人がいてくれて今夜は本当に良かったと思った。
わたしは一昨日、恋人に振られたのだ。

久しぶりに会った彼はサイドを刈り上げた髪型に変わっていた。
会うことが決まったとき「きっと髪型とか変わってるんだろうなぁ」と彼が言っていたのを思い出す。
髪型が変わってるかもしれないということを安易に想像してしまうほどの時の流れと相反して、何も咎めない彼にわたしは完全に甘えてしまっていた。

若者で賑わう店でラーメンを食べた。
散々、「食欲がない、眠れない」と弱っていたわたしだがなんならHさんよりも先にぺろっと完食してしまい恥ずかしかった。「全部食べれるんかいっ!」とけっこう大きめな声で突っ込まれたけど、わたしが残すのを予測してチャーハンセットにしなかったことわたしはちゃんと知っている。ごめんね。

帰り際「次会う時は5キロ痩せてよう」と言っていた。
その頃わたしの髪型は2.3回は変わっているだろうか?と考える。

「ほっとけない人」と何度か言われた意味も考える。
分からないので、まっくらけの空を見上げた。満月ではなかったけど、けっこうまぁるい月だった。

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