香蘇散

今日ご紹介する漢方薬は、香蘇散(こうそさん)。エキス剤はあるが、あまりメジャーでは無いだろう。しかし使い方を知ると重宝する薬だ。


風邪薬である。ただし「はっきりと風邪」では無く、「ちょっと風邪気味」の時に使う。ポイントは、「風邪気味で胃腸の調子が悪い、食欲が無い、胃が重い」などの症状をともなう時に使うのである。主役は香附子と蘇葉で、パッと風邪気(かぜっけ)を散らすために入っている。この蘇葉というのは赤紫蘇のことだから、エキス剤も赤紫色をしている。昔から中国では赤紫蘇は生薬として用い、青じそは食品だ。それに陳皮(ミカンの皮を干したもの)、甘草、生姜という胃薬が三種併せられている。風邪気味で胃腸の調子がイマイチ、食欲も無いと言う時にさっと飲むのである。勿論例によって一回3包。


こういうのは、家庭の常備薬にするのがよい。わざわざ風邪を引いてから病院に掛かって出して貰うのでは無く、家庭に置いておいて上に述べた症状がある時にさっと飲む。そもそもこれは、「和剤局方」という世界最古の「薬局方」に載っている薬であり、元々薬局で庶民が買って飲むOTCだったのだ。


今から千年ほど前、宋という国が中国にあった。宋の軍隊はあまり強くなかったが、経済大国だった。医療厚生の面でも発達していて、国が公営の薬局を設け、医者にかかれない庶民に比較的安く薬を売った。この薬局を太平恵民和剤局と言い、その薬局の薬のリストが和剤局方だ。世界最古の薬局方と言われる所以である。香蘇散もそこで売られていたのである。日頃から風邪を引きやすい人に、使い方を説明して家庭の常備薬にさせると良い。在宅には打って付けの薬だ。なおツムラの手帳には「平素より胃腸虚弱で」と書いてあるがそんなことは無い。普段は普通に食べている人でも、風邪気味で胃腸の調子が思わしくなければ使って構わないのである。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?