小柴胡湯について

小柴胡湯で間質性肺炎が起こるというのは国試勉強で一度は習っただろう。しかし小柴胡湯の効果については誰も知らない。副作用だけ覚えて何の薬か知らないというのは、ちょっと変では無かろうか。


小柴胡湯の作用は2つある。
1つは、傷寒(今の新型コロナみたいな感染症)が少し進行して、発熱し、熱は上がったり下がったりをくり返し、胸脇部が張って苦しい。その他にも傷寒のこのステージ、つまり少陽病には咳だの食欲減退、目がくらむなどいろいろな症状があるが、全部揃うことは少ない。熱感と悪寒がくり返す、往来寒熱というのは一番特徴的だと思う。こう言う、きわどい中間地点にあるときに短期的(一週間は超えない)に出す。これが本来の小柴胡湯の使い方。


もう一つはストレスにやられたときの代表薬。ゆううつ、いらいら、怒りっぽい、口が苦い、脇腹が痛む、寝付きが悪いなどストレス性の症状に、元気がない、食欲が無い、疲れやすいなどストレスで体力が落ちてしまっているのに使う。


かつて小柴胡湯は肝炎の薬だと勘違いされて、爆発的に処方された。ちょっとALT, ASTが高いだけで「はい小柴胡湯」と処方された。これは「肝」の「勘違い」である。元々中医学では、上に挙げたストレス性の病態を、肝鬱化火というのである。西洋医学の肝臓の話では無い。中医学の肝は情動と自律神経系を統合したような概念だ。脳の機能の一種である。そこがやられてコントロールが乱れているのが「肝郁化火」である。これも上記のような症状があるときにだけ使う。何年も出しっぱなしにするものではない。


医療の現場では、こう言うストレスを抱えるスタッフは多い。高齢者向けの薬では無いが、ああ、あのスタッフ相当ストレス溜まってるな、と思ったら1,2週間出してみれば良い。その程度なら間質性肺炎の心配はまず無い。出し方は例によって一回二包、朝晩二回。


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