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Leatherwood Bespokeという松ヤニ

日本では梅雨が開けて夏本番。チェロにとっては裏板のニカワが緩む季節。

4月から中学生になった娘が学校でオケ部に入部をし、そして、めでたくチェロパートの一員となった。娘には幼少のころよりピアノを習わせているが、ぼくや息子がチェロを弾く姿を見て興味を抱いたのだろう、自らチェロを希望したのだった。

そんな娘が夏休みに入って、学校からあてがわれた楽器を持ち帰ってきた。しかし、話では聞いていたが、なかなか酷い状態で、あちこちニカワが緩んでいるのは当然として、だいぶ指板が下がっていて、素人の娘ではまともに弦を押さえることもままならない状態であった。ぼくが弾いてもなかなか大変で、ハイポジションで押さえこむと弓が隣の弦にも触れてしまう始末であった。

せっかく、やる気を持ってチェロをはじめた子どもには、弾くことが楽しいと思ってもらうことが大事なので、それなりの楽器を持たせてやりたい。自宅のチェロを持たせるということも考えたが、毎日の通学で大きな楽器まで運ぶのは大変だし、学校の楽器保管の環境にも不安があったので、学校に置いておくというのもやりたくない。そうなれば、学校から与えられた楽器を最低限メンテナンスしてマシな状態にするしかない。

馴染みの楽器店に持ち込んで、店主と相談した。ひとまず、緩んだニカワを締め直して、駒を取り替えれば、音も弾きやすさもずいぶん改善するだろう。次の部活の予定もあるし、指板を持ち上げたり、中を開けるような大工事は別の機会にしよう。ということにした。

数日後、仕上がりの約束の日に再び娘と楽器店を訪れた。音もしっかり鳴るようになったし、新品の駒で弦の押さえやすさもずいぶん楽になった。楽器全体も綺麗に磨いてくれていて輝きを取り戻したように見える。これで、より練習に身が入ることを期待したい。

会計のタイミングで、カウンターの目立つところに置いてある松ヤニが目に着いた。これは、前から気になっていたやつだ。さすが、そう思った瞬間、店主から新しく入荷した松ヤニだと勧められた。「Leatherwood Bespoke」というオーストラリアで作られている松ヤニである。じつは、SNSの公告だったか、過去に見て気にはなっていたのだが、なかなかの値段だったので、その時は買うのは断念していたのであった。しかし、今回は店主の「これは良い!」という言葉に負けて、松ヤニの割には高いこの「Leatherwood Bespoke」を買ってしまた。

翌日、いつものルーチンで課題曲や小品などをざっと弾いてみたが、確かに良い。弓を弦にあてた瞬間からしっかり掴んでくれる。粘りが出て発音がはっきりした。こまかな動きでもしっかり音が出るので、速いパッセージやスタッカートではずいぶんと助かる。ただ、逆に言えば、雑に弾くと、雑さがそのまま音に出るので要注意。

それなりの値段だけれど、物としての外見や質感も悪くないし、なにより、ここまで弾き心地に差がでるなら妥当かもしれない。

ちなみに、メンテナンスからあがってきたチェロを手にした娘だが、ぼくの楽器と比べて、C線やG線が太くて押さえずらいと不満を言ってきた。たしかに、ぼくのはSpirocoreのタングステンを張ってるのでね。ただ、チェロの弦、とくに、タングステンだと高いので、おいそれと買ってやるわけにはいかない。あまり、甘やかしてあげてもいけないので、次のなにかの機会までおあずけかな。


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