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第1回:始まる前から山積みの課題(北京オリンピックでの #カーリング沼 マーケティングを振り返る)

日本のカーリングにとって、2021-2022シーズンは、北京オリンピックでのカーリング女子日本代表の銀メダル獲得など、本当に大きなインパクトがあるものでした。この歴史的な瞬間を、日本カーリング協会(JCA)のマーケティング担当として体験させていただいたことは本当に大きな財産です。

マーケティング委員として走りながら、どんなことを考えていたか・考えているかをnoteに記録することで、カーリング関係者・ファンの方や、スポーツに限らずコンテンツマーケティングに携わる方に、何かを考えるきっかけになれば嬉しいなと思っています。

話の中心になるYouTubeライブ配信「#カーリング沼 へようこそ!」、シーズンを丸ごと振り返った配信回は以下のリンクから。(長いので、雰囲気だけでも感じていただければ。22分くらいからがこのnoteに特に関係するところ。)


北京オリンピック、始まる前から山積みの課題

2018年の平昌オリンピックの後に、私自身、JCAのマーケティング委員に加わってTwitter、Instagramでの情報発信を開始したり、同時にYouTubeでの大会映像配信も活性化するなどマーケティングの下地はこの4年間の中で進歩した部分はあると思っています。

一方で、「そもそも目指すべきカーリングの発展とは何か」という根本的な問いに対しては、「オリンピックで最大限の結果を出す(出場する、金メダルを獲る)」があらゆるステークホルダーの共通目的になってしまい(方向性としては疑いようのない正義だと思いますが)、その先のカーリングの発展を主体的に考える部分が欠けていたようにも感じていました。(スポーツ団体の陥りがちな罠でもあると思っています)

「カーリングは4年に1度のブーム」・・・オリンピックの度に話題になっては消えていくようなイメージ。
そんな中で命綱とも言えるオリンピックの出場枠をようやく掴んだのがオリンピック本番を2ヶ月後に控えた2021年12月(しかも、男子、女子、混合ダブルスのうち女子だけ)。コロナ禍で混乱のある中で、それだけでも御の字と言えるような状況でした。

一方で、「このまま北京オリンピックが始まり、終わる」と、きっとテレビ放映を中心にブームが来て、そして去っていく「いつものパターン」になるのは目に見えていました。
それどころか、カーリング女子日本代表として活躍するであろうロコ・ソラーレ以外のチーム、特に4年前に平昌オリンピックで出場しながら、今回の北京オリンピックの出場を逃した男子チームを中心に、スポンサーの打ち切りなども懸念される状態でした(実際、人気女子チームであるフォルティウスも北海道銀行のサポートを打ち切られるなどあった)。

「アスリートの活動の持続性」を支えるために、誰が踏ん張らないといけないか。出場できなかった北京オリンピックを前に、アスリートがそれぞれのチームでできることにはどうしたって限界があるだろう中で、JCAのマーケティング担当としてできることはないか。

マーケティング担当として失格の、遅すぎるスタート。恥を忍んで、ようやく動き出した2021年の年末でした。

カーリングファンに向けた基本的なアプローチ

カーリングにとって、オリンピックは、他のコンテンツではあり得ないレベルのチャンスです。1試合あたりの放映時間は約3時間、これが予選リーグだけで9試合(決勝トーナメントまで進めば+2試合)。つまり、30時間、競技が地上波で放送される可能性があります。
競技の面白さや、アスリートのパフォーマンス、ビジュアル、キャラクター等が相まって、非常に大きなブームとなります。これをいかに「アスリートの活動の持続性」につなげていけるかが、大きな目的意識でした。

手段として取れるのは、「デジタル」。私自身が地理的に制約のある立場であった(アメリカに駐在中のサラリーマンが副業でマーケティングをしている)ことと、コロナ禍で浸透したリモートワークの考え方がスピーディーな企画実行の追い風になりました。

伝える対象、カーリングファンの理解も必要です。「デジタル」+「スポーツ」の融合領域であるeスポーツに関する調査報告書を参考にしました。

eスポーツファンの定義
日本のeスポーツの発展に向けて(e スポーツを活性化させるための方策に関する検討会 )

「コアファン」、「ライトファン」をカーリングを踏まえて定義し直すならば、以下の通りになるでしょうか。

「コアファン」
・ カーリングを長時間/頻繁にする
・ 頻繁に/熱狂的に観戦・応援をする
・ カーリングの内容、見所を理解している
・ 情報に対して能動的(大会、選手等情報)

「ライトファン」
・ たまに(オリンピックのときだけ、テレビでたまたま見かけたときに)観戦・応援をする
・ カーリングの内容そのものよりも、話題性(カーリング娘、ロコ・ソラーレ、そだねー、もぐもぐタイム)によって関心を持つ
・ 情報に対して受動的

オリンピックという「ライトファン」が爆増する機会に、いかに「コア化」を達成できるかがポイントと考えました。(「ライトファン」の獲得はテレビ放映やメディアが得意)

2018年から4年間、私自身がSNSを通じて、カーリングファンの方々と交流させていただく機会が多かったことで「ライトファン」、「コアファン」の具体的なイメージを、ある程度持てていたこともプラスに働いていたと思います。(もちろん個人のバイアスはあります)

(つづき(第2回)はこちら ↓ )


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