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ポスト・コロナの水辺は、アーバニズムのなかでどんなポジションなのだろうか?

水辺はまちの魅力的なベニューとしての位置づけ

これまでも水辺はまちづくりの魅力的なベニューづくりとしてのポジションは果たしてきたし、その高いポテンシャルを生かしたさまざまな利用方法が模索されてきた。そして実際2020年オリンピックを目指した公共民間投資がおこなわれて、空間的なアップデートが行われてきた。

水辺が多くの人々の郷土への想いを表現する場になっていて、共感を得られる場所であったということは、これまでもいろんなところで述べてきた。

これまで、市民が行政に管理を任せてきた、あるいは行政が管理する側の理屈として市民を信用してこなかった時代から、確実に河川敷は時代が移っている。行政の財政不足から、すべての水辺をよりよくする体力がなくなりつつあるなか、郷土をよりよくしたいという思いの強い場所が選択的に選ばれて、集中的に公共の再投資のひとつの指標として扱われることになることはほぼ間違いない。合意形成があればなおのことやりやすい。そんななかCOVID19が起きて、水辺にも直撃した。


コロナと水辺

コロナで、開業を間近にしていた各施設は大々的なイベントを回避し、本来起きるはずであった水辺開業ラッシュの東京のトレンド、あるいは日本全体のトレンドをつくることに大失敗した。

しかし都市スケールでみると、コロナでテレワーク、通勤からの開放など、都市や就業場所の集中から解放されて、都市民は一方で精神的な自由を獲得したように見える。コロナの渦中は、自宅近くの水辺は、家族の余暇の時間を豊かなものにするということでみなおされ、散歩、自転車、ピクニックの需要がものすごく増えた。あるいは、都市からはなれて、地方にそのやすらぎをもとめて移住というトレンドもおきかけた。身近な都市の自然環境や公共空間の質が、都市民の精神衛生にものすごく意味をなしていることを実感した期間だったように思う。

水辺と精神的公衆衛生

本日の東京のコロナ感染者数は25人だそうだ。8月には5700人を超えていたことを考えると大きな変化がおきている。

このコロナの谷間の10月以降の流れをみると、やっぱり出会って、その場に行って、そこで人と話すというセレンディピティによって世の中がこれまでと違う動きをし始めたようにおもう。筆者も出張に行って大いにインスパイアされた。この「インスパイアされること」も精神的安定に大きな意味を与えていることを私自身の体のどこかでわかっている。

OECDのコロナのクライシスを乗り越えるための論点を整理する世界中の有識者を集めたフォーラムで公表されていた、とあるウェブサイトの資料に注目した。

RESTORATIVE CITIES。訳すると回復する、レストアする、させるまち。バージニア大学のJENNY ROE教授が提唱している、メンタルヘルスと、健全な人間関係にフォーカスしたアーバニズムだそうだ。

公衆衛生が都市計画の根幹を成していることは歴史を勉強すると知っている人も多いと思うが、精神衛生がはいってくるとまだまだなところが多いのではないだろうか?ただ、水辺の強みのひとつに、人間が本質的に気持ちいいと感じることがあって、水辺が動物としての本能と、社会的な存在であるところを呼び起こしてくれるとても貴重な場所であることを思い起こすと、地域ごとの戦略で、水辺こそこの精神的公衆衛生を投影する場所として最適なのだと思う。

たぶん、必要だと思うがだれがこれやるねん、問題がまた発生する分野だ。日本の医療界の精神科が薬の投与が諸外国に比べて極端に多い、身体拘束が異様に多いなど、メンタルヘルスに対する日本の認識はどこか、健常者の目線、強者の目線で進められているように感じるが、都市が果たすべき役割が大きいことがこのコロナで露呈したのではないかと思う。

二子玉川のエリアマネジメント活動が推進している、MIZUBE FUN BASEは、精神的公衆衛生という文言を書いていないが、働き方や生活のあり方に対する提言を行って活動をしているし、コミュニティを支える人々同士の健全な人間関係は見ていて羨ましい。

沼津は、狩野川の利活用テーマを今年はリトリートと位置付けた。

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“街なかでとり戻す 私らしい時間”をテーマにさまざまな活動を展開している。代表の小松さんに聞いたら、「リトリート」を来訪者に対するサービスとして考えたが、まちなかのひとも「リトリート」を必要としていると気がついたと言っていた。

行政のひとびとは「リトリート」のテーマをどうおもっているのかきいたら、反応はまちまちだそうで、精神的安定を受動的に受け入れるだけの土壌はありつつ、能動的な都市課題、社会課題とまではとらえらていないようであった。それはそうだろうが、けっこう重要な社会課題だとおもう。さすがだ、ミズベリング沼津。

ということで、備忘録的にメモ。

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