見出し画像

いわきりなおとのトーハク見聞録 「ナーガ上のブッダ坐像」

05ナーガ上の仏陀

◎海を渡ったクメール彫刻  
「ナーガ上のブッダ坐像」 


 東京国立博物館が所蔵する「ナーガ上のブッダ坐像」(12世紀)は、現在のカンボジアを中心にクメール王朝が栄えたアンコール時代に作られた、クメール彫刻の名品です。
 上半身裸で蛇の上に座る姿、目鼻がはっきりした濃い顔、つながった眉毛は日本で見慣れた仏像と比べ、とても特徴的です。西木政統研究員によると、高温多湿の東南アジアでは、上半身裸の姿と蛇は定番のモチーフといいます。この像では二つ欠けていますが、七つの頭を持つ蛇であるナーガは、カンボジアでは水の神として信仰されています。雨風の中で瞑想するブッダを、傘となって守ったというお話が基になっています。

 ナーガの頭が神々しい光背のように見えます。カンボジア、アンコールの彫刻は、壁に飾るレリーフ状の物が多いのですが、この像は丸彫りで全身が作られています。高さも約65センチと立派です。現在は白っぽい見た目ですが、作られた当時は派手な彩色だったと考えられています。
 1943~44年にフランス極東学院とトーハクの間で文化財が交換され、本像はその時に海を渡ってきた作品の一つです。そのためトーハクの東洋館には、他にも東南アジアの名品が所蔵されています。
 
 【メモ】「ナーガ上のブッダ坐像」は東洋館11室で通年展示中

(談 いわきりなおと/記事編集 共同通信 近藤誠) 
__________________________________
※いわきりなおとのトーハク見聞録はは共同通信加盟新聞にて連載中です。

最新回は掲載新聞にてお読みできます。
掲載新聞は、秋田魁新報、新潟日報、静岡新報、上毛新聞、神戸新聞、中國新聞、山陰中央新報、高知新聞、西日本新聞、宮崎日日新聞、熊本日日新聞、琉球新報、福島民友新聞、東京新聞、大分合同新聞、デーリー東北、室蘭民報、山口新聞です。(2018,9-01現在)
よろしくお願いいたします。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?