マガジンのカバー画像

いわきりなおとの国宝漫遊記&トーハク見聞録

18
共同通信加盟新聞にて連載中の「いわきりなおとの国宝漫遊記」「トーハク見聞録」の過去記事置き場です。掲載新聞は、秋田魁新報、新潟日報、静岡新報、上毛新聞、神戸新聞、中國新聞、山陰中…
運営しているクリエイター

#国宝

いわきりなおとの国宝漫遊記 第13回国宝「銀閣寺」の巻

漫画家のいわきりなおとさんが、京都市にある国宝の慈照寺(銀閣寺)を紹介します。    ×   ×     室町幕府の8代将軍足利義政は、応仁の乱を引き起こしたり、土一揆に悩まされたりするなど、政治能力に欠けていたとされていますが、文化面では大きな功績を残しました。茶器や美術品をたくさん収集し、現代に残っているコレクションの多くが、国宝や重要文化財に指定されています。  義政は、祖父である3代将軍義満が建てた鹿苑寺(金閣寺)を参考に、京都の東山に慈照寺を造りました。銀色

いわきりなおとの国宝漫遊記 第12回国宝「源氏物語絵巻」の巻

◎下ぶくれ顔で雅を表現 国宝「源氏物語絵巻」、東京・五島美術館蔵  漫画家のいわきりなおとさんが、4月28日~5月6日に、五島美術館(東京都世田谷区)で特別展示される国宝「源氏物語絵巻」を紹介します。   ×   ×    紫式部の長編小説「源氏物語」(11世紀)の世界を、約150年後に絵画化した国宝「源氏物語絵巻」(12世紀)は、現存する日本の絵巻の中で最も古いものです。絵と詞書で構成された19図が現存し、名古屋市の徳川美術館と五島美術館が所蔵しています。  登

いわきりなおとの国宝漫遊記 第10回「秋萩帖、伝小野道風筆」の巻

仮名の歴史伝える書跡  国宝「秋萩帖」伝小野道風筆  東京国立博物館蔵   漫画家いわきりなおとさんが、平安時代の能書家(書の名人)、小野道風筆と伝わる秋萩帖(東京国立博物館蔵)を紹介します。    ×   ×     約1100件の国宝のうち、書跡は227件で2割を占めます。つまり国宝鑑賞をしていると、たくさんの書に出合うことになります。最初は違いがあまり分かりませんでしたが、たくさん見ているうちに分かるようになり、今では書跡を見るのが大好きになりました。  平

いわきりなおとの国宝漫遊記 第9回「円山応挙 雪松図屏風」の巻

◎リアル表現で日本画に革命   円山応挙「雪松図屏風」、北三井家旧蔵  漫画家いわきりなおとさんが、江戸時代中期から後期の絵師円山応挙筆の国宝雪松図屏風(6曲1双、左隻、北三井家旧蔵)を紹介します。   ×   ×  応挙は、同時代の伊藤若冲や曽我蕭白といった「奇想」の画家たちに比べ、真面目な絵を描く画家という印象です。現代の若冲ブームに対し、応挙の人気は地味です。しかし、これは現代人から見た評価で、応挙が生きた時代では評価が逆転します。  応挙が登場する前は、格好良く

いわきりなおとの国宝漫遊記 第8回「天平の美少年  阿修羅像」の巻

仏女に人気、天平の美少年 阿修羅像  奈良市・興福寺蔵  漫画家いわきりなおとさんが、奈良市の興福寺が所蔵する国宝阿修羅像を紹介します。    ×   ×  広島カープを応援する「カープ女子」や日本刀が好きな「刀剣女子」が近頃 話題ですが、「国宝阿修羅展」が開かれた2009年ごろから、仏像が大好きな女子、略して「仏女」が注目されています。  数ある仏像の中でも、仏女の人気が高いのが興福寺の阿修羅像です。仏様には偉い順に「如来、菩薩、明王、天部」があり、阿修羅は一番下の天

いわきりなおとの国宝漫遊記 第7回「運慶作 制多伽童子」の巻

◎仏像をリアルに進化  運慶作、制多伽童子 和歌山・金剛峯寺  漫画家いわきりなおとさんが、国宝八大童子立像のうち制多伽童子(和歌山・金剛峯寺蔵)を紹介します。    ×   ×  有名な仏師と言えば、多くの人が運慶の名を挙げると思います。他の仏師とどこが違うのでしょう? 私は、仏像はどれも同じような顔だと思っていましたが、運慶の作品を見て、一目でその良さが分かりました。  運慶仏は、現実の人間のような表情で、今にも動きだしそうな肉体表現がとてもリアル。ポーズや見