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【マッチプレビュー】2023明治安田生命J2リーグ第6節 いわきFC対FC町田ゼルビア

2023明治安田生命J2リーグ第6節。いわきFCは3月26日(日)、いわきグリーンフィールドにFC町田ゼルビアを迎える。この試合の見どころについて解説していこう。

■試合のポイント

この試合で注目すべきポイントは

中盤の球際の競り合い、デュエル
カウンター対策と外国人FWへの対応
どちらが先制点を取るか

現在4連勝中でJ2首位を走る、FC町田ゼルビア。

親会社・サイバーエージェントの潤沢なサポートをベースとし、FWエリキという強力なストライカーを擁する屈指の強豪クラブに、平均年齢23歳の若さとパワーと走力を持つアンダードッグ・いわきFCが挑む。

今節の戦いはそんな構図だ。

ハードワークを信条とする町田とのマッチアップは、バチバチのぶつかり合いとなること必至。いわきはいかにFWエリキを抑え込むか。そして中盤のデュエルを制し、自らのスタイルを90分間貫き通せるか。

町田を率いるのは、青森山田高サッカー部元監督の黒田剛監督。青森山田OBのキャプテン山下優人、副キャプテン嵯峨理久は、恩師に成長した姿を見せられるのか。

まさに、見どころだらけの一戦といえる。

いわきFCの前節をを振り返ろう。

アウェーでベガルタ仙台に競り勝ち、J2初勝利を挙げたいわきFCは第5節、ホームに徳島ヴォルティスを迎えた。

スターティングメンバーは前節と同じ。GK高木和徹、CBに遠藤凌&家泉怜依、右SB嵯峨理久、左SB江川慶城、ボランチ山下優人&宮本英治。右SHは前節、圧倒的スピードと献身的プレスバックで存在感を示した加瀬直輝、左SHは山口大輝。2トップは有田稜&谷村海那。

卓越したドリブラー・西谷和希、元日本代表・柿谷曜一朗ら好選手を擁する徳島はフォーメーションを変更し、柿谷をゼロトップに置いた4-3-3でマッチアップ。いわきはしっかりとアジャストし、普段通りのハイライン&ハイプレスで圧をかけ、柿谷を前線で自由にさせない。中盤がデュエルで競り勝ち、試合を通じて徳島攻撃陣にストレスを与え続ける。

試合は後半に動いた。右CKの流れからFW有田稜がゴール中央へ折り返し、このボールをFW谷村海那が右足でゴールネットに突き刺した。

前回のホームゲームで決定機を逃していた谷村が、得点ランキングトップタイとなる今季3ゴール目。この1点が決勝点となり、いわきは前節の仙台に続いてJ1を知るクラブから勝ち点3をゲット。そして待望のホーム初勝利を挙げた。

いわきFCは開幕3戦で1分け2敗のスタートも、今季初の2連勝。しっかりとモメンタムをつかんだ状態で首位・町田に挑む。

■戦力分析~FC町田ゼルビア

対戦相手の町田について紹介しよう。FC町田ゼルビアは、東京都町田市をホームタウンとするプロサッカークラブだ。

1977年に設立されたFC町田のトップチームとして1989年に創設されたFC町田トップをオリジンとし、1997年に現在のFC町田ゼルビアにチーム名を変更。2007年に関東リーグ1部に昇格して初優勝を果たす。翌2008年に関東リーグ1部を連覇。第32回全国地域サッカーリーグ決勝大会で優勝してJFLに昇格した。

2011年元大分監督のランコ・ポポヴィッチ監督のもとJ2昇格。しかし翌年はJ2最下位に終わり、JFLに降格。現行システムで唯一、JリーグからJFLへの降格を経験したクラブだ。2014年、J3創設に伴い再びJリーグに参入。2015年にJ2再昇格を果たし、今に至る。J2での最高順位は相馬直樹監督体制5年目・2018年の4位。

クラブの大きな転機となったのが、2018年10月のサイバーエージェントによる経営権取得。堅実経営の市民クラブは大企業の傘下となったことで、スタジアムや練習グラウンドなどの環境整備を一気に進めていく。

いわきFCとの初対戦は、2019年にいわきFCフィールドで行われた「いわきドリームチャレンジ2019」。両チームは真っ向勝負を繰り広げ、いわきFCが2対1で勝利を挙げている。この時、町田のヘッドコーチを務めていたのは村主博正監督だ。

その後、町田は2021年にJ1ライセンスを取得して5位に。しかし2022年は、コロナ禍の影響もあり15位に低迷してしまう。

クラブはここで改革の手を打つ。

2022年12月、サイバーエージェント社長の藤田晋氏が運営会社の代表取締役社長兼CEOに就任。そして新監督に招聘したのは、青森山田高サッカー部元監督の黒田剛氏。1995年から2022年まで青森山田高の監督を務め、全国高校サッカー選手権で優勝3回、準優勝3回を記録。高円宮杯U-18プレミアリーグのファイナルを2度制した名将だ。そしてコーチ陣も一新。ヘッドコーチにサガン鳥栖の元指揮官・金明輝氏を迎えた。

そんな驚きの人事に加え、近年まれに見る大型補強を敢行。19選手が新たに加入した。

目玉は何といってもワールドクラスの外国人FW。ファジアーノ岡山よりオーストラリア代表FWミッチェル・デューク、中国スーパーリーグ・長春亜泰よりブラジル人FWエリキを獲得。ミッチェル・デュークは昨年のカタール・ワールドカップで4試合に先発出場。エリキはかつて横浜F・マリノスで41試合に出場。21得点を記録したストライカーだ。

一方、他の獲得選手は若手主体。平河悠(山梨学院大)、稲葉修土・池田樹雷人(ブラウブリッツ秋田)、高橋大悟(清水エスパルス)、下田北斗(大分トリニータ)、チャン・ミンギュ(ジェフユナイテッド千葉)、カルロス・グティエレス(栃木SC)、急遽新加入した藤尾翔太(セレッソ大阪)ら新戦力の多くは、黒田監督のインテンシティの高いサッカーに適応するポテンシャルを持つ。

新戦力の大量獲得で生まれ変わった町田は、J1昇格の筆頭候補にふさわしい。フォーメーションは4-4-2。特徴は、縦のカウンターを狙う直線的プレースタイル。中盤がしっかりと網を張り、ハードワークで奪ったボールを外国人2トップにシンプルに入れてくる。そしてカルロス・グティエレス、池田樹雷人らCBは空中戦に強く、セットプレーも手強い。

サイバーエージェントという大資本のもと本気で挑む今シーズンの戦いは、クラブの歴史で最も大きなチャレンジ。黒田監督が掲げる2023年の目標はJ2優勝。ターゲットは勝ち点90、失点30。チームは開幕節でベガルタ仙台と分けるも。その後4連勝。

至近の第5節は、アウェーでモンテディオ山形と対戦し、エリキの2ゴールで3対0の快勝。4勝1分けの勝ち点13で首位をキープしている。

第5節の先発メンバーはGK 23ポープ・ウィリアム、CB 4池田樹雷人/26カルロス・グティエレス、SB 22翁長聖/2奥山政幸、MF 19稲葉修土/8高江麗央、SH 27平河悠/10高橋大悟、FW 11エリキ/15ミッチェル・デューク。

今節はFWデュークが代表召集で不在。それにより、戦い方がどう変化するのかにも注目したい。

デュークの穴をセレッソから急遽獲得したFW藤尾翔太、もしくはジョーカーとして今季3ゴールを記録しているFW 7荒木駿太が埋めるのか。それとも開幕当初の4-2-3-1に戻し、エリキの1トップで臨む可能性もある。

ただし選手の立ち位置が変わろうとも、いわきFCのやるべきことに大きな変化はないだろう。

エリキの他に注意すべき選手は左右SHをこなすMF平河悠。スピードがあり、ドリブルにもキレがある。この選手を起点としたカウンターは今シーズンの町田の得点パターン。決して前を向かせてはいけない。

いわきFCとしては、まずは簡単にカウンターを食らわないこと。やるべきことを徹底し、いつも通りのハイプレスで相手陣内に押し込むことができれば、勝利の可能性も十分ある。空中戦も含めたデュエルで競り勝ち、球際を制してセカンドボール、サードボールを拾い続ければ、流れをつかめるはずだ。

■「自分達のプレースタイルがぶつかり合うゲーム」村主博正監督

「前節の徳島戦はとてもいい戦いができました。こちらに対応して立ち位置を変えてくる中、選手達がボールホルダーの状況を見て、ピッチ上で行くところ、行かないところを判断し、やらせていいこと、やられてはいけないことの情報共有ができつつある。彼らの自立を感じています。

いわきFCは個人の能力に頼るチームではありません。ここ2試合、全員で0点に抑え、全員で1点を取れたことは大きい。どちらに転ぶかわからないゲームの流れを自分達に引き寄せることができ、いい流れに乗れていると思います。

とはいえ、次の試合は大きな試練となります。

町田さんのFWエリキは攻守に優れた本物のストライカー。彼に自由と時間を与えずに戦えれば、自分達のゲームにできる。ただし、他にもスピードと技術を併せ持つ選手達が多くいます。交代選手も含めて戦力も整っており、全員でハードワークしてくる。試合が進むにつれ、チームとしてパワーを上げてくる印象があり、注意が必要です。

この試合は、自分達のプレースタイルをシンプルにぶつけ合うチーム同士の戦い。今年のこれまでの取り組みが試される試合であり、シーズン序盤の一つのヤマになるでしょう」

■大混戦のJ2概況

3月18~19日、明治安田生命J2リーグ第5節が行われた。ジュビロ磐田と清水エスパルスの静岡ダービーは2対2の引き分け。J1昇格本命といわれる清水が5試合連続のドローで勝ち点5、磐田も1勝2分け2敗の勝ち点5と、J1からの降格組が開幕から苦しんでいる。

前述の通り、首位は4勝1分けの勝ち点13でFC町田ゼルビア。2年ぶりのJ1復帰を目指す大分トリニータが同じく4勝1分けの勝ち点13。大分はホームでジェフユナイテッド千葉と対戦して2対1で勝利。今節も勝ち点で並び、得失点差で町田を追う。

3位は3勝2分けの勝ち点11で、J2昇格3年目のブラウブリッツ秋田。4位は3勝1分け1敗の勝ち点10で東京ヴェルディ。元いわきFCのMFバスケス・バイロンを擁し、前節は藤枝MYFCを5対0で粉砕したヴェルディを、ファジアーノ岡山と天皇杯王者・ヴァンフォーレ甲府が、ともに2勝2分け1敗の勝ち点8で追う。

とはいえ、リーグはまだまだ序盤戦。当面は毎節のように順位が入れ替わることだろう。そんな中で間違いないのは、今年のJ2は紛れもない大混戦ということ。2勝1分け2敗の勝ち点7。前節の勝利で14位から9位に順位を上げたいわきFCにも、まだまだ多くのチャンスがある。

明治安田生命J2リーグ第6節・FC町田ゼルビア戦は3月26日(日)14時より、いわきグリーンフィールドにてキックオフ。試合の模様はDAZNにてライブ配信される。

首位を倒し、下克上なるか。日曜日はぜひスタジアムへ!

(終わり)

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