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【マッチプレビュー】2023明治安田生命J2リーグ第5節 いわきFC対徳島ヴォルティス

2023明治安田生命J2リーグ第5節。いわきFCは3月19日(日)、いわきグリーンフィールドに徳島ヴォルティスを迎える。この試合の見どころについて解説していこう。

■試合のポイント

J2リーグ第5節・徳島ヴォルティス戦。この試合で注目すべきポイントは

①徳島の中盤vsいわき2トップ&両SH
②SB嵯峨&SH加瀬による右サイドの展開
③新FWの台頭

といったところか。

まずは前節のベガルタ仙台戦を振り返ろう。3月12日の東北ダービー。いわきFCは前半20分にDF江川慶城の初ゴールで奪った1点を守り切り、うれしいJ2初勝利を挙げた。

メンバーは右SHに加瀬直輝が初先発。右SBに嵯峨理久。ここ2試合で右SBで先発していた石田侑資は欠場。左SB江川慶城、左SH山口大輝、有田稜&谷村海那の2トップ、山下優人&宮本英治のボランチ、遠藤凌&家泉怜依のCBは前節から変更なし。そしてGKは3試合ぶりに高木和徹が先発。

ここまで1勝2分の勝ち点5。J1復帰をもくろむ仙台に対し、いわきFCは序盤から高いテンションで主導権を握りにいく。有田・谷村・加瀬・山口が仙台GK林彰洋、MFエヴェルトンらに激しくプレッシャーをかけ、思うようにプレーさせない。

そして20分、CKの流れからDF嵯峨が蹴り込んだボールを、DF江川がGKの背後に絶妙なヘディングシュート。これが決まり、いわきがシーズン初の先制点をゲット。その後も加瀬、嵯峨、有田、谷村、後半に加瀬と交代で入った永井颯太らが積極的にゴールに迫り、主導権を渡さない。特に初先発の加瀬は高強度のスプリントとプレスバックを愚直に繰り返すことで、存在感を示した。

後半、仙台はシステムを変えて幾度か決定機を作り出すも、いわき守備陣もしっかりとアジャストして得点ならず。いわきはインテンシティの高いプレーを90分間続け「魂の息吹くフットボール」を見事に体現。J2初勝利をもぎ取った。

■戦力分析~徳島ヴォルティス

今節の対戦相手は徳島ヴォルティス。チーム名の「ヴォルティス」(Vortis)とは、イタリア語で渦を意味する「Vortice」(ヴォルティーチェ)をもとにした造語だ。

前身は、1955年創設の大塚製薬サッカー部。90年から日本サッカーリーグ2部で戦っていたが、Jリーグ創設によるプロ化の流れにコミットせず旧JFLに参戦。1998年のJ2創設時もプロ化はせず、1999年から日本フットボールリーグ(現在のJFL)に参戦。2003~2004年にリーグ2連覇を果たしている。

機運が変わったのは2003年。Jクラブ創設を掲げて徳島県知事に就任した飯泉嘉門氏による働きかけで、大塚製薬はサッカー部を新会社に譲渡。こうして徳島ヴォルティスが誕生し、2004年にJFL連覇。J2参入を決め、四国初のJクラブとなった。

2005年から2013年まではJ2。2013年にリーグ4位に入ってプレーオフを勝ち抜きJ1昇格を果たすも、2014年はシーズン全節最下位、ホーム未勝利でJ2降格。しかし2020年にJ2を制し、7シーズンぶりのJ1昇格を果たした。

二度目のJ1での戦いとなった2021年は17位で再びJ2降格。そして2022年はJ1参入プレーオフ圏まであと一歩と迫るも届かず、8位でシーズンを終えた。

ここ数年のチームの大きなトレンドはスペイン人監督路線。ダニエル・ポヤトス氏(現・ガンバ大阪監督)に続き、今季はレアル・ソシエダで分析チーム責任者ベニャート・ラバイン氏が監督に就任。これまで培ったパスサッカーに素早い縦のアクセントを加え。戦いに挑む。

今オフは主力の流出を最小限に抑え、京都から中野桂太、松本から外山凌が完全移籍。外山は昨年の松本在籍時、サンプロ・アルウィンで行われたいわきFC戦で2得点を挙げている。そして名古屋から柿谷曜一朗、福岡から渡大生が完全移籍で復帰。加えて森海渡や千葉寛汰といった若手有望株を獲得している。

スペインサッカーをベンチマークとするだけに攻撃スタイルは後方からしっかりとつなぐポゼッション型。守備は前線からの激しいプレスを起点とする。今シーズンはここまで2分け2敗。開幕戦で大分に競り負け、2つの引き分けを挟み前節は東京ヴぇルディにホームで0対2で敗れている。

第4節のスタメンはGK21田中颯、DF37浜下瑛/14カカ/4安部崇士/32外山凌、MF7白井永地/10杉本太郎/8柿谷曜一朗/24西谷和希、FW30坪井清志郎/16渡大生。

特に攻撃では杉本、柿谷、西谷ら中盤がカギ。彼らはドリブルでボールを持ち出し、ポジションを入れ替えながら縦横無尽に動いてフィニッシュの縦パスを狙ってくる。左に入る西谷はJ1レベルのドリブラー。元日本代表の柿谷の能力の高さは言わずもがなだ。

ただし、やるべきことをしっかり遂行できれば、決して相性の悪い相手ではない。いつも通り2トップと両SHでビルドアップにしっかりとプレッシャーをかけ、中を遮断。サイドに追い込めれば優位に試合を運べるはず。いわき守備陣としてはコンパクトさを保ち、技術のある徳島の中盤の選手達から自由と時間を奪い取ることがポイントとなるだろう。

■「いわきグリーンフィールドでの初勝利をつかみたい」村主博正監督

「前節はベガルタ仙台さんに勝つことができました。今季のベストゲームと言われますが、第3節のレノファ山口戦も第2節の水戸ホーリーホック戦も内容はよかったと思っています。特に山口戦は相手にやられたというより、自分達が隙を見せてセットプレーのワンチャンスを生かされてしまったことが敗因。ここまで積み上げてきたことは決して間違っていない。もう一度やるべきことをしっかりやろうと言い聞かせ、試合に臨みました。

選手達は3月12日という日に同じ東北のクラブである仙台さんと試合が組まれたことの意味を理解し、思いをプレーで体現してくれたと思います。100%の力で来た仙台さんを上回ることができたと思いますし、メンタルの重要性を実感した試合でした。

前節ではMF加瀬直輝を先発起用しました。彼のよさは運動量。チームのために身を挺し、泥臭く走り続けられる。いわきFCは選手一人一人のポテンシャルと可能性、能力の伸びしろを見て獲得し、型にはめずに育てていきます。加瀬もその点は同様。技術的にはまだまだ課題が多いですが、新加入の彼がなるべく早くチームにフィットできるよう、スタッフが課題を示したり映像を見せたりしてきました。

新加入選手が戦力として独り立ちするにはそれなりの時間が必要です。加瀬も試合に出してみないとわからない面はありましたが、いいパフォーマンスを見せてくれた。このことは、今後のチーム力の底上げに間違いなくつながります。

そして今回感じられたのが、選手達の自立でした。例えば右SHの加瀬を活躍させるために、右SBの嵯峨理久が後方からコーチングをしたり、マインドを整えてあげたりとサポートしてくれました。副キャプテンとして、自分のことだけでなく、周囲にもしっかりと目を配ってくれています。

もちろん嵯峨だけでなく、キャプテンのMF山下優人は昨年から引き続いて全員を引っ張ってくれていますし、もう一人の副キャプテンのDF遠藤凌も背中で示してくれている。チームの若さに注目が集まる中、経験値のある彼らが勝つための雰囲気作りやパフォーマンスを引き出す声がけをしてくれていることを心強く思います。この試合でも、仙台さんは後半から選手の立ち位置を変えてきましたが、自分達でピッチで判断し、問題なく対応できていました。そういったところにも選手達の自立を感じますし、全員が同じ目線で戦うことができています。

徳島ヴォルティスさんは未勝利で苦戦しているように見えますが、ポテンシャルはJ1クラス。とても怖い存在です。

いわきFCは4試合を消化し、ホームではまだ勝てていません。いわきグリーンフィールドの整備に尽力してくださった皆様への感謝を込め、何としても勝利をつかみたい。開幕から5試合目。選手達の自立した姿勢が見え、徐々にいい形ができつつあります。それを証明するためにも、しっかり勝ち切りたい。強いチームほど隙を見せず、弱いチームは自ら隙を見せて負けていくもの。結局は自分達次第です。いい準備を重ね、隙を見せることなく戦いたいと思います」

■まったく行方の見えぬ混迷のJ2。

J2リーグは3月12日で第4節が終了。J1からの降格組・清水エスパルスとジュビロ磐田が苦戦している。清水は大分トリニータと分け、4試合連続の引き分けで勝ち点4。磐田は大宮アルディージャに敗れ1勝1分け2敗の勝ち点4。他にも実績のある外国人選手がそろうV・ファーレン長崎が2分け2敗の勝ち点2で降格圏の21位に沈むなど、J2は早くも波乱の様相を呈している。

首位に立つのは大型補強を敢行したFC町田ゼルビア。水戸ホーリーホックから3点を奪って快勝し、3勝1分けの勝ち点10。清水エスパルスと引き分けた大分も3勝1分けの勝点10。3位には同じ3勝1分けの勝ち点10でブラウブリッツ秋田。4位は2勝2分けの勝ち点8で岡山、5位は2勝1分け1敗の勝ち点7でロアッソ熊本、6位は同じく2勝1分け1敗の勝ち点7で東京ヴェルディ。

まだまだJ1昇格レースの行方は見えていない。1勝1分け2敗の勝ち点4で16位のいわきFCにも、浮上の余地は十分ある。

明治安田生命J2リーグ第5節・徳島ヴォルティス戦は3月19日(日)14時より、いわきグリーンフィールドにてキックオフ。試合の模様はDAZNにてライブ配信される。

待望のホーム初勝利なるか。ぜひ、スタジアムへ!

(終わり)

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