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相互に寄りそうこと

羽田空港で見つけた「クールダウンスペース」

地方都市に在住する私は先日、東京での研修のため羽田空港を利用しました。研修を終え、帰路に着く際、羽田空港第2ターミナルの保安検査場を抜けたすぐの場所に見かけないものを発見しました。レストランや売店を表示する大きなボードの後方の目立たないスペースに設置されたもの、それは「カームダウン・クールダウンスペース」でした。三方を黒いパーテーション(音を吸収するためか緩衝材の入った柔らかいタイプ)で囲われた椅子の置いてあるスペースです。その前には国連の定めた「世界自閉症啓発デー」のエルモをキャラクターにした看板も設置されていました。

思い出す修学旅行引率

数年前、特別支援学校に勤務していた際、初めての空港、人の多さ、ひっきりなしの放送、ボーディングブリッジの閉鎖感から、担当するクラスの自閉症のある生徒がパニックを起こしてしまう経験をしたことがありました。ある程度は予想されていたので、人の少ない空間まで移動し、壁を向かしてタイムアウトをして落ち着くのを待ちました。それでも飛行機に乗り込むボーディングブリッジでは生徒を羽交い絞めにしながら搭乗させたものです。その時、周囲の憐れむような迷惑そうな視線を思い出してしまいました。

お互いが少しだけ寄り添ってみる

本当は私が入る場所ではなかったのですが、「カームダウン・クールダウンスペース」の椅子に5秒ほど座ってみて視覚情報や聴覚情報の整理された空間にいると、この空港が設置してくれたスペースが障害のある人に寄り添ってくれているような気持ちになっていました。空港ビルが企業の社会的責任として設置したものかもしれませんが、その小さな配慮に人の体温のような温かさを感じずにはいられませんでした。
知的障害特別支援学校高等部では、社会的自立を目指して、障害の状態に応じて現場実習を繰り返し行い、たとえ障害があったとしても社会の一員として活躍できるように就労を目指した教育活動が行われています。ずっと「彼らが精一杯に背伸びして社会に合わせていかないといけない形」に疑問を持っていました。障害のある彼らは「ありのまま」で生きることあ許容されないのかと思っていたわけです。
空港ビルの小さなスペースに設置された小さな取り組みではありましたが、社会が障害のある彼らに少しだけ寄り添おうとしているのだと感じ、とても勇気をもらうことができた経験でした。
私たちが生きるこれからの社会として「地域共生社会」が標榜されています。「お互いが少しだけ相手に寄り添ってみる」この小さなチャレンジが私たちの社会を大きく変えるのかもしれないと考えています。

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