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文化人物録64(中村恵理)

中村恵理(ソプラノ歌手)
→長く欧州で活躍する日本を代表するソプラノの一人。英国ロイヤルオペラやバイエルン国立歌劇場など屈指の名門劇場で経験を積み、ウィーン国立歌劇場にも出演。かつて研修を積んだ新国立劇場の作品にも多数出演している。僕は中村さんがそこまで有名でなかった頃からその歌唱力に注目していたが、その実力はもちろん、人柄も素晴らしい。そして、自分の現状に満足せず、常にさらなる高みを目指して努力する姿勢がある。歌手の中ではまだまだ若い部類だけに、どこまで成長するのか非常に楽しみである。

*2016年

・この7月でバイエルン国立歌劇場との専属契約が終わりました。ですので日本での活動は今後しやすくなると思います。ミュンヘン在住は今後も続けます。6年間専属だったのでいろんな国の音楽が今後できるようになることが楽しみです。

・私が誇れるのは、バイエルン国立歌劇場での6年間一度も穴を開けなかったことです。大変なこともありましたが、劇場での稽古や本番に常に備え、急なキャンセルにも対応しました。かなり無理は必要でしたが、いろいろな経験ができました。バイエルンでの6年間は同じスタッフでしたが、これからは初めましてのスタッフや出演者が増えることになります。フリーランスは結果を出さなければいけないので厳しさもありますが、新しい刺激になると思います。

・バイエルンでは代役での経験も大いに役に立ちました。精神的にも体力的にも健康を保つことが必要でしたが、仕事とそうでないときのメリハリをつける自分のスタイルは見つけられました。声を使う仕事なので急に声が重くなったり軽くなったりして難しい状況もあるのですが、変化の対応はなるべく役柄に沿う形に持って行くことが重要です。役に仕事を近づけるということになります。

・今まで仕事では日本語を使わず英語がメイン、あとはドイツ語、イタリア語で、オフで日本語を使う形でしたが、今後は仕事でも日本語が増えることになります。この言葉のギャップは今後出てくると思います。

・今度日本でやるコンサートではバッハなども歌いますが、声をベースに曲を選んだ結果、6カ国語で歌うことになりました。メシアンやショスタコーヴィチ、シューマンはやってみたかった作品です。ドイツものから現代曲、オペラまで幅広く、すべてがつながっているプログラムといえます。女の人の横顔にスポットライトを当てた作品で、悩める女性の群像というところでしょうか。女性を違う角度で映し出すものになっています。

・オペラ歌手なので常に舞台に立っていたいです。お客さんが来てよかったと思える公演に出演していきたい。オペラは総合芸術ですが、自分のペースを間持ちつつ仕事の幅を広げたい。母校の大阪音大でも教えることになったのですが、学生が知りたいと思うことはすべて伝えたいです。まずは自分を知ることが大事です。その過程に正解はありませんが、とにかく自分を知ることに向かってやっていくこと。そしてなるべく自分で考えることです。常に自分と対話していやなことからも逃げないことが重要だと考えています。

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