見出し画像

文化人物録25(塚越慎子)

塚越慎子(マリンバ奏者、2016年)
→超絶技巧を誇るマリンバ奏者。クラシック系の奏者ではあるものの、レパートリーはバッハやベートーヴェンからセジョルネ、ピアソラ、コセンティーノ、伊福部昭、武満徹、細川俊夫、ジャズ作曲家挾間美帆まで広い。多彩な音楽を華麗に叩きこなすその姿は、まさにマリンバをやるために生まれてきたかのようだ。

実は塚越さんは埼玉県熊谷市の出身で、僕とはほぼ同郷。世代的にも比較的近く、親近感があるアーティストの1人。何度かお話を聞いた。挾間さんなど共通の知人も多く、今後どういう方向に向かうのか大変楽しみである。

・テレビにもよく出ている、ですか?そうですね、まずはマリンバという楽器を知ってもらいたいという思いで出ています。打楽器って一人よりアンサンブルが多い世界なので、人間関係は鍛え上げられると思います。例えば、マリンバって移動の時は搬入や組み立てを自分でやらないといけませんが、こういう時は皆で助け合います。作業は大変ですが、プラスに考えればピアノと違い楽器を持ち運べるという点はいいかもしれません。
・私は幼少時、ピアノをやっていたのですが中学1年、12歳の時にマリンバの演奏を聴いてマリンバにはまりました。当初は音楽高校のピアノ科に行こうと考えてましたが、3年間で打楽器科に入ろうと考え直しました。
・音楽についてももとはプロになるつもりはなく、大学を出て就職するつもりでした。でもマリンバの世界に触れて世界の奏者をもっと見たいと思うようになった。そして国立音大3年の時にベルギー国際コンクールに出て空気を味わおうと思っていたところ2位になった。これでマリンバを続けようと思いました。
・マリンバをやるからにはしっかりやろうと、毎年2,3回は海外の先生の所に習いに行ってました。そうしているうちにパリの国際コンクールで優勝し、コンサートやCDの依頼が舞い込むようになり今に至ります。全身全霊でやってきたことが認められたのかなとは思います。
・環境には恵まれましたね。打楽器ってソロでやるには難しいと思ってました。オーケストラに入らないと続けるのは難しいかなと。でも、楽器への愛は誰にも負けないという思いでやってきました。運が味方についてくれた感じがします。
・マリンバは新しい楽器なので、クラシックの分野ではありますがジャンルを超えて演奏し、世界を広げたいと思ってやってきました。留学先はアメリカ南部だったのですが、ここはジャズが盛んな地域で、私の専攻はクラシックでしたがジャズ関係の友人が多かった。だから雰囲気は体感できました。挾間美帆さんに曲をお願いしたのもそのような経緯があります。挾間さんは国立音大の後輩で、今までにないジャズを開拓してきた作曲家です。依頼し作曲を快諾していただいたのはいいのですが、曲が非常に難解で大変でした。
・マリンバという楽器はコンチェルトの絶対数が非常に少なく、演奏機会も限られます。だからアルバムを作るときには私にしか出せないCDを作りたいと常に考えています。特に強いリズムや音の重厚さが際立つ伊福部さんのラウダ・コンチェルタータやセジョルネのマリンバ協奏曲は大好きです。
・私はラフマニノフが大好きなのですが、セジョルネの曲はラフマニノフに近いイメージを持っています。弦楽とマリンバという性格の違う楽器が調和する瞬間、新たな音楽ができている感じがします。私はとにかく歌う系の曲が好き。歌いすぎると言われるくらいですが。
・最近はマリンバ四重奏、ピアノとのデュオなどもやるようになり、レパートリー、マリンバの可能性は広がっていると感じます。楽器とともに成長し、自分で道の分野を切り開きたいです。もちろん皆さんが知っている有名曲も演奏しますが、異業種とのコラボやマリンバのオリジナル曲を増やしていきたいです。難しいけどやりがいはありますね。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?