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【葬送のフリーレン】言葉・場面のリフレイン:魔法は好き?

漫画「葬送のフリーレン」には、様々なリフレイン(繰り返し)が組み込まれています。それらを意識しながら読み進めるのも、この漫画の一つの楽しみだと考えています。リフレインの種類についての概要はリンクを参照して頂き、以下では具体例について紹介します。

対象は単行本全10巻97話までですので、ネタバレを避けたい方は読むのを止めて下さい。


本記事で紹介するのは、言葉・場面のリフレインの「魔法は好き?」です。

「魔法は好き?」について

漫画「葬送のフリーレン」では、「魔法は好き?」という言葉や、それに類似した表現が繰り返し出てきます。その言葉の前後では、各登場人物の魔法との距離感やその理由が記述されており、個性を理解する一つの切り口だと考えています。
具体例を通して、各登場人物の魔法との距離感やその理由を整理・考察していきます。

「魔法は好き?」の具体例

フリーレン

魔法は好き?
ほどほどでございます。
私と同じだ。

フリーレン・フェルン、第1巻52ページ

私は魔族にすべてを奪われた。
私もだ。
魔族を根絶やしにしたいほど憎い。
私もだ。
けれども私は魔法が好きで・・・
私もだ。
だから魔法を愚弄するような卑怯者は私達だけでいい。

フリーレン・フランメ、第3巻71~72ページ

フリーレン、まだ魔法は好きか?
突然どうしたの師匠?ほどほどかな。
お前はずっと昔魔法が好きだとはっきり答えた。
たった50年前でしょ。
そうだな。結局私はお前に戦いのことしか教えなかった。復讐のための魔法だ。
後悔しているの?
いいや。

フリーレン・フランメ、第3巻83ページ

フリーレンは、魔法がほどほどに好きです。ただ、フランメと出会った頃はまだ、魔法が好きとはっきり言えるほどでした。距離感が変わったのはフランメの修行を50年間受けた後で、おそらく戦いと復讐のための魔法しか教わらなかったためだと考えられます。
そのような魔法を教えたフランメに対して、フリーレンは「後悔しているの?」と質問しましたが、フランメは「いいや」と返しました。ただその後、建前上は墓石の周りに花を添えるという目的で、フランメの一番好きな「花畑を出す魔法」を教えています。好きになった理由まで教えているので、実はフランメは、フリーレンの魔法に対する好意が変わったことを気にしていたと考えられます。

フェルン

フリーレン様は本当に魔法がお好きなのですね。
ほどほどだよ。フェルンと同じで。
少し違うような気がします。
同じだよ。

フェルン・フリーレン、第1巻80ページ

フェルンだって、魔法使いになることを諦めなかった。
それは違います。私は一人で生きていける力さえ手に入ればなんでもよかったのです。別に魔法じゃなくたって・・・
でも魔法を選んだ。
・・・そうですね。

フェルン、第1巻64ページ

最近ずっと森に籠もりきりですからね。それだけ魔法が好きなのでしょう。

ハイター、第1巻56ページ

フェルンは、魔法がほどほどに好きです。フリーレンもほどほどに好きですが、フリーレンほど好きではないと思っています。
ほどほどである理由は、フェルンにとって魔法は、一人で生きていくための単なる手段であると捉えているからだと考えられます。ただフリーレンはフェルンに対して「でも魔法を選んだ」と更に深く問いかけることで、フェルンはハイターに魔法を教わった原体験を思い出し、おそらく以前の「ほどほど」よりかは「好き」寄りに気持ちが変わったと推察されます。
フェルンが魔法を「好き」であると、ハイターが多少勘違いしているのも、上記の原体験の記憶に引きずられているためだと考えられます。

フェルンとハイターと、魔法で作った蝶々 第1巻108ページ

リュグナー(魔族)

私は魔法が大好きでね。彼の腐敗の賢老クヴァールが人生の大半を掛けて、人を殺す魔法を開発したように、我々魔族は長い寿命の中で一つの魔法の研究に生涯を捧げる。

リュグナー、第2巻178ページ

哀れだよな。人が地位や財産に縛られるように魔族は魔力に縛られている。魔族は魔法を誇りに思い誰よりも魔法が好きなのに、己の魔力すら自由にできない。フリーレン、魔族じゃなくて良かったな。

フランメ、第3巻81ページ

リュグナーは、魔法が大好きです。魔族は平気で嘘をつくので正直真偽は分かりませんが、魔族の生態に詳しいフランメが、魔族は魔法が好きと言っているので、おそらく本当に好きなのでしょう。
魔法が好きな理由については、人生の大半を掛けて研鑽し、そのことに誇りを持っているからだと考えられます。フリーレンも同様に、人生の大半を掛けて魔法を研鑽していますが、誇りを持っていない、もしくは意識的に誇りを持たないようにしているため、魔法に対して「ほどほど」という距離感なのだと推察されます。

ゼーリエ

好きな魔法を教えろ。
魔法ってのは殺しの道具だぜ。好きも嫌いもあるか。
合格だ。

ゼーリエ・ヴィアベル、第7巻19ページ

その後も沢山の弟子を取ったよ。どれも私の足元にも及ばないままほとんどが先立った。だが不思議なものだ。気まぐれで取ったはずの弟子なのに、一人一人の性格も好きな魔法も鮮明に思い出せる。

ゼーリエ、第7巻51ページ

その人が得意とする魔法は人生や人間性に大きく係わっている。

ユーベル、第5巻160ページ

ゼーリエが魔法を好きかどうかは明言されていませんが、ゼーリエは弟子に好きな魔法を聞く癖があります。その質問はゼーリエが取った弟子全員にしているようで、その理由は分かりません。ヴィアベルのように好きな魔法がない人も弟子に取っているので、弟子にする基準というわけでもありません。
私の考える理由は、一人一人の性格を把握するためではないかと思っています。(得意とする魔法と好きな魔法は違いますが)ユーベルが言うように、その人の使う魔法は人間性に係わっていると考えられます。またエルフという種族は、フリーレンのように人間の感情を直接読み取るのが不得手と思われるので、魔法を通じて性格を把握するほうが効率的と、ゼーリエは判断してるのだと推察しています。

その他

フランメ、デンケン、メトーデなど、上記で紹介していない各登場人物の魔法に対する距離感については、「葬送のフリーレン」を読み返す際にぜひ、ご自身で発見してみて下さい。

まとめ

漫画「葬送のフリーレン」では、「魔法は好き?」という言葉や、それに類似した表現が繰り返し出てきます。その言葉を中心に、魔法に対する距離感やその理由などを考察することで、各登場人物の性格や個性を深く理解することができます。それによって「葬送のフリーレン」をもっと好きになって頂けると嬉しいかなと思います。


長くなりましたが、最後まで読んで頂きありがとうございました。

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